【ツアー報告】春の利尻島 最北の航路と渡りの鳥たち 2025年5月10日~13日

(写真:クマゲラ 撮影:上田恵様)

本州に住んでいる我々にとっては春の渡りはすでに終わっているという認識の時期ですが、北海道北部の島々ではこの時期、ちょうど春の渡りの最盛期を迎えています。利尻島もこの時期はさまざまな渡り鳥が見られていて、稚内~利尻島航路もさまざまな海鳥たちが北上しています。また利尻島内はクマゲラ、コマドリの密度が高く、毎回、現地在住ガイド同行の元で探鳥しています。一方、初日と最終日は道内をめぐり、まだまだ花は咲いていないものの原生花園の小鳥を探し、新緑が美しい森ではヤマゲラを探すなど、さまざまな楽しみを組み合わせています。ただ、この時期の道北はまだまだ真冬のような気温になることも普通で、さらに利尻山はまだまだ雪景色で島に渡る船上は冷たい風が吹きつけます。今回は残念ながら初日に雨の予報が出てしまいましたが、その後は次第に天候が回復してくるとの予報が出る中での出発となりました。

10日、この日の東京都内は前夜からの雨がまだ残っていて小雨模様でした。ほぼ予定通り羽田空港にご集合いただいた後は資料の配布、そしてこの日の連絡事項をお伝えしてから搭乗し、やや遅れて稚内空港に向けて出発しました。10分ほど遅れたものの無事に到着した稚内空港は薄曇りでしたが幸いにも雨は降っていないようでした。風の強さによってはかなり寒く感じることが多いのですが、この日は無風だったこともあり、これといって寒さを感じることはありませんでした。空港内で観察機材準備の後は、まずは原生花園に向かいました。出発時は曇りでしたがいつの間にかバスの窓には雨粒がついていて、どうやら小雨が落ちてきてしまったようでした。到着後にバスを降りると雨は気になるほどではなく、かろうじて雪を被った利尻山が見えていました。まずは木道を歩いてみました。まだまだ殺風景な風景の原生花園ではありますが、早くもノビタキが姿が見られ、付近ではオオジシギがディスプレイフライトを繰り返していました。周囲を見てみるとホオアカの姿もあり、黄色が鮮やかなツメナガセキレイも一度だけ姿を見せてくれました。さらに歩くとチュウヒが飛び、複数のオオジシギが激しくディスプレイフライトを繰り返し、うち1羽がたまたま展望台に止まってくれたことから、鳴いている姿をじっくり見ることもできました。観察後はやや雨が強まる中、移動し、途中にある池ではマガモ、ヨシガモ、キンクロハジロ、そしてミコアイサのメスも見られました。その後は木道を歩き、ここでは雨が強まる中でしたが、さえずっているノゴマを見ることができました。観察後は稚内に向かい、途中、港ではスズガモの群れや休んでいるゴマフアザラシが見られ、最後は再び雨が強まってしまいましたが、海上を飛んでいくウトウの群れを見てこの日の探鳥を終えました。

