【ツアー報告】日本最大のガンの越冬地 伊豆沼と蕪栗沼・化女沼 2022年11月11月12日~13日

(写真:カリガネ 撮影:小林浩様)

日本は四季がはっきりしている国であると言われていますが、最近はどうも秋が短いように感じてしまいます。そんな中、四季を通して探鳥している日本のバードウォッチャーにとって秋といえば伊豆沼を外すことはできないでしょう。私が子供の頃によく遊んでいた環境によく似ていることもあってか、訪れるたびに懐かしさを感じてしまいます。ご存じの通り、この伊豆沼は日本最大のガン類の越冬地で、その総数は10万羽を超えているとも言われています。伊豆沼の特長は日本で見られる5種類のガン類を一気に見られる可能性が高いことで、このツアーでもマガン、ヒシクイ、シジュウカラガン、カリガネ、ハクガンの5種を探すことを主な目的にしています。また、早朝に塒から飛び立って行く塒立ち風景、そして夕景の中、続々と塒に戻ってくるガンたちを観察する塒入り観察の大イベントも楽しみです。ただし、探鳥地のほとんどが狭い道な上、駐車スペースが限られていることから我々のツアーではマイクロバスを使用し15名様限定のこじんまりした形態にしています。これによりできる限りガンに近づくことができ、歩く距離も軽減され、広大な畑地の隅々まで探鳥可能で、警戒心の強いガン類に近づく手段として車内からの観察といった手法も可能になりました。毎回、おおよそお天気の不安がない時期ではありますが、今回は2日目の夕方から雨の予報が出ている中での出発となりました。

12日、ここのところずっと天気が良かったのですが、この日も早朝から快晴の東京駅を予定通り出発して新幹線でくりこま高原駅を目指しました。到着後もこれといって寒いといった感じがないまま駅にてご参加の皆様にご集合いただいた後は一旦、ホテルに向かい、ロビーをお借りして観察機材準備を行ってから探鳥に出発しました。伊豆沼、蕪栗沼の探鳥ポイントはどこも道が狭く、また駐車スペースも確保されていないことからこのツアーではマイクロバスを使い、かなり隅々まで探鳥ができるようにしていますし、こういった方法でないと、それぞれのガンたちを探し出すには時間がかかり効率が悪いのです。この日はまず伊豆沼に行ってみることにしました。ここはだいたい毎日マガンのかなり大きな群れが地上に群れているのですが、この日も予想どおりでかなり大きな群れがいくつも降りていました。ひとまずバスを降りて観察してみると、この日は湖面にもかなりの数のマガンが降りていて、時折、飛び立っては畑地に移動するなど、日中としてはかなり動きがある状況でした。観察しているとエナガの群れがやってきて、湖面を眺めるとオオハクチョウやカンムリカイツブリ、マガモ、オオバンなどの姿もありました。ひとまず皆様にはマガンの識別ポイント、さらには幼鳥、成鳥の違いを見ていただくことにしましたが、群れの中には2羽のシジュウカラガンの姿も見られました。大きなマガンの群れが一斉に飛び立つシーンなども見られたことから、この後は一旦トイレ休憩をとり、その後はカリガネを探してみました。カリガネは私がこのツアーを引き継いだころは、まず見ることができない珍しいガン類の代表種でしたが、ここ10年ほどで一気に渡来数が増えたようで、今では運が良ければ50羽単位の群れを見ることも珍しくなくなりました。過去、さまざまなエリアを走りまわって探してきましたが、どうやらどこにでもいるわけではなく、好きな場所がある程度決まっているように感じました。この日も2時間弱の観察の中で何度かマガンの群れに混じっているカリガネの姿を見ることができ、マイクロバスの利点を活かしてある程度接近してバスを降りてじわじわと近づくことができ、額の白色の面積が大きく、マガンとは嘴の色も異なり赤みが強いといった部分も見ていただき、最後はさらに接近して撮影していただきました。観察後は再びトイレに寄っていただいてから塒入り観察を行うことにしました。マイクロバス使用のためポイントのすぐ下まで行くことができ、到着後は堤防上に上がるだけ観察を開始することができました。周辺の畑地には早くもマガンの群れが降りていて、よく見るとその中にはかなりの数のシジュウカラガンが混じっていました。翌日の夕方は雨になるだろうとの予報から、塒入りの観察はこの日だけになるため期待していましたが、この日は当地としては珍しく西の空には全く雲が出ておらず、美しい夕陽が沈んだ後は、真っ赤に焼けた夕景を背景に次々に塒に帰ってくるマガンの群れを見続けました。毎年見ていますが、この圧倒的な迫力飽きることなく、ぜひとも多くの方々に体感していただきたいなと思います。幸いにもそれほど寒さを感じることなく過ごすことができ、周辺が薄暗くなった17:00に観察を終了してホテルに向かいました。

