【ツアー報告】春の利尻島 最北の航路と渡りの鳥たち 2018年5月19日~22日
(写真:クマゲラ)
北海道での探鳥のベストシーズンは夏季で言うのであれば原生花園に花々が咲きそろう6月下旬から7月中旬ではありますが、渡りの鳥たちや森に生息する野鳥たちをメインにするのであればこの5月中旬ということになるでしょう。今回は利尻島内に生息する野鳥とこの時期にちょうど渡りを迎える野鳥たち、さらには稚内から利尻島までの航路で見られる海鳥たちをメインにツアーを企画しました。それもあってか時期的には毎回、各所で花々も楽しめるツアーでもあります。今回は幸い4日間共に晴れマークが並ぶ中での出発となりました。
19日、東京は最高気温が25℃の中、予定通り稚内空港に向けて出発しましたが、到着した稚内の最高気温は驚きの12℃。思ったほど晴れてはいませんでしたが薄曇りの中、まずは空港内で観察機材の準備をしてから探鳥に向かいました。原生花園ではエゾカンゾウの花の彩はありませんでしたが、まずはノビタキがその姿を見せてくれ、遠くの針葉樹の梢ではアカゲラがなぜかじっと止まっていました。またオジロワシが飛翔し、間近にノゴマが歌い出してくれました。本州では渡りの時期しか見ることができませんが北海道の原生花園では主役級の鳥で喉の部分のルビー色が鮮やかでした。また距離はあったものの澄み切ったレモンイエローが特徴のツメナガセキレイが殺風景な草原にひときわ美しく見えました。そして最後は間近にさえずるホオアカをじっくりと楽しんでから移動しました。ただ途中にある池では毎回のようにアカエリカイツブリの繁殖個体が見られていることから立ち寄ってみましたが残念ながらその姿はなく、代わってコガモ、キンクロハジロ、マガモの姿があり、その中には渡り途中と思われるシマアジのオスの姿がありました。次の場所でも花の彩は全くありませんでしたがカッコウが歌う姿をじっくり観察したほか、こちらでは近い距離で複数のツメナガセキレイを見ることができ、看板に止まったり木道に止まったりする様子を見ることができ、付近ではつがいと思われる夏羽のオオジュリンも見ることができました。その後は稚内にあるホテルに向かいましたが、途中の車窓からは渡り途中と思われるチュウヒ、ハイイロチュウヒの姿を見ることができ岬では風が冷たくなる中、採食行動中のウミアイサ、キアシシギ、そして海上を見ると数十羽単位で飛翔し、移動するウトウの群れを観察することができました。晴天だったことから美しい利尻山がくっきりと見えていました。
20日、この日は05:00から朝食をいただき06:45にホテルを出て稚内のフェリーターミナルに向かいました。この日も幸いにも真っ青の空が広がる中、予定通り07:30に出港して利尻島に向かいました。デッキから外を見ていると早速ウトウの群れが飛び、漂流物に止まるトウゾクカモメの姿がありました。また利尻島が近づいてくると夏羽のシロエリオオハムが複数飛び、次第にこの航路の名物でもある夏羽のアカエリヒレアシシギの群れがいくつも飛翔していました。到着後はフェリーターミナルにて現地ガイドと合流して探鳥に向かいました。環境的にも珍鳥がいそうな場所でくまなく見てみましたが、池にはキセキレイの姿があり、上空をハシブトガラスに追われてオオタカが飛翔しました。また神社付近では2羽のコマドリが追いかけっこをしている姿が見られました。そしてその後はいよいよ目的のクマゲラを探しました。登山道を歩いていくと今年各所で見られているイスカの小群が針葉樹に止まってくれたことからまずはその姿を観察することができました。その後はアカゲラ、エゾムシクイ、さらにはコマドリのさえずりを聞きながらツバメオモトの花が咲く遊歩道を歩き、安全な距離感を保ってクマゲラの出現を待つことにしました。そして待つこと1時間強。どこからともなく「コロコロコロ・・・」というクマゲラが飛翔の際によく出す声が聞えたかと思うとメス個体が付近の木に止まりました。その後、オス個体も現れて付近の針葉樹に止まって羽繕いをはじめたことから望遠鏡をセットしてしばらくの間観察することができました。体は真っ黒ながら、オス個体は真っ赤な頭が目立ち、時折口を開けたりとさまざまなしぐさを観察させてくれました。その後は一旦昼食の時間とし、その後は時計周りに島内を巡ることにしました。沼では数百羽はいるだろうウミネコたちが次々にやってきては水浴びする姿が見られ、湿原ではクサシギが見られました。また森林公園では群生するオオバナノエンレイソウを見ながら歩き、ハシブトガラ、ヒガラが見られたほか、ここでもイスカに出会うことができ、真っ赤なオス個体が水を飲む様子が見られました。その後はいきなり上空をクマゲラが飛び、最後は芝生で餌を探すアカハラ、そしてまたまた数羽のイスカが見られました。そして最後は岬に向かいノビタキ、ホオアカ、ヒバリ、そして最後は岩の上でひたすらにさえずるノゴマが撮影会状態になり盛り上がったのでした。