11日、早朝に外を見ると、空はどんよりとしていたものの幸いなことに雨は降っていませんでした。この日は早い時間のフェリーに乗船しなくてはならいことから、早朝にホテルを出発して稚内フェリーターミナルに移動しました。到着後はまず前日見られた鳥の確認作業をしてからチケットを配布して乗船し、わずかな時間ながら海鳥観察をしました。曇り空ながら海は穏やかで、堤防上にはウミウ、ヒメウに交じって1羽のオジロワシが止まっていました。海上を眺めるとウミネコ、オオセグロカモメが飛び、それに交じるようにトウゾクカモメが飛んでいました。その後は編隊を組むようにウトウの群れが次々に通過し、数は少ないながらもハシボソミズナギドリが飛んでいました。そして利尻島が見え始めた頃からは夏羽のシロエリオオハム、塊状になって飛んでいるアカエリヒレアシシギの群れも見られ、ようやく美しい利尻山が雲の隙間からその姿を現しました。無事、利尻島、鴛泊港に到着後は早速、現地在住ガイドさんと合流してから各自観察機材の準備をしていただき、その後はまず森に行ってみました。到着すると針葉樹のこずえでアオジがさえずり、その後は数多くあるクマゲラの食痕を見ながら小道を歩きました。周囲からはシロハラゴジュウカラ、ヒガラ、エゾムシクイ、ミソサザイ、コマドリなどの声が聞こえ、直後にはクマゲラの飛翔時に発する「コロコロコロ・・・」という声が聞こえ、飛翔するクマゲラを見ることができました。観察後は一旦山を下り、ここでは針葉樹のこずえに止まっているアカゲラのオスを見ることができました。その後は一旦休憩を取り、再びクマゲラを探しに戻りましたが良いタイミングでその姿を見ることができました。観察後はちょうどお昼になったことから鴛泊フェリーターミナルで昼食の時間とし、昼食後は利尻島を時計回りで回りながら探鳥しました。まずは過去にさまざまな鳥が見られている森に行ってみました。ただ残念ながら鳥の姿はなくわずかにハクセキレイが見られたのみでした。その後はオタトマリ沼まで行くと、かなりの数のウミネコが水浴びをしていました。周囲を見てみるとヨシ原にはチュウサギ、そしてなぜかアカガシラサギが見られ、湖面にはコガモ、カイツブリの姿があり、ハシブトガラやアオジのさえずりが聞こえていました。その後は南浜湿原、仙法志と移動し、神居海岸公園でトイレに寄ってから森を歩きました。ただここでも小鳥類の姿はほとんどなく、ようやくコマドリが見られたのみでしたが、戻る途中では新芽をついばんでいるヒレンジャク、マヒワの姿が見られました。その後はさえずっているノゴマやノビタキが見られ、芝生にはムネアカタヒバリの姿もありました。そして最後は宿周辺を歩いてこの日の探鳥を終えました。

12日、この日は早朝からからっとした快晴でしたが、強風が吹き荒れていて、海を眺めると白波が立つほどでした。早朝探鳥のため、まずは森まで車で送っていただき、その後は坂道を下るように歩きながら探鳥しました。ただいきなりコマドリのさえずりが聞こえたことから探してみると、白樺の倒木に止まってさえずっているコマドリがいたため、まずはじっくり観察、撮影することができました。ただ、今回の利尻島はタイミングが悪かったのか、ツグミ類、ホオジロ類、ヒタキ類が全く見られず、この日も途中、ヒガラが見られたのみでした。さらに歩くとようやくアカハラのさえずりが聞こえ、ノゴマの姿を見ることもできました。遊歩道を歩いて森に入ると少ないながらもコマドリのさえずり、そしてツツドリの声も聞こえていました。ただここではなかなかコマドリが良い場所には出てきてはくれず、コゲラ、シロハラゴジュウカラを見るに留まりました。そのため場所を変えてみると、ここでは2個体のコマドリがさえずっていて、まずは枯れ木でさえずっている個体、その後はもう一個体を見ることができ、最後の最後には間近にある倒木に止まってくれたため、最後に最高のシーンを観察、撮影することができました。その後、朝食をいただき再度出発して昨日、クマゲラを見た場所に再度行ってみました。ここでは枯れ木でさえずるミソサザイが見られ、周辺ではシジュウカラ、シロハラゴジュウカラ、エゾムシクイのさえずりも聞こえていました。そしてこの日もよいタイミングでクマゲラの姿を見ることができました。観察後は鴛泊フェリーターミナルで休憩をとり、その後は姫沼では強風の中、ダイサギ、オオバンをみて鴛泊フェリーターミナルに向い、昼食をとってから午後のフェリーで稚内に向いました。この日は北東風がやや強く、海上を見ると白波が立っている状況での航行でしたがそれほど揺れることはなく、数十羽の小群で飛び交うアカエリヒレアシシギが見られ、ウミスズメ、ウトウの姿もありました。また途中からは風に乗るようにすいすいと飛んでいくハシボソミズナギドリの群れが現れ、船を追い越すように次々に飛んでいく様子は見事でした。そして稚内に到着後はこの日の宿泊地のホテルに向いました。

