【ツアー報告】初夏の戸隠高原ハイキング 2025年5月18日~19日

(写真:クロツグミ 撮影:芝田恵美様)

思い起こせば20年ほど前に私が初めてバードガイドのお手伝いという形で訪れたのがこの戸隠高原でした。その後、担当を引き継いでから15年ほどが経ち、秋のみの企画だったツアーを春も企画するようになって10年ほどが経ちました。私的な感覚ではありますが、数多くある国内の探鳥地の中でも特に好きな場所で、若いころからかなりの日数通い続けています。そのせいか特に得意な場所になりつつあり、毎回訪れるのが楽しみな場所でもあります。初夏の戸隠高原の特長といえばとにかく可愛らしい小鳥類が多く、また見やすいことでしょう。特に目立つのがキビタキとコサメビタキでクロツグミとの出会いの確率が高いことも忘れてはいけません。ほかにも、ニュウナイスズメ、サンショウクイ、アオジ、ノジコ、コルリ、ミソサザイ、また留鳥のコガラやエナガ、キバシリ、アカゲラ、オオアカゲラ、ゴジュウカラなどが存分に楽しませてくれます。珍鳥と呼ばれる種に出会う確率は極めて低いものの、美しい風景と野鳥、そして花々に囲まれる2日間はまさにバードウォッチングの醍醐味が凝縮されているといっても過言ではないでしょう。この時期の戸隠高原は本来であれば涼しいのですが、この日の長野駅前は早朝から快晴だったこともあり、気温はぐんぐん上がって集合時間には25℃になっていました。ただ天気予報は2日間を通して概ね良いとのことでした。

18日、前日から長野駅前に泊まっていましたが、この日は早朝からほぼ快晴で気温もぐんぐん上昇しているようでした。集合時間には全員がお揃いになったことから、資料を配布してからバスに乗車していただき、まずは今回お世話になるホテルに向かいました。途中、飯綱高原からバードラインを通って戸隠高原に向かう道は瑞々しい新緑が美しく、さらに標高を上げて中社を過ぎたころからは、日曜日ということもあってかなりの混雑でした。そして残雪がある戸隠連山の風景が出迎えてくれると、いよいよホテルは目の前で、到着後は一旦、お部屋に入っていただき各自昼食、そして観察機材の準備をしていただいてから再度バスにて出発しました。日曜日のため、まだまだ混雑しているだろうということで、まずは鏡池に行ってみました。到着後に湖面を見るとトビが飛び回り、コガモの群れ、そしてカルガモの姿がありました。森に入ると周囲からはアカゲラの声が聞こえ、オスのアカゲラが木を登っていく姿を見ることができました。戻る途中ではキビタキのオスが間近に現れ、観察しているともう1羽のオスと縄張り争いをする様子を見ることができ、周囲ではニュウナイスズメ、コサメビタキの声がしていました。観察後にバスに戻る頃には急に霧が押し寄せてきて、美しかった鏡池の景観は一気に見えなくなってしまいました。その後は移動して、霧で視界が悪い中ではありましたが歩いてみました。林を見るとモズが枝に止まり、広場まで行くと間近にゴジュウカラが現れて、しばらくその姿を楽しませてくれました。また地上を歩きながら採食している3羽のアカハラが見られ、鳴きながら飛んできたサンショウクイが針葉樹に止まってくれました。その後も霧のため視界がなく、遠くから聞こえるカッコウ、ホトトギスの声を聞きながら駐車場に向かいました。その途中では地上に降りて餌を探している2羽のアカゲラが見られ、最後は樹上を動き回るコサメビタキ、サンショウクイを見て移動しました。まずはトガクシショウマの花を見てから進み、ここでは渡り中と思われるキンクロハジロのつがい、そしてカイツブリ、カルガモが見られ、足元から飛び立ったノジコがカラマツの横枝に止まってくれました。さらに進むと目線ほどの横枝でアオジがさえずっていたことから、望遠鏡を使ってじっくり観察することができました。広場まで行くとさえずってはいないもののキビタキのオスが見られ、さっと地上に降りて採食して林の中に消えていきました。そしてこの日もここで営巣中のコサメビタキが見られましたが、再び霧が濃くなってきてしまい、薄暗くなってきたことから来た道を戻ることにしました。するとクロツグミが朗々とさえずってはいましたが、視界が悪く見ることができず一旦は諦めましたが、しばらくするとより近い距離感でさえずり出したことから戻って探してみると、大木の横枝に止まってさえずっているクロツグミを見ることができ、しばらくさえずっていたことからじっくりと観察、撮影することができました。

