【ツアー報告】タカ渡る白樺峠とライチョウが棲む畳平 2019年9月21~23日

(写真:ホシガラス 撮影:湯沢実奈様)

今年は9月に3連休が2回あることから、先週に続いてこの週末の3連休もタカ渡りのメッカ、信州白樺峠に向かいました。白樺峠はタカ渡りのメッカとして知られていますが、実際にタカの渡りが観察可能なのは実質2週間ほどしかありません。またこの時期はなかなかほかに良い探鳥地がないため、よりタカの渡りにスポットが当たりやすい状況です。このツアーでは他にも畳平を訪れてライチョウなどの高山鳥、そして宿泊地の乗鞍高原周辺では渡り途中の小鳥類も観察するなど、秋の乗鞍高原周辺をさまざまな観点からお楽しみいただけるようにしています。ただ今回は前週とは全く異なり、たまたま台風が発生してしまいました。ただ台風の進路が日本海側に逸れる予想であること、また進みがかなり遅いことから出発することになりました。

21日、前日から台風の進路をチェックしていましたが、当日の朝になって台風はさらに遅くなっているようでした。ひとまずどんよりとした空模様の中、予定通り出発しました。これといったトラブルなく進み、松本駅到着後は現地集合のお客様と合流し、その後は専用バスにて出発しました。このツアーでは3日間のうち晴天の日はなるべく白樺峠で探鳥し、天気が悪い日を選んで畳平に向かうのですが、この日は天候が悪いことから畳平に向かうことにしました。天候が悪く、小雨模様だったことから途中に立ち寄った道の駅の気温は12℃。その後は一旦宿に立ち寄って観察機材の準備、そして雨具の着用などしてから再度出発して畳平に向かいました。エコーラインを登ると霧がある場所とない場所がかわるがわるやってくるような状況で、到着した畳平は幸いにも視界はあったものの気温は7℃でした。ひとまずライチョウを狙って歩きはじめ、所々に咲いているイワギキョウやトウヤクリンドウを見ながら進みました。すると地上で餌を探すカヤクグリの姿があり、杭に止まったり岩に止まったりしてくれました。よく見ると数羽の群れでいたようで次々に飛び立ってハイマツに入っていきました。雨や霧の日には麓にライチョウがいることもありますが、この日は姿がなかったことからさらに進みました。斜面を登って行くと早速ライチョウの姿があり、望遠鏡を使ってじっくりと観察することができました。また反対側の斜面には3羽のイワヒバリの姿があり、ノコノコ歩きながら餌を探していました。頂上付近までくると周囲には何羽ものホシガラスが飛び回り、ハイマツの実を咥えて飛ぶ様子が観察できました。またやや距離があったものの2羽のライチョウの姿もあり、小雨模様の中ではありましたが高山鳥4種をあっさり観察することができました。この日はやや早めの夕食をとっていただき、夕食後は恒例のタカ識別講座を行い、温泉に入ってお休みいただきました。

22日、天気予報がはっきりしない状況の中ではありました早朝目を覚ますと晴れ間が見えていてホッとしました。この日は06:00から早朝探鳥を行うため外に出るといきなり目の前の木にエゾビタキが止まっていました。周囲のミズキの実をみるとエゾビタキがやってきていて、どうやら複数個体がいるようでした。その後は別のミズキの実を見てみるとジョウビタキの♂♀、オオルリ、キビタキ、エゾビタキ、コゲラが連続して見られ、ここでは4個体のエゾビタキの姿がありました。また宿の横にあるイチイの実にはコガラ、ゴジュウカラの姿があり、忙しそうに実を食べていました。やや歩いて行くとカケスが騒がしく鳴き、キセキレイ、ホオジロ、アオジも見られ、川沿いまでやってくると珍しくカケスをじっくり観察することができ、観察しているとアカゲラの♀、そしてアオゲラの♂までやってきてしばらくの間、楽しませてくれました。一旦宿まで戻って朝食をいただき、08:30に出発して白樺峠に向かいました。心配された空模様は悪くはなく、次第に青空が広がってきていました。到着後はそれぞれトラベルイヤホンを準備していただき、その後はそれぞれお好きな場所から観察をしていただきました。09:30には早速ノスリが飛び、周囲の木にはエゾビタキの姿もありました。10:00にはやや霧が立ち込める中、10:30には3羽のホシガラスが並ぶように飛翔しました。10:35にはツミが独特の深い羽ばたきをしながら旋回上昇し、10:40にはこの日初となるタカ柱が眼下から舞い上がりました。見てみるとほとんどがハチクマでしたが高い位置まで上昇することなく右側に飛んでいきました。10:50には4羽のアオバトが飛び、11:10には4羽のハチクマがまたまた眼下の林から舞い上がり旋回飛翔しました。その後も同じような位置からハチクマが舞い上がり、上から見下げるような形になったことから、特に♂の尾羽の太い縞模様を見ることができました。11:20にはようやく真上をハチクマの♂と♀が通過し、12:00にはカラマツに止まるサメビタキの姿がありました。12:05には再び眼下からハチクマが舞い上がり、12:40には飛んできたアオバトがカラマツに一瞬止まったものの飛び去ってしまいました。13:10には今度は6羽のハチクマが舞い上がり、13:40には真上をツミが飛翔しました。14:00にはやや風が冷たくなる中、ハチクマの♀が飛び、14:30にはこの日初となるミサゴが飛翔したかと思うと5羽のハチクマが加わり、さらにはチゴハヤブサも加わった群れが頭上を旋回飛翔してどっと盛り上がりました。ただその直後には雨が降り始めたため止み間をみて下山しました。ただ、やや時間があったことから乗鞍ビジターセンターに立ち寄ってから宿に戻りました。

