【ツアー報告】日本最大のガンの越冬地 伊豆沼と蕪栗沼 2016年11月11日~13日

(写真:ハクガン成鳥)

晩秋の頃に北海道に渡ってきたガン類が、その後、続々と南下し越冬地にやってきます。越冬地にはさまざまありますが、その数が最も多いのが今回訪れる伊豆沼、蕪栗沼周辺で昨年は総数13万羽を数えました。今季は9万羽ほどまでになっているそうで、昨年よりはやや少ないですが、その圧倒されるような迫力に違いはありません。そしてそのほとんどを占めるのがマガンですが、その中に少数のカリガネ、ハクガン、シジュウカラガンが混じっています。これにヒシクイを加えたガン類5種を主に観察することを目的にしたのが今回のツアーです。ただ、これら全てを探すことは困難であることから、その確率を少しでも上げるために小型車利用の7名限定としています。これによりバスでは行けない道を走りながら徹底的に目的の鳥を探すことができるほか、大型車で起こりがちな交通障害も起こらず周囲に迷惑をかけることもありません。また鳥との距離を縮められるという最大のメリットも生まれています。  

11日、まずは東京駅から新幹線でくりこま高原駅に向かいました。ちょうどお昼に到着し外に出てみると小雨が降り、肌寒い状況でした。一旦ホテルまで行き、そこで観察機材準備をしてから探鳥に出かけましたが、やはり雨は落ちていました。天気予報は雨が続くとのことだったので、この日は観察が難しいカリガネをじっくり探してみることにしました。到着後は地上採食するマガンの群れを見てみました。するとあっさりと2羽のカリガネを見つけることができ、望遠鏡を使って観察しました。うずくまっているような状態でしたが、時より頭を上げたり羽繕いをしてくれたたため頭部の輪郭の違いや嘴の色の違い、そして最大の特徴である金色のアイリングを見ることができました。その後は塒に戻ってくるマガンたちを観察しました。生憎の小雨の中でしたが次々に塒に戻ってくる様子が観察でき、アシ原を飛び回るチュウヒ、カモ類を狙って低空飛行するオオタカの姿も見られました。

12日、05:45に出発して早朝の塒立ちを観察しに行きましたが、外に出ると深い霧に包まれていました。日の出とガンの飛び立ちが観察できる場所には大勢の人がやってきていましたが、結局日の出もガンの飛び立ちも霧に阻まれてしまい、残念な結果になってしまいました。朝食後はすっかり霧がなくなった中、シジュウカラガンを探しに向かいました。ここは数年前からシジュウカラガンの群れが見られていて、昨年も数百羽の群れが見られました。ただ、この日はいくつかのマガンの群れは見られたものの、シジュウカラガンの姿はなく移動することにしました。その後、たまたま立ち寄った畑地で、群れるマガンの群れの中に見事な純白を輝かせるハクガン成鳥を見つけることができました。どこから観察するのが良いかを思案していると、間近にシジュウカラガンの群れがいました。シジュウカラガンは30羽ほどの群れで道から近い場所にいたことから、まずは車を横につけて車内から観察しました。肉眼でも黒い首に白い頬を見ることができ、その後はやや離れた場所に車を移動してからで車を降り、望遠鏡を使ってじっくり観察しました。ハクガンも同様にまずは車内から観察した後、車から降りてじっくりと観察することができました。見事な純白は成鳥の証で本当に美しく思いました。結局、今回も重要な場面で少人数の利点を最大限に生かすことができました。その後は一旦伊豆沼まで戻り、昼食をとった後、沼を一周するようにして観察しました。ミコアイサ、ホオジロガモ、カワアイサ、ヒシクイ、さらにはカモ類を狙うオオタカの姿があり、沼の周囲の畑地には数千羽クラスの大きなマガンの群れが見られました。そして最後は塒入りを観察しました。堤防の上に立つとすぐ目の前に湖面が広がり、複数のオオハクチョウが休んでいました。周囲を見渡すと猛禽類が多く、電線にはコチョウゲンボウが止まり、ハヤブサも高速で飛んでいます。するとふいにハイイロチュウヒのメスがヒラヒラと飛び、特徴的な白い腰を見せてくれました。またアシ原上をチュウヒも飛んでいました。西の空が真っ赤になる頃、さまざまな方向からマガンの群れが塒めがけて飛んできては我々の上空を通過していきました。そして体を大きく左右に揺らすように着水する「落鴈」と呼ばれる独特の行動も見ることができ、気がつくと50羽ほどのシジュウカラガンの群れもやってきました。日没は16:20ですが、観察は17:00まで続けいつの間にか周囲はマガンたちの声に包まれていました。