21日、この日は04:30に出発して小鳥類を狙って再び遊歩道を歩きました。この日も朝から晴天でしたが早朝ということもあってかやや肌寒く感じました。到着すると早速アオジ、シロハラゴジュウカラがさえずり、またマヒワ、ウソも現れてくれたためそれぞれ望遠鏡を使って観察しました。その後はコマドリに絞って観察しましたが、声はすれども姿を見るのに苦労しました。ようやく低木に止まってくれましたが全員でじっくりととはいかず残念でした。ただ周辺ではクロジ、そして最後はまたまたイスカのメスが針葉樹に止まっていました。一旦、朝食に戻った後は別の場所に向かいました。ここではまだ観光客が来ていないことから意外にもひっそりとしている中、やはりコマドリの声が響いていました。橋のところではコサメビタキが盛んにフライキャッチを繰り返し、よく見てみるとエゾビタキも一緒に採食行動をしていました。またたまたま無風だったことから見事な利尻山が湖面に映って見事でした。湖面にはカイツブリのほか、美しいオシドリのペアも見られ、ここでもコマドリを狙って時間を使いましたが残念ながらじっくりと観察するには至りませんでした。その後はこのツアーの名物ともなっている鰊蕎麦をいただきフェリーで稚内を目指しました。帰りの航路では海面に数十羽で浮かんでいるウトウの姿が見られたほか、アカエリヒレアシシギ、ハシボソミズナギドリが見られましたがこの航路としては海鳥の数は今一つといった感じで残念でした。そして稚内港到着後は途中休憩を挟みながら、この日の宿泊先に向かいました。
22日、この日も朝から青空が広がる中、04:30にホテルを出発して探鳥に出かけました。ここでは場所場所にまだまだ雪が残り、一部道を塞いでしまっている状況でした。ただ探鳥にはベストシーズンでようやく芽吹いた新芽とシラカンバのコントラストが美しく、早速ニュウナイスズメが盛んに鳴いていました。付近を歩いてみるとアオジ、ノビタキ、コムクドリが立て続けに現れ、芝生をアカハラが歩き、複数のミヤマカケスがけたたましく鳴きながら現れて、珍しくじっくりとその姿を見せてくれたほか、コルリが盛んにさえずっている場所では樹上でひたすら歌っているコルリのオスをじっくりと観察することができ、時折地面に降りて採食する様子も見ることができました。森に入るとセンダイムシクイ、キビタキのさえずりが聞え、なかなか出会うことが難しいヤマゲラが「ピーピッピッピッピッ」という笛のような声で鳴きながら現れました。当地の目玉のような存在のためじっくりと時間を使って観察しましたが、木に止まったり、地上に降りて歩き回ったりとさまざまなシーンを間近に見せてくれました。また観察中には真っ赤な夏羽のベニマシコが見られたほか、キビタキのペアも盛んに地面に降りて採食していたためじっくりと観察することができました。また付近ではシメとマヒワが地上採食していて、雪解け水が溜まっている場所ではセンダイムシクイが珍しくその姿をじっくり見せてくれました。その後はややバス移動してエゾエンゴサクとカタクリが群生している歩道を歩きました。ここではかなり歌のうまいキビタキが延々さえずっていたため望遠鏡を使ってしばらく観察したほか、巣造り中のコサメビタキがせっせと巣材を運んでいる姿も見ることができました。また2羽のヒガラが水浴びのためなのか、しきりに地上付近にやってきていました。そして最後にやや時間があったことから駐車場付近でツツドリの出現を待っていると、新芽を盛んに食べる数羽のイスカの姿があったことから、真っ赤なオス個体をしばらく観察して探鳥を終了しました。気が付くと汗ばむような暑さになっていて、稚内での肌寒さがウソのようで、さすがに北海道は広いなと感じました。
今年の利尻島ツアーは4日間というやや長い日程ながら全く傘の出番がないという幸運な4日間でした。稚内では肌寒さを感じるほどでしたが、ノゴマやツメナガセキレイ、ホオアカ、シマアジなどに出会うことができ、利尻島では念願のクマゲラ、真っ赤なイスカ、道内ではヤマゲラに出会う幸運があったほか、コルリ、ベニマシコ、キビタキ、ニュウナイスズメといった常連たちもその姿を見せてくれ、4日間で84種の野鳥たちを記録できました。ご参加いただきました皆様、ありがとうございました。
石田光史