【ツアー報告】初夏の戸隠高原ハイキング 2017年5月10日~11日

(写真:クロツグミ 撮影:刈田宏様)

春の渡り期が過ぎると、その後は繁殖環境にやってきた夏鳥たちを観察するというまさにバードウォッチングの王道的時期に入ります。渡り期に見られる鳥たちは言うまでもなく疲れ切っている個体がほとんどですが、繁殖するための環境にたどりついた夏鳥たちはどれも美しく、何より見事なさえずりを聞かせてくれます。また初夏の森は絵的にも美しく鳥を見るには完璧な状況が揃っています。中でも今回訪れる戸隠高原の森は鳥が多く見やすいため、私にとっては最も好きで得意な探鳥地でもう20年以上季節を問わず訪れている場所です。ただ今年は季節の進みが遅く、イメージしていたよりも芽吹きが遅いとのことでした。今回は低気圧通過に伴い天気が不安定でしたが、予報によると雨は夕方から降り出し翌朝には止むとの予報でした。

 10日、ゴールデンウィーク後ということもあり、これといった賑やかさも感じない東京駅から無事新幹線に乗り込んで長野駅に向かいました。長野駅到着後は長野駅集合のお客様と合流して一旦ホテルに向かいました。ホテルに到着した後はお部屋にて各自昼食をとっていただき、13:00から探鳥に出かけました。東京は朝からかなり暑かったですが、戸隠は曇り空からようやく青空が見えるような天気で気温は11℃と肌寒さすら感じるほどでした。最初に訪れた場所は季節の進みが遅いことから芽吹きはほとんどなかったものの、ミズバショウやリュウキンカ、カタクリなどの花々はちょうど見ごろといった感じでした。花々が咲く湿地帯を見るとアオジが歩きまわり、アカハラも地上採食していました。ふと見るとアカハラに似た鳥が見えたのでよく見てみるとマミチャジナイでした。秋にはムギマキと並んで戸隠の目玉となる鳥ですが、春に見たのは初めてで、おそらく渡りの途中に立ち寄っているのでしょう。木に止まった個体はじっとしていたためしばらくの間、その特徴を観察することができました。またさらにもう1羽が地上で採食しはじめたため、よく似たアカハラと一緒に観察することができました。その後は木の幹で採食するアカゲラが何度も見られ、当地の特長として毎回のように見られている地上採食するアカゲラの行動も見ることができました。草地では求愛行動をするモズのつがいの姿があり、渡り途中と思われるツグミの姿もありました。2時間ほど探鳥した後、別の場所に移動しました。だいたいこのくらいの時間になると森の中は静かになるのですが、この日はバードウォッチャーなど比較的多くの人影がありました。駐車場付近では残雪の中、ホオジロのつがいが餌を探し、枯れ木にキビタキの美しいオスの姿もありました。また間近にオシドリのオスを見る機会があり、ほかにもコガモ、カイツブリの姿がありました。木道を進むとミズバショウが見ごろでノジコ、アオジが歩きまわり、木道の杭ではミソサザイが歌っていました。園内ではクロツグミの姿を狙いましたが残念ながらチラッと見るに留まりましたが間近にキバシリがやってきてしばらくの間、楽しませてくれました。またよくさえずっているコルリがいたため見ていると良い場所でさえずってくれたため望遠鏡を使って観察することができました。16:30頃からは霧雨が降り出したため最後にオオアカゲラや巣材集めをするアカハラを観察して終了しました。ただ夜には雨はさらに激しくなっていました。

 11日、05:00から早朝探鳥に出かける予定でしたが雨が止んでいなかったことから1時間繰り下げて06:00から出かけました。ただ雨の中でもアカハラの歌が響き、出かける頃には天候が回復する中、ここ数年、長野県内で繁殖記録が増えているジョウビタキの姿がありました。この時間は昨日しっかり見ることができなかったクロツグミを探しました。木道を進むと奥からクロツグミのさえずりが聞えたため行って見ると、距離はあるものの針葉樹のてっぺんで朗々と歌うクロツグミの姿がありました。また付近では「ホイ、チーチー」というクロジのさえずりが聞えたため行ってみると未だ芽吹きしていない木で歌っていたため望遠鏡を使って観察しました。そして最後はまたまた人気のコルリの姿をじっくりと観察して一旦、ホテルに戻りました。08:00から朝食をとり、09:00に再出発しました。途中では地上付近で採食するキビタキのつがいが見られ、さえずるノジコの姿がありました。また鳥たちが賑やかに集まっている場所があり、見ていると目線ほどの高さまで降りてきているサンショウクイのつがいがいて、ほかにもコサメビタキ、キビタキ、ニュウナイスズメの姿が見られました。鏡池ではやや雲がかかっていましたが戸隠連山が見事な景観を作り、アオサギ、カワウの姿があり、帰り道ではノスリが鳴きながら飛翔していました。13:00からは昼食のため一旦ホテルに戻り、このツアーの隠れた目玉でもある戸隠蕎麦をいただきました。この蕎麦は毎回大好評のため、今後も戸隠ツアーでは春も秋も昼食にはお蕎麦をご用意していただく予定です。1時間ほど休憩を挟んで最後は再び探鳥に出かけました。天候が回復したため猛禽類の飛翔を期待しましたがノスリが飛ぶに留まりました。ただこの日もマミチャジナイの姿があったため再びじっくりと観察することができました。渡り途中だからなのか、餌を探すことに必死であまり人を気にすることはなく間近に観察することができました。そして昨日見ることができなかったコムクドリをようやく見つけることができオス個体だったため美しい姿を見ることができ、観察していると我々の頭上をカケスがフワフワと飛んでいきました。また最後にはネコヤナギに群れるコガラ、ヒガラ、シジュウカラ、そしてエナガのつがいを観察して終了しました。

今年の戸隠は初夏という言葉が当てはまらないような状況で、各所に残雪があり、芽吹きもまだまだで日中でも肌寒く感じられました。ただ反面、花々はちょうど見ごろで文字通りツアーに花を添えてくれました。戸隠高原は長らく訪れていることもあり、慣れも手伝って鳥が探しやすいのですが、今回もその期待に応えてくれ、クロツグミ、コルリ、オオアカゲラ、キバシリ、ノジコ、クロジ、サンショウクイ、コムクドリといった人気種を観察することができ、キビタキ、コサメビタキ、アオジ、ゴジュウカラ、コガラ、アカゲラ、アオゲラといった定番種、さらにはマミチャジナイにも出会うことができました。夏鳥を繁殖環境で観察するということはバードウォッチングの王道であり、鳥たちが最も美しい状況で観察できる貴重な機会だと思います。次回は雰囲気を変えて、ひっそりとした晩秋の戸隠高原にお出かけください。この度はお疲れ様でした。

石田光史

コルリ 撮影:刈田宏様

 

マミチャジナイ 撮影:刈田宏様

 

サンショウクイ 撮影:刈田宏様

 

キバシリ 撮影:刈田宏様

 

ミソサザイ 撮影:刈田宏様

 

キビタキ 撮影:刈田宏様

 

ニュウナイスズメ 撮影:刈田宏様

 

オシドリ 撮影:刈田宏様

 

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