【ツアー報告】タカ渡る白樺峠とライチョウが棲む畳平 2016年9月17日~19日

(写真:ハチクマ 撮影:森下英昭様)

1年のうちで僅か半月間ほどしか楽しむことができないのが秋のタカの渡りです。この時期を逃すとまた来年までその光景を見ることはできないため、この時期はほぼ全てのバードウォッチャーがタカの渡り観察に出かけるのです。ただ、天候に大きく左右されるためリスクがあるため、毎年のように訪れないとなかなか良い光景に出会うことができないという難しさもあります。今回は3日間の日程で、そのうち1日は乗鞍高原から1時間ほどのところにある標高2700mの畳平で高山鳥も楽しむ予定です。さて、気になる天気ですが初日を除いてはあまり芳しくない予報でした。そのためまず初日は白樺峠でタカの渡りを観察することにしました。

17日、新宿から特急で松本駅に向かい、そこで現地からご参加のお客様と合流して11:00に松本駅を出発しました。途中休憩をはさみましたが12:45にはタカ渡り観察のメッカ、白樺峠の駐車場に到着しました。観察機材の準備をしていると曇り空ながら早速上空を鳴きながら飛ぶハチクマの姿を見ることができました。そこから山道を歩き13:20にはタカ観察のポイントに到着しました。到着後はまずトラベルイヤホンを装着していただきタカ出現の指標になる箇所の確認を行いました。通常であれば基本的にはガイドの声が聞こえる場所での探鳥をお願いするところですが、このトラベルイヤホンがあるため、その後はそれぞれ好きな場所に陣取っての観察が可能になりました。仮にガイドの立ち位置が見えないような場所に陣取っても、まるで傍にガイドが立ってタカの出現や識別ポイントを話してくれているような感覚で観察ができるわけです。この日はどんよりとした空模様ながらタカの出現は好調で13:20には2個体、13:25には3個体のハチクマが低く旋回し、13:40には30羽ほどのサシバがタカ柱を作りながら尾根上を旋回し、その後は我々の頭上を越えていきました。14:00にはまずオオタカが舞い、その後は眼下から数羽のハチクマが湧き出し、14:15にはようやく光線状態よくハチクマが見られたため、幼鳥、メス成鳥の特徴を確認することができました、14:30にはオス成鳥、幼鳥のハチクマが飛び、14:40には特徴的なハチクマ幼鳥の暗色型が見られました。そして15:00には深い羽ばたきが特徴のツミが横切り、15:15にはふいに現れたツミ幼鳥が我々の間近を飛んでいきました。その後はタカの出現はパタッと止まってしまいましたが、最後はハリオアマツバメの群れの乱舞を見ることができました。結果的には曇りだったせいか、比較的低いところを飛ぶタカが多かった印象でした。観察は16:00までとし一旦宿に入りましたが、この日は夕食後に恒例のタカ飛翔識別講座を行い、今日の復習、明日からに向けての予習を行いました。

18日、06:00から宿周辺で渡り中の小鳥類の観察を行いました。ただ、残念ながら天気予報が当たってしまい雨でした。幸い、宿の近くにミズキの木があり、その付近を軒下から観察することができることから観察していると、雨の中、エゾビタキ、サメビタキ、コサメビタキ、キビタキ、オオルリなどがやってきてくれたため、雨に濡れることなくこれらの鳥を観察することができました。朝食後も雨が止まないことからタカ観察は諦め、一旦、畳平に向かうことにしました。ただ雨は激しく降り、途中の道路は一部が冠水し、排水路から雨水があふれ出している箇所もありました。到着後は僅かに歩くことができましたが、降雨量規制を超えることが予想されるとのことで通行止めとなり、強制的に下山することになりました。結局この日は雨が激しく降っていたため、下山後も宿周辺での探鳥を続けることにしました。ただ、小鳥たちは雨に負けることなくミズキの実にやってきてくれ、エナガの群れ、ヒガラ、コガラ、ゴジュウカラ、コゲラ、メボソムシクイなども加わり、今年生まれの一部が青いオオルリも姿を見せてくれました。この日は探鳥を15:30で終了したことから夕食後に予定していた第二回の識別講座を夕食前の16:30から行い、タカだけでなくヒタキ類にも範囲を広げて識別講座を行いました。

19日、06:00。この日も小雨が降る中だったため宿の軒下から探鳥を行いました。相変わらずミズキの実には小鳥たちがやってきてくれました。前日に急遽、ヒタキ類の識別講座も行ったことから、この日はやや難解なキビタキのメス、コサメビタキ、サメビタキ、エゾビタキのそれぞれの特徴を確認しながら探鳥することができ、珍しく真っ青な姿が美しいオオルリの成鳥オスがやってきて盛り上げてくれました。また間近にあるシラカバには15羽ほどのヒガラの群れがやってきて楽しませてくれました。ひとまず07:30から朝食とし、やや時間を置いた09:30に再度ご集合いただきましたが、驚いたことに雨が止み空が明るくなってきました。これはチャンスとばかりに宿からやや離れた乗鞍高原内の草原までバスで行き、そこから歩いて探鳥することにしました。草原は見事な草紅葉で染まり、雨が上がったことから無数のイワツバメとツバメが飛びまわっていました。草原内のシラカバにはオスのアカゲラの姿があり、その後もコガラ、ヒガラ、ヤマガラ、シジュウカラ、エナガなどが見られました。その後も雨が降りそうではなかったためさらにさらに別ポイントまで足を延ばして観察を続けました。ここでは川沿いにキセキレイ、カワガラスの姿があり、我々の先導をするように複数のカケスの姿がありました。また蕎麦畑ではホオジロの姿があり、付近のカラマツにはエゾビタキの姿もありました。そして最後はここ数年、長野県内各所で繁殖が確認されているジョウビタキの姿も見ることができました。ここではオス2羽、メス1羽が見られ、同様にミズキの実を食べているようでした。宿付近まで戻ってくるとビンズイの姿を見たお客様もいらっしゃったようで、わずかな晴れ間の間にさまざまな小鳥たちの姿を観察することができました。ただ、宿に戻った頃には再び雨が降り出していました。

3連休を使った3日間のツアーでしたが、今回は残念ながら大規模なタカの渡りを観察することができず、また大雨の影響からライチョウなどの高山鳥も観察することができませんでした。ただ、初日には僅かながら渡って行くハチクマ、サシバ、ツミ、ハリオアマツバメの姿を観察することができ、乗鞍高原内各所を巡って、エゾビタキ、サメビタキ、コサメビタキ、キビタキ、オオルリなどの渡り途中の小鳥類も多数観察することができました。最初にも書きましたがタカの渡りが観察できるのは1年のうちの僅かな時期だけです。今回は残念でしたがまた来秋も企画いたしますのでぜひ再チャレンジください。この度は大変お疲れ様でした。

石田光史

サメビタキ 撮影:森下英昭様

サメビタキ 撮影:森下英昭様

 

ハチクマ 撮影:森下英昭様

ハチクマ 撮影:森下英昭様

 

ハチクマ 撮影:森下英昭様

ハチクマ 撮影:森下英昭様

 

ハチクマ 撮影:森下英昭様

ハチクマ 撮影:森下英昭様

 

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