13日、この日も05:45に出発。昨日ほどではないもののやはり霧が出ていました。現地は日曜日ということもあってかなりの混雑ぶりでした。日の出直前は霧がやや晴れた感じがあり、パラパラと飛び立って行くマガンの小群を見ることができましたが、残念ながらその後は風向きのせいか再び霧が濃くなり、昨日に引き続き残念な結果となってしまいました。一旦朝食のために戻り、その後再度出発しました。前日までに目的のガン類5種を見ることができていたこと、また平地でも霧が残っていたことから、この日はまず化女沼に向かいました。ここは霧もなく探鳥ができました。まずは駐車場周辺の林でカケスが飛びまわり、ベニマシコの声も聞かれました。沼にはヨシガモ、オカヨシガモ、コガモ、カンムリカイツブリの姿があり、上空をノスリ、オオタカが飛翔しました。その後は昨日、ハクガンを見た畑地に向かいました。ここでは再びハクガン成鳥に出会うことができ、まずは遠い場所から観察し次第に距離を詰めてじっくり観察と撮影を楽しみました。この日は暖かかったせいかのんびりと地上採食していて警戒する様子はありませんでした。その後は再びカリガネを探しました。この日は数百羽単位のマガンの群れがあちらこちらに見られ、カリガネ探しはやや困難な状況でした。ただ、いくつかの群れを見ていくとそれぞれに数羽のカリガネが混じっていました。ただ、群れが大きすぎるため不用意に近づくと飛ばしてしまうため、なかなか近づけません。ようやく安全な距離感が保てる群れに混じる2羽のカリガネを望遠鏡で見ることができました。ただ寝ているため頭を上げることが少なく、その特徴を確認するのに時間がかかってしまいましたが、なんとか見ることができました。そして最後は沼周辺を歩いて探鳥しました。今年はツグミの姿が多く、ほかにもモズ、ジョウビタキ、ホオジロ、カシラダカ、真っ赤なベニマシコの姿を見ることができました。湿地帯ではここの名物ともなっているヒシクイの群れが間近に見られ、よく見ると3羽のツルシギと2羽のハマシギの姿もありました。しばらく観察しているとやはり猛禽類が好調で2羽のチュウヒが舞い、ふいに現れたオオタカ幼鳥がマガモに襲いかかりましたが、全くうまく行かず退散していく様子が見られました。そして最後は夕焼け空を背景に徐々に塒に帰ってくるマガンの姿を見ながら探鳥を終了しました。ただ、駐車場に戻って周囲にいたマガンの群れを望遠鏡で見てみると、なんとハクガンの幼鳥4羽が地上採食していて、最後にちょっとお得な感じでツアーを終えることができました。

今回は初日にお天気が崩れたこと、また早朝の観察が2日間共に深い霧に阻まれてしまったことは残念でしたが、目的のガン類5種、マガン、ヒシクイ、ハクガン、カリガネ、シジュウカラガンを2日目にして観察することができました。特にハクガンは成鳥、幼鳥ともに観察することができ、シジュウカラガンもかなりの個体数が見られました。またカリガネの観察をはじめ、要所要所で小型車利用の少人数ツアーの利点が生きた観察ができました。また猛禽類も好調で、コチョウゲンボウ、オオタカ、ハヤブサ、チュウヒ、ハイイロチュウヒなどが見られ、当地の環境の良さを改めて感じる3日間でした。皆様お疲れ様でした。

石田光史

シジュウカラガン

シジュウカラガン

 

ハクガン成鳥

ハクガン成鳥

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