19日、この日は午前中は曇りとのことで予定通り早朝探鳥に出かけましたが、周囲の霧はまだ取れておらず、しかもちょうどこの時間に小雨が落ちてきてしまいました。この時間は早朝ということもあって、ここまで見られていない種がさえずっていないかを確認する意味でも木道に入ってみました。早朝ということで期待しましたが、残念ながら鳥たちのコーラスはほとんどなく、相変わらずコサメビタキやサンショウクイの声がするばかりでした。ただようやくコルリのさえずりが聞こえたことから探してみました。すると樹上でさえずっているコルリがいたことから数回に渡って観察することができました。また付近ではミソサザイもさえずっていて枯れ木に止まってさえずる姿を見ることができました。観察後は一旦、ホテルに戻って朝食をいただき、再度出発して探鳥しました。この時間にはようやく青空が見え始めてきていて、そのせいかやや鳥の声が増え、みどりが池ではアカハラが枯れ木に止まっていました。木道を歩くと奥からクロツグミのさえずりが聞こえてきたことから探してみると、枯れ木のてっぺんでさえずっている姿をしばらく観察することができました。さらに歩くとアオジが単調なテンポでさえずっている姿が見られ、枯れ木にある巣にやってきているニュウナイスズメ、間近にさえずっているミソサザイが見られ、戻る途中では頭上にサンショウクイのつがいがやってきて賑やかに飛び回り、さえずってはいないもののキビタキのオスもやってきてくれました。そして戻る途中ではハチクマの飛翔を見ることもできました。ホテルに戻って12:00過ぎから昼食をいただき、残りの時間はどこに行こうかと考えましたが、ここまでオオアカゲラが見られていないことから探してみることにしました。この時間はさらに快晴に近づいて戸隠山が見事な姿を現してくれ、汗ばむような陽気になっていました。昨日、クロツグミを見た場所では、この時間もさえずりが聞こえ、カラマツの横枝に止まってさえずる姿をこの日もじっくり見ることができました。その後は広場でアカハラ、キビタキ、コサメビタキ、そして巣穴に出入りしているゴジュウカラを見てから木道に入りました。この時間もさえずりは少なかったですが、キビタキ、コサメビタキ、キバシリ、ミソサザイなどを見ながら歩き、途中のカラマツ林ではカケスが騒ぎながら飛び、ニュウナイスズメのオスが巣穴から顔を出しているシーンをしばらく見ることもできました。そして戻ってきた際には巣穴を掘っているコガラのつがいが見られ、ミズバショウ園ではつがいと思われる2羽のサンショウクイが高木と湿地を行ったり来たりしていて、どうやら巣材を集めているかのようでした。探鳥を終えて駐車場に戻る際にはキセキレイが広場を歩き回っていて、振り返ると戸隠山がよりくっきりと見えていて心地よく感じました。

今回は天気には心配がないかと思っていましたが初日は霧がかかり、翌日は小雨のスタートとなり、結果的に青空が見えたのは2日目の昼前からでした。全体的には今回もキビタキが少な感じたものの、早朝探鳥ができたこともあって、コルリ、ノジコに出会うことができました。また、今回もよい場所でクロツグミがさえずってくれたことから例年になくしっかり観察することができました。ほかにもコサメビタキ、サンショウクイ、ニュウナイスズメ、アオジ、アカハラ、ゴジュウカラ、ミソサザイ、アカゲラ、アオゲラ、コガラ、エナガなどが見られ、ハチクマの飛翔を見る機会もありました。また今回もミズバショウやリュウキンカがちょうど見ごろだったことも印象的でした。この度はご参加いただきましてありがとうございました。

石田光史

キビタキ 撮影:大坪昭允様

 

ゴジュウカラ 撮影:hitaki様

 

カイツブリ 撮影:芝田恵美様

 

アカゲラ 撮影:大坪昭允様

 

コサメビタキ 撮影:hitaki様

 

ミズバショウ 撮影:芝田恵美様

 

コガラ 撮影:大坪昭允様

 

戸隠山 撮影:hitaki様

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