【ツアー報告】6月の大洗~苫小牧航路 2018年6月1日~3日

(写真:クロアシアホウドリの群れ 撮影:齋藤禎治様)

我々、鳥の観察会の看板商品である海鳥観察。さまざまな時期にさまざまな定期航路や漁船、クルーザーなどで企画しています。特に船酔いの心配が低減される大型客船からの海鳥観察は人気があり、この大洗~苫小牧航路も年に5回程度企画しています。海鳥観察は広いデッキから観察するためガイドの声が全体に届きにくいという難点がありましたが、我々はトラベルイヤホンという器具を使用して観察するため、瞬間的な海鳥の出現をデッキにいる全員でリアルタイムで共有することが可能です。また大声を張り上げることがないため詳細な位置や識別ポイントなどをリアルタイムでお伝えすることができます。今回は海鳥たちの北上期真っ只中のこの大洗~苫小牧航路のベストシーズンの探鳥です。天気予報も問題なく、風も穏やかな週末に当たりました。

1日、集合時間のよりもやや早く全員のお客様のご集合が完了したため、少々早めに資料配布、トラベルイヤホンの説明、そして翌日の案内やこの時期に見られる可能性の高い海鳥の解説などをしてから乗船を開始しました。

2日、この日は金華山沖から観察を始めました。空には青空が広がり、海は信じられないようなベタ凪でまるで湖の湖面を見ているかのようでした。この時期は海鳥たちの北上期にあたるため海鳥の個体数が非常に多く、早速オオミズナギドリの群れが飛翔し、その中に混じるハイイロミズナギドリ、一際大きいクロアシアホウドリがほとんど途切れることなく飛翔していました。また風向きの影響なのか船と同じ方向に飛翔する個体が多く、船首をかすめるように飛翔してくれたため比較的近い距離感で観察することができました。ハイイロミズナギドリの群れに混じって飛翔するアカアシミズナギドリが見られ、その後はクロアシアホウドリに負けないくらいのコアホウドリが続々と登場してくれました。そして航路では珍しいダイサギが船を追い越すように飛び、その後は風が止まってしまったことから着水しているクロアシアホウドリとコアホウドリが目立ってきました。そして20羽ほどのクロアシアホウドリが塊りのようになって着水していたためデッキ上がどっと盛り上がりました。その後はオオミズナギドリの群れとカマイルカが同時に登場し、鳴きながらチュウシャクシギが飛翔しました。その後は再びアカアシミズナギドリが飛び、オオミズナギドリとハイイロミズナギドリの群れに混じるフルマカモメが見られました。昼前にはバタバタと羽ばたきながら水面を走るように逃げる夏羽のシロエリオオハムが見られ、夏羽のクロハラアジサシが飛びましたが直後に深い濃霧で一旦観察を中断しなくてはならない状況になってしまいました。午後には視界が開けたことから観察を再開し50羽ほどのハイイロヒレアシシギの群れとそれに混じるアカエリヒレアシシギが飛び始め、真っ赤な夏羽のため美しく歓声が上がりました。その後は10頭ほどの群れで浮いているキタオットセイの姿が目立ち始め、中にはイルカのようにジャンプする個体もいて楽しませてくれ、ザトウクジラの姿もありました。ただその後はやや風が出始めて6月とは思えないような肌寒さになってきました。それでもキタオットセイ、ヒレアシシギ類の群れの出現は続き、夕方にはハシボソミズナギドリが続々登場して風に乗るようにスイスイ飛翔し始めました。そして次第にフルマカモメの数が増えだす中、風に流されるようにアホウドリ亜成鳥が飛び、フルマカモメの白色型が飛翔しました。ただ残念ながらこの日は夕方に狙っていたウミツバメ類の出現はありませんでした。

3日、この日は早朝から探鳥を開始しました。天気も良く相変わらず海上はベタ凪でこの時間はコアホウドリの姿が目だっていました。海面が鏡のような状況だったため、小型のヒレアシシギ類が着水している様子を容易に発見することができ、夏羽に換羽したハイイロヒレアシシギとそこに僅かに混じるアカエリヒレアシシギの姿を観察することができました。またこの時間帯はフルマカモメの個体数も多かったためじっくりと飛翔形を観察することができました。そしてトウゾクカモメがウミネコを襲っているシーンを見ることができ、その後はベタ凪だったことから着水しているカンムリウミスズメの小群を何度も観察することができました。また船で休んでいたと思われるキジバトが飛び立って船体周辺を飛び回り、デッキ上が盛り上がりました。その後はこのツアーで初めてといってよい風が吹き始め、海上にも波が立ってきました。そんな中、再びキタオットセイの小群がいくつも見られるようになり、漂流物に止まるオオトウゾクカモメが出現しました。その後、はウミウとヒメウの群れが着水状態で見られ、夏羽のシロエリオオハムが飛翔しました。そして再び海上がベタ凪になる中、冬季にはよくこの航路で観察できるハシブトウミガラスの姿がありました。その後はオオミズナギドリの群れが連続して出現し、ハイイロミズナギドリが混じったり、アカアシミズナギドリが混じったりしてしばらくの間、楽しませてくれました。そして再びオオトウゾクカモメが飛びましたが、その後は急に冷たい風が吹き始めて体感気温がグッと下がったかと思うと再び濃霧のため観察中断となってしまいました。その後、ようやく観察を再開することができ霧が晴れるとオオミズナギドリの群れが飛びはじめ、その中に混じるオオミズナギドリの白化個体を見ることができ、連続してクロアシアホウドリが出現する中、航路上ではほとんど見かけないミサゴが飛翔しました。その後はオオミズナギドリ、コアホウドリ、クロアシアホウドリなどを見ながら福島県沖にある海上風車付近まで観察して終了しました。今回は風、波共にそれほど気にならない航路探鳥でしたが、思いのほか寒さを感じる2日間でした。

今回は一部で肌寒さを感じることがあり、途中、濃霧による観察中断がありましたが、海況は極めて穏やかで大洗~苫小牧航路のベストシーズンらしく海鳥がほぼ途切れない2日間でした。ウミツバメ類に出会うことができず残念な部分はありましたが、アホウドリ類3種、ミズナギドリ類5種、ヒレアシシギ類2種、そしてカンムリウミスズメ、オオトウゾクカモメといったこの時期の主役が出現してくれたほか、ザトウクジラ、カマイルカ、イシイルカ、キタオットセイが楽しませてくれました。定期航路からの海鳥観察は今後もさまざまな航路、さまざまな時期に企画していく予定です。海鳥は繰り返しの観察が重要ですので、またの機会、ぜひご乗船ください。この度はご参加いただきましてありがとうございました。

石田光史

【※】諸般の事情により詳細な出現状況をウェブサイト上では公表しないことといたしました。ご了承ください。

ヒレアシシギ類 撮影:齋藤禎治様

 

アカアシミズナギドリ 撮影:齋藤禎治様

 

コアホウドリ 撮影:齋藤禎治様

 

フルマカモメ 撮影:齋藤禎治様

関連記事

ページ上部へ戻る