【ツアー報告】東シナ海第二の秘島 甑島 2025年5月5日~8日

(写真:シマアオジ 撮影:久野守正様)

鹿児島県薩摩半島から西へ約30km。東シナ海に浮かぶ上甑島、中甑島、下甑島と縦に3島を連ねる甑島は国定公園にも指定されています。タイトルにもある通りの秘島で、過去の渡り鳥の出現データを見る限りではなかなか興味深いものがあり、その内容は春の渡り鳥観察の定番、与那国島にも決して負けていない充実ぶりです。さらに心強いのは現地在住で、毎日時間を見つけては渡り鳥の状況を見ていてくれる現地ガイドさんが同行してくださることです。また宿泊は大浴場完備で海の幸をふんだんにいただける心地よい宿に3連泊します。今回は初日の夕方から2日目の朝に雨の予報が出ましたが、その後は概ね天気が良いとのことでした。

5日、早朝からどんよりとした曇り空の羽田空港を予定通り出発して鹿児島空港に向い、集合時間前には12名のお客様のご集合が完了したことから、甑島に向かうフェリー乗り場に向かいました。バスは順調に進み13:10にはフェリーターミナルに到着したことから、一旦室内に荷物をまとめて14:00まで自由行動として買い物などをしていただきました。その後、14:10から乗船し、高速艇甑島は14:30に出航して下甑島の長浜港に向いました。途中、想定外に海況が悪化して船体が揺れる場面もありましたが、予定通り15:40に長浜港に到着しました。下船後は現地ガイドさんと合流しましたが、この日の朝に上甑島にズグロチャキンチョウがいたとのことで、この日は予定を変更して上甑島に向かうことにしました。まずは宿に立ち寄って観察機材の準備をしていただき、その後は一気に走って上甑島に向かいました。到着後は小雨が降る中、水田や草地を探してみました。ここでは水田に夏羽のアマサギが群れ、ホオジロハクセキレイ、タカブシギが見られました。草地にはカワラヒワ、スズメが群れ、枯れた木にはコホオアカが止まっていました。さらに歩いて周囲を探してみましたが、残念ながらズグロチャキンチョウの姿は見られず、飛び交うツバメ、草地ではキジ、そしてホオジロの姿を見てこの日の探鳥を終えました。宿に戻った後は島の魚介類をふんだんに使った豪華な食事に舌鼓をうったのでした。

6日、この日は午前中が雨の予報だったことから早朝探鳥は予定せず、07:30から朝食をいただき08:30に出発しました。幸いにもこの時間は雨は上がっていて空には一部に青空が広がっていました。この日は下甑島のメイン探鳥地の水田に向かい、まずは小学校裏を歩いてみました。雨上がりということもあってツバメが飛び交い、電線でウグイスがさえずっていました。早速、3羽のカラムクドリが飛んできて電線に止まってくれたことからじっくりと観察することができました。その後は水田に沿って歩き、まずはムナグロ、タカブシギ、ヒバリシギの姿が見られました。しばらく見ているとシマアオジが草に止まり、その後もオス、メスで行動している2羽のシマアオジを何回か見ることができました。その後は反対側の草地でシマノジコを探してみました。かなりの数のスズメ、カワラヒワが飛び交い、時々、草の上にキマユホオジロやコホオアカが止まり、この日は黄色が鮮やかなノジコも見られました。また亜麻色のアマサギやキジの姿はあったものの、午前中は残念ながらシマノジコには出会えず、一旦昼食の時間にしました。この時間もカワセミやイソシギ、屋根でさえずっているイソヒヨドリなどが見られ、昼食後は再び同じ草地に行ってみました。最初はなかなかシマノジコの姿がなかったですが、ようやく飛んできて草むらに逃げ込んだオスを見ることができ、さらに待っていると木に止まったことから望遠鏡を使って観察することができ、独特のレンガ色と黄色の姿を見ることができました。さらに待っているとホオアカ、シベリアアオジ、コホオアカ、キマユホオジロが見られ、今度は比較的近くの低木にシマノジコが飛んできたことから再びその姿を見ることができました。その後は一旦休憩の時間とし、最後の2時間あまりは反対側の水田に行ってみました。ここではまずは水路でキセキレイが見られ、水田ではタカブシギ、ヒバリシギのほか、この時間はアオアシシギの姿もありました。さらに歩いて草地を見ていると、午前中に見た個体とは明らかに異なる、黄色が鮮やかなシマアオジのオスが見られ、水田には5羽のツメナガセキレイが飛んできて水浴びをしていました。よく見るとうち4羽はマミジロツメナガセキレイでした。また草地に目をやると、午前中に見たややくすんだ黄色のシマアオジが止まり、ふと見ると電線にシマノジコのオスが止まっていて驚かされました。その後もシマアオジはメスを含む3個体が入れ替わり立ち替わり見られ、シマノジコのオスも何回か電線に止まって鮮やかな姿を見せてくれました。気が付くとやや風が強まって肌寒くなる中、探鳥を17:30で終えて宿に向かいました。そしてこの日も島の魚介類をふんだんに使った豪華な食事に舌鼓をうったのでした。

