【ツアー報告】晩秋の十勝平野 ハクガンの群れとナキウサギ 2017年10月20日~22日

(写真:ハクガン 撮影:五月女憲様)

季節的にはやや中途半端感のある季節ですが、渡り途中のハクガンの群れが観察できるとの情報を現地ガイドからいただき企画した新コース。過去には新潟県の朝日池にやってくるハクガンの群れにスポットを当てたツアーを企画していましたが、最近では朝日池でのハクガンの長期滞在がなくなり彼らの姿を見ることが大変に厳しくなってしまいました。越冬地としては秋田県の八郎潟が知られていますが、アクセスが悪い上に広大な干拓地を探し回ることは難しいものです。今回はハクガンの群れにスポットを当てつつ、さらには北海道のごく一部の亜高山帯のガレ場に生息するナキウサギ、紅葉が見事な公園での小鳥類の観察を組み込んでツアー構成してみました。出発前の天気予報は3日間共に概ね晴れでしたが、季節はずれの台風21号の接近に伴い天気予報が心配な中での出発となりました。

20日、出発前日になり前夜に積雪があったとの連絡が現地ガイドからありました。前日の現地下見ではナキウサギの観察ポイントに数センチの積雪があったためナキウサギの姿を見ることができなかったということで、急遽、代替案を作成して当日を迎えました。今回は探鳥ポイントが北海道の中央に集中していることから普段あまり使うことがない旭川空港に向かいました。到着時はすっきりした快晴でしたが、バスが進むにつれて雲が多くなり、結局、現地では霧雨のため雨具着用で探鳥に出発しました。現地ガイドの話によると前日に比べると雪が解けていてなんとかなりそうだとのこと。ひとまず数センチの積雪の上を10分ほど歩いて現地に到着しました。到着時には残念ながらナキウサギの気配はなく、ふいにシマエナガの群れが飛翔するのが見えただけでした。ただ1時間ほど経った15:00くらいからは盛んに鳴き交わす声が聞かれ始め、ようやく積雪の間の岩の隙間から顔を出して草を食べる可愛らしい姿を見ることができました。その後も同じ場所から頻繁に顔を出したり、全身を見せたりしながらその姿を見せてくれました。ナキウサギは冬眠はしないものの積雪があると姿を見ることが難しいことから、雪とナキウサギを一緒に見ることは地元の人でも難しいとのことで、結果的には大変貴重なシーンを見ることができました。またやや薄暗くなった16:00頃には、群れで渡って行くツグミ、アトリの姿も見ることができましたが気がつくと真冬のような寒さになっていました。

21日、この日は天気予報通りで早朝から晴天で、ホテルの窓からは見事な風景を見ることができました。前日にナキウサギを見ることができたため、この日は当初の予定通り06:30から早めの朝食をとっていただき07:30に出発して一気に帯広方面を目差しました。途中、これぞ北海道といった感じの美瑛、富良野の広大な田畑と紅葉のコラボレーションを楽しむことができ、帯広市内にある公園に昼前に到着しました。ここでもすっきりとした秋空が広がる中、2時間ほど園内を散策することにし、まずは愛想の良いエゾリスの姿に歓声が上がりました。リスたちは人慣れしているようでその姿をじっくりと見せてくれ、途中の池ではヒドリガモ、マガモ、カルガモ、森の奥ではハシブトガラ、ゴジュウカラ、シジュウカラの混群やシメ、そして最後は枯れ枝で餌を探すアカゲラの姿を見ることができました。探鳥後は昼食の時間としてその後はこのツアーのもう一つのメインでもあるハクガンをはじめとしたガン類を見るために移動しました。ただ帯広を出た後は残念ながら雲が増えだして現地では再び小雨模様の中での探鳥となってしまいました。まずはポイントを走りながらハクガンの群れを探すことにしました。ただ驚いたことに最初に訪れたポイントでいきなり200羽ほどのハクガンの群れに出会うことができました。まずは慎重に観察しようということでバスを安全な場所に止めて車内から観察することにしました。ただある程度距離があったことからハクガンの群は驚いた様子はなく採食行動をしていました。おおよその数は170~180羽ほどで過去にこれだけの群れを見たことはありませんでした。よく見ると灰色みのある幼鳥個体も多く含まれ、ヒシクイ、マガンの姿もありました。最後はバスを降りて観察しましたが同様に驚いた様子はなく30分ほど観察して移動しました。その後は別の場所でタンチョウを見ることができ、中には幼鳥を連れた親子連れなども含まれ同様にバス車内から間近に観察することができました。薄暗くなってきたことから最後にもう一度ハクガンを見ようと最初の場所に行ってみましたが残念ながらその姿はなく、また別の場所を走ってみると、運よく先ほどの群れよりもやや少ないながらハクガンの群れをより近い距離から観察することができ、よく見ると付近には200羽ほどのシジュウカラガンの姿もありました。距離が近かったことからより慎重に車内から観察することができ、最後の最後で良いシーンにめぐり合うことができました。

