【ツアー報告】シャチとヒグマが棲む世界遺産・知床トリプルクルーズ 2018年6月15日~17日

(写真:ヒグマ 撮影:高後洋子様)

長らく野鳥に特化したツアーを企画してきましたが、ここ数年、野鳥観察と哺乳類観察をミックスした企画をわずかながら加えることを進めてきました。今回は世界遺産としても知られる北海道知床を舞台にそこに住む「神」と称される生き物にスポットを当てた新たなツアーを企画しました。そして新たな挑戦として3日間のツアーながら3度のクルーズを行うという大胆な構成としてみました。クルーズは欠航のリスクがあるためなかなか難しいのですが、知床の魅力を感じていただくためにはこれしかないと思いました。ただ、出発前の数日間、知床は荒れ模様で、予定しているクルーズも連日欠航という状況でした。

15日、小雨が降る中、羽田空港に向かいほぼ予定通り中標津空港に到着しました。中標津は意外な寒さで天気予報通りどんよりとした曇り空でした。この日は夜にシマフクロウ観察を予定しているので、それに間に合うようにしなくてはならないのですが、まずは湿原の神と称されるタンチョウを探しました。この日は6月とは思えない寒さと強風の中でしたが、まずはハシブトガラスに追われるオジロワシの姿があり、見事な飛翔を見ることができました。そしてしばらく進むと湿地帯で採食しているタンチョウのペアに出会うことができました。ただ残念ながら幼鳥を連れている気配はありませんでした。よく見ると付近にオジロワシの姿もあり、望遠鏡を使って観察することができました。その後はエゾシカの群れやキタキツネにも出会うことができ、強風と寒さに追われるように宿泊先に向いました。到着後は一旦お部屋に入っていただき、シマフクロウ観察に使うものだけを持って再度ご集合いただき、観察場所に向かいました。日の入りは19:10ですが、ここ数日はシマフクロウが現れる時間が早めだということで早めに到着して機材の準備を進め、各自夕食を食べていただきました。ただこの日はまだ薄明るい時間からシマフクロウの声が聞こえ、建物付近を飛翔するシマフクロウを見ることもできました。そしてこの日は早くも森の守り神と称されるシマフクロウが闇夜からふわっと現れ、かなりじっくりとその姿を見せてくれたことから早めに観察を終了することにしました。

16日、この日の午前中は知床岬に向かうクルーズを予定していました。ただ前日の電話ではうねりが残りそうでどうなるかわからないとのことで心配していましたが、この日は幸い早朝から曇り空ながら風はなく、出港できるとの連絡が入り安堵しました。ひとまず宿を出て港に向かいました。到着後は二隻に分かれて乗船しましたが、とにかくこの日は6月とは思えないほど寒さが厳しかったため防寒装備を再度整えてからの出港となりました。このボートクルーズは小型の瀬渡し船を使って陸地近くや岩礁帯をスイスイと小回りを利かせて進むことが特長で、まるでアトラクションのようにスリリングな航行が可能です。まずはそそり立つ壁のような断崖を横目に見ながら風を切るように進むと、ようやく断崖を登るように歩く子連れのヒグマの姿を見ることができました。もちろん距離はありましたが、それでもヒグマは我々の姿を察知して隠れるような動きを見せ、さすがは野生のヒグマだなと感じました。そしてこの日は幸いにも知床岬の灯台が見える付近まで行くことができ、飛び回るオオセグロカモメやウミウ、ヒメウの姿を見ることもできました。そして戻る途中では海岸に降りているヒグマの姿を見ることができ、さらには最後に今回最も近い距離感で子連れのヒグマの姿をじっくりと観察することができました。ある程度の距離はあるもののヒグマの巨大さを感じることができ、独特の緊張感が伝わってきました。クルーズ後は一旦宿に戻って昼食をとっていただき、午後は知床半島の反対側、ウトロから知床岬を目指すクルーズに乗船予定でしたが残念ながら高波のため欠航との連絡が入ってしまいました。そのため予定を急遽変更して知床五湖に向かうことにしました。まずは羅臼ビジターセンターに立ち寄り、館内にてシャチの骨格標本などの展示を見学させていただき、その後知床峠に向かいました。途中から霧が出てきたため心配でしたが、知床峠は視界があったためここ数日観察されているというギンザンマシコを探してみることにしました。するとやや霧が出ている中ではありましたがハイマツ帯にある枯れ木に真っ赤なオスが止まってくれたため、その姿を望遠鏡を使って見ることができました。その後は知床五湖に向かいましたが驚いたことに知床峠を境にウトロ側は見る見るうちに青空が広がり、到着に合わせるように知床連山がその姿を現し始めました。遊歩道を歩いて行くとなんとここでもヒグマの姿があり、距離があったことから望遠鏡を使ってその行動を観察することができました。人の気配が多い場所ではありますが、寝転んだり頭を掻いたりとさまざまな行動を見せてくれ、最後は稜線の向こうに消えて行きました。周辺ではノビタキが飛び回り、どこからともなく「ズビャーク、ズビャーク」とオオジシギの声も聞こえていました。また展望台まで来るとツツドリが枯れ木に止まって鳴いてくれ、この日の最後は見事な知床連山を眺める幸運がありました。宿に戻って夕食を済ませた後は羅臼昆布のヒレ刈り体験を行いました。初企画のためみなさんの反応が気がかりでしたが、羅臼昆布のさまざまな知識にはじまり、実際にヒレ刈りをしていただきそれをそのままお土産にしていただくということで、予想以上に盛り上がり、今後も継続して行こうと思ったのでした。