7日、この日は早朝から快晴の中、06:00から宿周辺を歩いてみました。外に出るとメジロが盛んにさえずっていて、ヒヨドリやツバメが飛びまわっていました。林道を歩くと周囲からはカラスバトの声が聞こえ、アオバトが飛び立っていく姿が見られました。薄暗い場所までくるとヤブサメがさえずり、周囲にはヤマガラの姿もあり、木に止まっているアオバトを見ることもできました。宿に戻って07:30から朝食をいただき08:30に出発して、この日は現地ガイドさんの勧めもあって島の反対側にあるナポレオン岩に向いました。前回とは異なり、今回はほぼ快晴だったこともあってナポレオン岩はくっきりと見られ、上空をアマツバメの群れが飛んでいました。その後は元祖、Drコトー診療所に向かい、砂浜を見てみるとキセキレイ、イソヒヨドリの姿がありました。ただよく見てみると黄色が鮮やかなツメナガセキレイが複数見られ、中にはキタツメナガセキレイが混じり、タイワンハクセキレイの姿もありました。その後は平田医師が瀬々野浦への往診の道すがら「往診の道すがら見し しんきろう」の句を詠んだとされる、しんきろうの丘を通り、さらに進んで椋鳩十が著した「孤島の野犬」の舞台が下甑島であることを記念して建てた、孤島の野犬像を見てから水田に行ってみました。この時間は昨日、シマアオジを見た場所に行ってみましたが、この日は姿はなく、代わって2羽のムナグロ、タカブシギ、そして飛び回る2羽のツバメチドリが見られたのみで、一旦昼食の時間にしました。昼食後は下甑島郷土館に向かい、現地ガイドさんが甑島で撮影された野鳥の写真を見学させていただき、その後は再び水田を歩いてみました。小学校付近では離島では珍しいアリスイが見られ、観察しているとギンムクドリが飛んできて枯れ木に止まりました。さらに歩くと電線にキガシラセキレイが止まっていて、その後は水田に降りたことからしばらく観察することができました。完全な夏羽個体ではなかったですが頭部がかなり黄色い個体でした。その後はさらに歩いて反対側の畑地に行き、ここでは再びシマノジコを探してみました。この日は個体数が増えているようで、いきなり枯草に止まる2羽のオスが見られ、うち1羽はかなり赤みの強い個体でした。ここではスズメ、カワラヒワの群れに交じって、セッカ、コホオアカ、そしてシマアオジも見られましたが、シマノジコはなかなか良い場所に止まってくれませんでした。その後は一旦休憩をとり、最後の2時間ほどは再び水田に行ってみました。アカガシラサギがいたとのことで探してみると、草地からアカガシラサギが飛び立って反対側に行ってしまいました。そのため飛び去った方向に歩くと、畑地にはツバメチドリの姿があり、電線にはマミジロタヒバリが止まっていました。その後は再びシマノジコを探してみると、この時間は比較的動きがよく、杭や枯れ木に止まったことから、ようやく全身をしっかりと見ることができました。そしてやや風が強まって肌寒くなってきた17:30にこの日の観察を終えて宿に戻りました。そしてまたまたこの日も豪華な食事に舌鼓をうったのでした。

8日、この日も幸いなことに早朝からほぼ快晴の中、宿周辺を歩いてみました。周辺では相変わらずヒヨドリやメジロが鳴き、この日はカラスバトの声がよく聞こえていました。林道を歩くとアオバトが飛び、丁寧に大木を見ていくと、この日は横枝に止まっているカラスバトをようやく見ることができました。さらに歩くとここでもカラスバトの声が頻繁に聞こえ、鳴きながら飛翔する姿が見られたほか、ここでも杉の木の横枝に止まっているカラスバトを見ることができました。戻る途中では木の実を盛んに食べている2羽のアオバトを見ることができ、美しい下尾筒の模様も見ることができました。宿に戻ってからは予定通り07:30から朝食をいただき08:30に出発して手打地区の行ってみました。この日は現地ガイドさんが早朝にムクドリ類を見た場所に行ってみましたが残念ながらその姿はなく、そのまま水田まで歩いてみました。ここでは2羽のムナグロ、3羽のタカブシギが見られましたが、草原は閑散としていて鳥の姿が一気に減ったように感じました。そのためバス移動しながら各所をめぐってみることにし、まずは釣掛埼灯台に行ってみました。ここではホオジロが鳴き、ミサゴ、ハヤブサの姿があり、その後は休憩をはさんで中甑島に向かいました。まずは甑大橋まで行き、ここでは岩場で繁殖しているウミネコ、ミサゴが見られ、この日はウミネコのヒナの姿もありました。その後は上甑島まで行き、名物になっている大ウナギを見てから宿に戻りました。

今回は初日に小雨はあったものの、概ね良い天候の中で過ごせた4日間でした。今回も現地の鳥の状況を見ていてくださる現地ガイドさんのおかげで、シマアオジはつがいで見られ、うち1羽のオスは黄色が鮮やかな美しい個体で感激しました。さらにはシマノジコも途中から個体数が増えたようで、赤と黄色が鮮やかなオスをじっくり見られました。ほかにもキガシラセキレイ、キマユホオジロ、コホオアカ、シベリアアオジ、ツメナガセキレイ、マミジロタヒバリ、ツバメチドリ、カラムクドリ、ギンムクドリなども見られました。ご参加くださいました皆様、ありがとうございました。そして快適な空間と豪華なお食事が準備してくださった宿スタッフの皆様、大活躍してくださった現地ガイドさんにも合わせて感謝申し上げます。

石田光史

シマノジコ 撮影:鶴田美津子様

 

カラスバト 撮影:坂東俊輝様

 

マミジロタヒバリ 撮影:鶴田学様

 

キタツメナガセキレイ 撮影:久野守正様

 

セッカ 撮影:鶴田美津子様

 

キマユホオジロ 撮影:坂東俊輝様

 

カラムクドリ 撮影:鶴田学様

 

キガシラセキレイ 撮影:久野守正様

 

ムナグロ 撮影:鶴田美津子様

 

コホオアカ 撮影:坂東俊輝様

 

カツオドリ 撮影:鶴田学様

 

シマノジコ 撮影:久野守正様

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