22日、この日は天気予報が悪いほうに当たってしまい早朝から小雨模様でした。朝食後はハクガンのポイントに向かう予定でしたが、昨日一通りの種を観察できたことから現地ガイドからの提案で途中にある公園に立ち寄ってみることにしました。昨年の台風によって施設の一部がまだ復旧していませんが、早くもオジロワシの姿があり、付近の草地ではホオジロが飛び交っていました。よく見るとベニマシコの姿も見られ、ニュウナイスズメの小群も見ることができました。しばらく観察しているとどこから飛んできたのか、美しいオオワシの成鳥が枯れ木に止まってくれ、その姿をじっくり観察することができ、いつの間にか雨は止んでいました。最終的には11羽のオジロワシが一本の枯れ木に止まっていて意外な数の多さに驚かされました。その後は再びハクガンを探しに向かい、まずは昨日よりも数が多くなっていたタンチョウを観察しました。親子連れは昨日よりも近くで観察することができ、見ていると求愛ダンスのような鳴き交わしを見せてくれたり、飛翔する姿を見せてくれたりと楽しませてくれました。また付近を飛び回っていたムクドリの群の中に数羽のホシムクドリの姿があり、最後は枯れ木に群れて止まってくれたため望遠鏡を使ってじっくり観察することができました。ただこの日はなかなかハクガンの姿を見ることができず、途中に群れていたヒシクイの群れ、シジュウカラガンの群れ、また数は少ないながらマガンの姿を見ることができました。ただ何とか最後にもう一度ハクガンの姿が見たいと思い探し回っていると遠くに白い鳥の塊りが見えたことから行ってみると、昨日よりも距離が長いものの200羽弱のハクガンが地面に降りている姿を最後になんとか見ることができました。

今回から始まった新企画の晩秋の北海道。秋と冬がセットになったようなどちらともいえないような3日間でしたが、なんとか目的のナキウサギとハクガンの群れに出会うことができました。ガン類は日本では冬鳥の代名詞で比較的早くに渡ってくることから日本の秋の田園風景によく似合う印象があります。ツアーではマガン、ヒシクイ、ハクガン、シジュウカラガンのほか、カリガネもメインにした宮城県伊豆沼と蕪栗沼、また北帰行時の巨大な群れにスポットを当てた早春の北海道を4月に企画しております。またの機会、場所や季節、そしてシーンの異なるガンたちの姿を観察しにお出かけください。この度はお疲れ様でした。

石田光史

タンチョウ 撮影:佐藤幹夫様

 

エゾリス 撮影:箕輪篤子様

 

ナキウサギ 撮影:五月女憲様

 

ハクガン 撮影:佐藤幹夫様

 

ナキウサギ 撮影:箕輪篤子様

 

ハクガン 撮影:五月女憲様

 

アカゲラ 撮影:佐藤幹夫様

 

シロハラゴジュウカラ 撮影:箕輪篤子様

 

シジュウカラガン 撮影:五月女憲様

 

ハクガン 撮影:佐藤幹夫様

 

マガン 撮影:箕輪篤子様

 

オジロワシ 撮影:五月女憲様

 

マガン 撮影:佐藤幹夫様

 

シジュウカラガン 撮影:箕輪篤子様

 

シロハラゴジュウカラ 撮影:五月女憲様

 

ハクガン 撮影:佐藤幹夫様

 

ヒシクイ 撮影:箕輪篤子様

 

ハクガン 撮影:五月女憲様

 

シジュウカラガン 撮影:佐藤幹夫様

 

ハクガン 撮影:箕輪篤子様

 

ホシムクドリ

 

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