17日、この日は早朝に宿を出て探鳥を行ないました。心配された天候は曇りではありましたが無風だったことで一安心でした。向う途中はおなじみの霧が出ていましたが、到着すると見事な雲海が広がり感動的でした。バスを止めると早速ギンザンマシコがどこからともなく飛んできてハイマツに止まったためしばらく見ていると真っ赤なオスと若草色のメスがハイマツに止まってくれました。これといって逃げる様子もなくのんびりとしていましたが、オスはどんどん近づいてきて最後は僅か5mほどのハイマツに止まってじっくりとその姿を見せてくれました。また吹き上げる風に乗るようにアマツバメがスイスイ飛び、遠くからはルリビタキのさえずりが響いていました。一旦宿に戻った後は朝食をいただき、その後に宿を出て港に向いました。この日は風もなく絶好のクルーズ日和でしたが、ここ数日は海況が悪く全く船は運行できていなかったそうです。出航後はひたすら知床岬方面に進め、念願のシャチとの出会いを果たすことができました。この日は群れが2つ、そのほかにも数頭のシャチが見られ、特に背びれの大きいオスも複数見られました。中には船に接近してくる個体もいてその姿を間近に見ることができました。今回は海況不良の中での出発となり、ウトロでのクルーズが欠航になってしまいましたが、羅臼側では幸い海況が持ち直してくれ、海の王者と呼ばれるシャチ、陸の王者と呼ばれるヒグマの姿を堪能することができました。

今回は新たな試みとして野鳥という枠を超えたツアーを企画してみました。さまざまな生き物が生息する知床を舞台に3度のクルーズを試み、1度は欠航となってしまいましたが主な目的であったシャチとヒグマの姿を堪能することができ、ほかにもオジロワシ、タンチョウ、シマフクロウ、そして真っ赤なギンザンマシコ、早朝には見事な雲海、また知床五湖ではタイミングよく晴れてくれたことから見事な知床連山の景観を楽しむことができました。そして夜には羅臼昆布のヒレ刈り体験をお楽しみいただくことができ、野生動物からはやや離れましたが知床の違った魅力を感じていただけたと思います。羅臼はさまざまな時期に訪れていますので、また季節を変えて足を運んでいただけましたら幸いです。この度はご参加いただきましてありがとうございました。

石田光史

シャチ 撮影:坂東俊輝様

 

ギンザンマシコ 撮影:高後洋子様

 

知床連山 撮影:坂東俊輝様

 

シマフクロウ 撮影:高後洋子様

 

ヒグマ 撮影:坂東俊輝様

 

エゾシカ 撮影:坂東俊輝様

 

ミツユビカモメ 撮影:坂東俊輝様

 

知床灯台 撮影:坂東俊輝様

 

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