【ツアー報告】知床沖チャータークルーズと落石クルーズ 2016年7月3日~5日

(写真:エトピリカ 撮影:大坪昭允様)

今期の夏の北海道シリーズの最後を飾るのはまたまた完全新コース。漁船による海鳥観察クルーズにクルーザーをチャーターした海棲哺乳類観察を組み合わせた海の生き物観察に特化したコースです。ツアーにクルーズを組み込むことは魅力的な要素が増える半面、海況悪化による欠航の恐れと隣り合わせでもあります。今回は過去の海況状況を調査して、最も欠航率の低い時期に設定してみました。

3日、中標津空港でご参加の22名様が揃い、観察機材の準備をしてから野付半島に向かいました。この日は時間的な問題からひとまず数時間の原生花園での探鳥です。今期の野付半島は花の状況が良く、赤いハマナス、黄色いセンダイハギ、白いシシウドが咲き、奥に進むにつれてオレンジ色のエゾカンゾウが増えてきました。まずは4羽でたたずむタンチョウの姿を観察し、その後は飛翔する姿も見ることができました。周辺ではオオジュリンやシマセンニュウ、アオジがさえずり、人気の真っ赤なベニマシコの姿に盛り上がりました。また電線にカッコウ、ノビタキが止まり、観察していると枯れた杭にアリスイがやってきました。どうやら巣があるようでせっせと餌を運んでいるようでした。また海上ではクロガモの群れやスズガモの姿もありました。午前中は霧で視界不良だったそうですが、この時間は風が冷たいながらも原生花園の鳥を楽しむことができました。

4日、05:30にホテルを出て朝食前に探鳥を行いました。雑木林ではハシブトガラ、ゴジュウカラ、ヒガラが餌を探して動き回り、ふいに「ヒッ、ホッ」と鳴きながらベニマシコのメスが現れました。草原ではカッコウが鳴き、モズの姿も見られました。またウグイスが枯れ枝でしばらく「ホー、ホケキョ」を繰り返していました。さらに進むとコヨシキリの姿があり、距離はあったもののようやくノゴマの姿を見ることができました。朝食後はいよいよこのツアーの一つ目の目玉である落石クルーズに乗船です。この日は朝から奇跡的に霧もなく風もありませんでしたので運航に問題はなさそうです。落石港に着くとまずはライフジャケットの装着などを行ってから2隻に分かれて09:00に出港しました。出港するとやや風があり向かい風で思いのほか厳しい状況でしたがかなりの数のウトウの姿が見られました。また所々にケイマフリの姿もあり、船を止めて観察することができました。なかなか見られなかった主役のエトピリカも後半にようやくその姿を見せてくれ2羽が仲睦まじく寄り添うように浮き、白い顔と特徴的な金色の冠羽を見ることができました。また最後は仲良く飛翔して我々の周囲をぐるぐると旋回してくれました。ほかにもウミウ、ヒメウ、ウミガラス、ウミスズメの姿もありました。観察終了後は一気に知床に向かいました。ここではギンザンマシコを狙う予定でしたが濃霧のため視界がほとんどなく、飛翔するアマツバメ、ハイマツ帯でアオジの姿を見るに留まり、1時間ほどの探鳥で諦めることになり残念でした。早めに山を下りたことから宿周辺で時間ほど探鳥を行いオオルリ、キビタキ、センダイムシクイ、イワツバメなどを観察し、その後はシマフクロウ観察に向かいました。日中は曇り勝ちで途中、強風が吹く場所もありましたが観察時は無風で観察条件は良かったのですが結局この日はシマフクロウに出会うことができず、満点の星空を眺めながらホテルに戻ったのでした。

5日、この日はこのツアーの一番のメインであるチャータークルーズに乗船するため05:00にホテルを出て港に向かいました。朝食、昼食の準備などありましたが予定よりもやや早い05:50に出港しました。前日は強風のため欠航。そのため海の生き物の状況が分からなかったのですが、早朝に船長が陸から観察して下見をしてくれていました。結果として比較的近い海域にシャチの小群がいるとのことでまずはこの群れに接近してみました。ただこの群れはあまりフレンドリーではなく全くアクションがないため違う群れを探すことにしましたが結果的にはこれが大正解。この後は船体の周囲でシャチが次々にジャンプを見せ、中には声を発しながら背面飛びのような行動をする個体もいました。またふいにエトピリカが飛んできて船の前を横切っていき驚きました。その後も周囲はシャチだらけで総数としては50頭ほどのシャチに取り囲まれるような状況になり、ブローと共に連続浮上したり、テールスラップ(尾ビレを高く上げて水面を叩く行動)やスパイホップ(垂直に体を持ち上げて頭を水面に出して周囲を伺う行動)ペックスラップ(体を横にして胸ビレで水面を叩く行動)などさまざまな行動を見せて楽しませてくれました。予想以上にシャチを観察することができたことからその後は日露中間線に沿って波の穏やかな海域を流してもらい、着水しているフルマカモメ、ハシボソミズナギドリ、アカエリヒレアシシギなどを観察し、最後にようやく着水している白色型のフルマカモメを間近に観察することができました。そして最後の最後には夏羽のミツユビカモメの姿が見られ、2羽のトウゾクカモメが我々の頭上をフワフワと飛翔してくれました。シャチの個体数は船長も驚くほどでしたが、ほかの鯨類は思いのほか少なくイシイルカの姿があったのみでした。

今回は初の企画として主に海棲哺乳類を狙って6時間ほどのチャータークルーズを組み込み、おなじみとなった落石クルーズではエトピリカをはじめとした海鳥観察を行いました。また原生花園ではノゴマ、シマセンニュウ、オオジュリン、ベニマシコ、タンチョウ、アリスイなどが見られましたが、シマフクロウとギンザンマシコには出会えず残念な部分もありました。ただやはりこの時期の海の生き物が大変魅力的であることは実感できましたので今後夏の北海道ツアーの定番にしたいと思いました。ご参加いただきました皆様、この度はお疲れ様でした。

石田光史

ケイマフリ 撮影:大坪昭允様

ケイマフリ 撮影:大坪昭允様

 

シマセンニュウ 撮影:大坪昭允様

シマセンニュウ 撮影:大坪昭允様

 

アオバト 撮影:大坪昭允様

アオバト 撮影:大坪昭允様

 

シャチの群れ

シャチの群れ

 

シャチのWジャンプ

シャチのWジャンプ

 

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