13日、この日は早朝の塒立ちを観察するため早朝にホテルを出発して伊豆沼に向かいました。ただこの日は早くも霧が立ち込めていました。現地に到着すると霧が出ているにも関わらず20人ほどの人がマガンの飛び立ちを見るために集まっていて、我々も早速準備を進めました。ただこの日は日の出時間の06:15になっても視界が開けることはなく、日の出から30分ほど過ぎた頃からようやくガンたちの塒立ちが始まり、一斉にとはいかないものの霧の中から次々に飛び立って行く様子を観察することができました。観察後は一旦ホテルに戻り、朝食をいただいてから再度出発してこの日は化女沼に向かいました。ただ驚いたことにこの時間になっても霧がとれず、上空を飛んでいくマガンも霧のせいで声を聞くだけでした。早速、ジョウビタキやホオジロの声が聞こえ、地上で餌を捕っていたカシラダカの群れが飛び立って木に止まりました。湖面はまだまだ霧が残っていましたが、ヒドリガモの数が多く、ほかにもマガモ、カルガモ、オカヨシガモ、コガモ、ハシビロガモ、オオバンなどが見られ、その後はシジュウカラガンの群れを探すことにしました。ガンたちは基本的には日中は地上で採食行動をしていますが、種類によって群れている場所がやや異なるようで、シジュウカラガンに関しては伊豆沼周辺で日中に大きな群れを見ることはできないようです。現地では広大な畑地をめぐりましたが、幸いなことにいきなり大きなマガンの群れに出会うことができ、見てみるとそれなりの数のシジュウカラガンが混じっているようでした。ただ、この群れは接近することができず飛び去ってしまったため、また別の群れを探してみることにしました。するとそもそも地上に群れていたマガンの群れに次々に別のマガンが合流している群れを見つけたため歩いて接近してみることにしました。かなり大きな群れでしたが少しずつ接近することで意外なほど近づくことができ、観察していると幸いなことにどこからともなく飛んできたシジュウカラガンが次々に合流してきました。結局、それなりの時間をかけて地上に群れているシジュウカラガンを観察することができ、その後はトイレに寄ってから一旦各自昼食の時間とし、昼食後は雨が降り出す前にヒシクイのポイントに向かって歩くことにしました。まだまだこの時間は雨の心配はないようで、歩き出すとホオジロが飛び、ハシブトガラスに追われるハイタカが飛んでいました。さらに歩くと湖面に群れるヒシクイが間近に見られ、中には亜種ヒシクイの姿もありました。カモ類の姿は多くはなかったですが、この日は複数のトモエガモの姿が見られ、飛び回るチュウヒ、そしてタゲリの姿もありました。そして駐車場まで戻ると周辺の畑地にかなりの数のマガンが降りていたことから見てみると、その中には白と赤茶色といった珍しい色合いのマガンの変異個体がいました。その後はやや時間があったため、再びカリガネを探してみることにしました。この頃からは小雨が落ちてきてしまったため主にバス車内から観察することにし、マガンに混じる数個体のカリガネをバス車内から観察、撮影することができ、最後は小雨が落ちてくる中、この日も続々と塒に帰ってくるマガンの群れを観察してツアーを終えました。

今回は初日に関しては順調に進んだものの、翌日は早朝が濃霧、夕方は小雨となってしまい、このツアーの目玉である早朝の塒立ちを見ることができず残念でした。夕方の塒入りは初日にたっぷりと見ることができ、圧倒されるような迫力と、美しい夕景に映えるマガンやシジュウカラガンの乱舞は見事でした。これぞ日本最大のガンの越冬地と言わんばかりのマガンの大群の乱舞が各所で見られ、シジュウカラガンの群れ、そしてカリガネも堪能することができ、ヒシクイも2亜種を見ることができました。またチョウゲンボウ、オオタカ、ノスリ、チュウヒといった猛禽類、そしてタゲリやトモエガモにも出会うことができました。今後も彼らが安心して越冬できる環境がずっと維持されることを祈るばかりです。今後も探鳥地の状況を考慮し、小型車を使って隅々まで探鳥可能なツアー企画をしてまいります。ぜひまた伊豆沼に晩秋の風景を見にお出かけください。この度はご参加いただきましてありがとうございました。

石田光史

マガンの群れ 撮影:松岡哲弘様

 

マガン 撮影:坂東俊輝様

 

ハイタカ 撮影:ikotama様

 

シジュウカラガン 撮影:小林浩様

 

マガンの塒入り風景 撮影:松岡哲弘様

 

カリガネ 撮影:坂東俊輝様

 

チュウヒ 撮影:ikotama様

 

マガン 撮影:小林浩様

 

シジュウカラガン 撮影:松岡哲弘様

 

マガン 撮影:坂東俊輝様

 

シジュウカラガン 撮影:ikotama様

 

ヒシクイ(左)とオオヒシクイ 撮影:小林浩様

 

カリガネ 撮影:松岡哲弘様

 

交雑と思われる個体 撮影:坂東俊輝様

 

オオヒシクイ 撮影:ikotama様

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