23日、この日は前日の天気予報がまずまずだったことから安心していましたが、早朝に目を覚ますと小雨が降っていました。また風が強い時間帯もあり、いよいよ台風がやってきたかという感じでした。ただ予定通り06:00から早朝探鳥を行いました。ただ雨と風のせいか小鳥類の動きが感じられず、イチイの実にやってきているコガラとゴジュウカラだけが元気でした。乗鞍高原方面に歩くと雨が降り続く中、ようやくコサメビタキに出会うことができ、しばらく観察していると次第に雨が強くなる中、エゾビタキとサメビタキが姿を見せてくれ、よく似た3種が出揃ってくれました。また針葉樹にはアカハラ、ビンズイの姿もあり、雨が降り続く中、なんとか渡り中の小鳥類の姿を観察することができました。一旦宿に戻って07:30から朝食をいただき08:30に出発しましたが残念ながら雨が降り続いていたことから急遽予定を変更して畳平に向かうことにしました。ただまた悪いことに風が強まってしまい、探鳥は危険と判断して再び乗鞍高原に戻ることにしました。そろそろ雨は上がっているかと思ったのですが、残念ながらまだ小雨が降っていたため雨宿りしながら待っていると、空が次第に明るくなり青空が広がってきたことから乗鞍高原を歩いてみました。川ではせっせと餌を探すカワガラスの姿があり、さらに進むとモズの声が聞こえ、アカゲラが枯れ木にじっとしていてしばらく観察させてくれました。また天候が回復したことからハチクマが飛翔していました。そうこうしているうちに空が見る見る青空に変わってきたことから最後は白樺峠に向かいました。到着すると前日以上に視界が良く、雲の流れは早かったものの青空が見えていました。やや風が強かったことからどうなることかと思っていましたが、早速12:30には眼下の森から飛び立ったハチクマの♂が真上を通過し、続けてハチクマの♀、さらにもう1羽の♀が上空を通過していきました。1羽で飛んできたことから集中的に観察できたことからしっかり識別ポイントを押さえることができました。また13:00にはハチクマの♂が低く目の前を通過し、13:30にはツミが飛んできてしばらく旋回飛翔してくれました。ただ14:00にはザッと雨が降り、大きな虹が架かる中、14:30に2羽のサシバの飛翔が見られました。ただその後は次第に雨が強くなってしまい15:10に止み間を見て下山して探鳥を終了しました。

今回は残念ながら大型の台風が接近してくる中での出発となってしまいました。初日は雨のため、まずタカの渡りは見られないだろうということで畳平に向かいました。小雨の中ではありましたが、ライチョウ、イワヒバリ、カヤクグリ、ホシガラスの高山鳥4種が出そろってくれ、翌日は意外なほど穏やかな陽気の中、白樺峠でタカの渡りを観察することができ、この日は計256羽、うちハチクマ200羽が渡り、最終日は難しいコンディションながら計19羽、うちハチクマ18羽が渡っていきました。この2日間はとにかくハチクマが多く渡っていったようで、チゴハヤブサの登場には驚きました。また宿がある乗鞍高原周辺では、渡り途中の小鳥類を観察し、エゾビタキ、サメビタキ、コサメビタキ、キビタキ、オオルリ、ジョウビタキといった小鳥類、さらにはゴジュウカラ、コガラ、ヒガラ、ヤマガラ、アカゲラ、アオゲラ、カケス、またオオアカゲラをご覧になったお客様もいらっしゃいました。結果的には大きなタカ渡りの流れに当たらず残念でしたが、なんとかタカ渡りの様子を感じていただけたのではないでしょうか。今回は大規模なタカ渡りシーンが見られず残念でしたが今後も秋はタカの渡り観察にぜひお出かけください。この度はご参加いただきましてありがとうございました。

石田光史

オオアカゲラ 撮影:湯沢実奈様

 

イワヒバリ 撮影:湯沢実奈様

 

コガラ 撮影:湯沢実奈様

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