13日、この日は天気予報は良かったですが、早朝は雲が多い空模様でした。観察時間を確保するため早朝に出発しました。途中、車窓からはようやく芽吹いたばかりの美しい新緑が鮮やかに見え、ところどころには残雪があり、ちょうど見ごろを迎えたミズバショウの花が見事でした。また現地が近づいてくるとエゾエンゴサクの花が青い絨毯のようになっている箇所が数多く見られました。到着後にバスを降りて準備をしていると、いきなり森の中からクマゲラの声が聞こえて驚かされました。観察を開始すると10羽ほどのツグミの小群が白樺に止まり、遠くにはシメも止まっていて、ようやくここで渡りの鳥が見られた感じがしました。すると遠くで鳴いていたヤマゲラが飛んできて白樺の上に止まったことから意外にもじっくり見ることができました。林に向かうとツツドリが針葉樹の上にやってきて「ポポポポ・・」という独特の声でさえずりはじめ、その後も電線や枯れ木に止まってその姿を楽しませてくれました。さらに進むと、さきほどのツグミの群れが地上採食していて、個体によってかなり色彩が異なることがわかりました。またここではオオジシギがけたたましく鳴いていました。さらに森の奥まで行くと、ミズバショウが咲いている湿地でキビタキのさえずりが聞こえ、木に止まっている姿を見ることができました。その後もキビタキに出会うことができ、ここではまだ雪が残っている場所で地上に降りて採食していました。また反対側の枯れ木ではアオジが単調なさえずりを繰り返していました。その後は新緑が美しい林を歩き、頭上でセンダイムシクイが鳴いている中、アカゲラが枯れ木を上り、ここでもキビタキ、コサメビタキが間近にやってきてくれました。一通り回った後は一旦、休憩の時間をとってから朝にクマゲラが鳴いていた場所に行ってみました。ここでは残念ながらクマゲラの気配はなかったですが、ニュウナイスズメが枯れ木に止まってよく鳴いていました。そして最後の1時間は少々場所を変えて探鳥してみました。ここはまだまだ雪が残る中、一部が湿地帯になっていてちょうどミズバショウ、リュウキンカ、ザゼンソウが見ごろでした。森からはセンダイムシクイのさえずりが聞こえ、電柱に営巣しているのか、ニュウナイスズメのつがいが止まっていて、メスが巣材をくわえていました。その後はベニマシコがちらっと見られ、わずかに小雨が落ちてくる中、この日の探鳥を終えました。

今回の利尻島ツアーは雨のスタートになってしまいましたが、その後の天候が回復してくれたことは幸いでした。利尻島では渡り鳥の姿が極めて少なかったですが、現地ガイドさんのおかげでクマゲラ、コマドリ、ノゴマを堪能できたほか、アカガシラサギ、ヒレンジャク、ムネアカタヒバリに出会うことができ、航路ではアカエリヒレアシシギ、ハシボソミズナギドリの群れが見事でした。道内では黄色が鮮やかなツメナガセキレイ、ノビタキ、ホオアカ、そしてヤマゲラ、ツツドリ、キビタキ、ニュウナイスズメ、センダイムシクイ、渡り中のツグミの群れやマミチャジナイなどにも出会えました。この度はご参加いただきましてありがとうございました。

石田光史

ヤマゲラ 撮影:大槻繁様

 

ノゴマ 撮影:上田恵様

 

ツツドリ 撮影:大槻繁様

 

アカエリヒレアシシギ 撮影:上田恵様

 

コマドリ 撮影:大槻繁様

 

ヒレンジャク 撮影:上田恵様

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