【ツアー報告】タカ渡る白樺峠とライチョウが棲む畳平 2018年9月22日~24日

(写真:ハチクマ 撮影:高木信様)

秋恒例のタカ渡りを観察するツアー。関東圏から行くことを考えると環境はまるで違うものの、今回訪れる長野県の白樺峠と愛知県の伊良湖岬が特に有名です。今期は9月に3連休が2度あることからその3連休を利用したプランを2コース、そして畳平での観察を省いた2日間コースも設定し、全3コースを企画いたしました。前回の3連休ツアーからもわかるように、この白樺峠ツアーはなかなか天気予報が当たらず、毎回天気予報を見ては一喜一憂しています。今回は日曜日に晴れマークがありましたが前後は雨マーク。毎回のことながら天気予報と空模様を見ながらの運行になりそうでした。

22日、前回同様3連休の初日ということで、大変に混雑している都内を予定通り08:00に出発。天気予報によると今日は雨で午後にかけて上がってくるだろうとの予報でした。早朝は予報通りに小雨が降っていて、いつもながらさて今日はどうしようかといった感じでした。ただ車窓からの風景を見ていると天気が回復してきていることは容易に想像できる状況で、空は次第に明るくなってきていました。昼前に到着したころには空は次第に青空に変わりつつあり、予想以上に天候の回復が早くなっている気がしました。ただ天候が回復しても即、タカが飛んでくるわけではないため、この日は旅程通りに畳平に向かい、晴れマークが出ている明日をタカ観察に充てようと決めました。まずは乗鞍高原との昼間点にある道の駅を目差し、到着後は一旦休憩とし、その間にさまざま連絡をとってみましたが、なんと深夜から早朝の雨量が規定降水量をオーバーしたことから畳平に向かう道が通行止めで、開通するのはおそらく15:00くらいだろうとのことでした。そこまで待っても開通しない可能性もあることから、急遽、この日は白樺峠に向かうことにしました。おおよそ13:00頃に白樺峠駐車場に到着した後は各自観察機材の準備をしていただき、白樺峠タカ見の広場に向かって歩き始めました。すでに空は真っ青で蒸し暑さすら感じるほどでした。到着後はトラベルイヤホンの電源を入れていただき、お好きな場所で観察を開始していただきました。この日は天候は良かったですが、急激に晴れてきたため人はそれほど来ておらず、それほど混雑は感じませんでした。到着とほぼ同時の13:10に10羽ほどのハチクマが左側の尾根から出現して我々の上空を通過し、よく見るとかなりの数のハリオアマツバメが乱舞していました。周辺の林では天候の回復に合わせてゴジュウカラが飛び回り、14:00にはイワツバメの群れも乱舞し始め、やや高い位置を2羽のサシバが通過して行きました。14:40にはどこから来たのか2羽のホシガラスが飛んできてカラマツに止まったことから盛り上がり、14:45にはハチクマのメスが通過して行きました。続けて14:55にはハチクマのオスが我々の真上で旋回し、15:00には当地では珍しいハヤブサが飛んできました。15:20にはまとまった数のハチクマが飛び、オス、メス、幼鳥が揃って飛翔し、またまたオスが真上を旋回しました。15:50には再びハヤブサが飛び、16:20には2羽のサシバが通過していきましたが、これを最後にタカの渡りはほとんど見られなくなり、この日の探鳥を終了しましたが、帰り道ではヤマドリの姿をご覧になったお客様もいらっしゃいました。結局、この日の公式カウント数はサシバ63羽、ハチクマ136羽、そのほかを含めた総数は218羽でした。宿に到着後は温泉で温まっていただき、夕食後は恒例のタカ識別講座を行いました。さて、明日は晴れマーク一色、大きな期待をして寝ることにしました。

23日、05:00に目を覚ますと予報通り快晴で05:45から乗鞍高原を歩きました。まずはこの時期の代表種であるエゾビタキがカラマツに止まる姿が見られ、宿周辺でもヒガラ、コガラ、シジュウカラの混群が賑やかでした。歩き始めるとカラ類の混群が我々を追いかけるように出現し、ゴジュウカラが白樺に止まって鳴いていました。しばらく見ているとオオルリがやってきて白樺に止まり、羽繕いをはじめたため望遠鏡を使ってじっくりと観察することができました。その後もカケス、ホオジロ、イカルなどの姿が見られ、最後には白樺林で餌を探す、エゾビタキ、サメビタキ、コサメビタキに出会うことができました。エゾビタキは高い場所にいたためじっくりと観察することができませんでしたが、サメビタキはサービス良く、比較的低い枝でじっとしていてくれました。またしばらく観察しているとオオルリのオスの幼鳥が飛んできてその姿を楽しませてくれました。やや時間が押しましたが一旦宿に戻って朝食をいただいた後は、快晴の中、いよいよ白樺峠に向かいました。この日は3連休真っ只中の晴天とあって人の出がものすごく、タカ見の広場は早くも満席状態でした。おそらく飛んでくるのは午後だろうと考えていましたが、だいたい予想通りでした。09:00、09:50とそれぞれツミが飛び、10:15にはカケスの姿がありました。10:45にはツバメが乱舞し、11:15には再び深い羽ばたきでツミが頭上を通過しました。11:30にはよやくハチクマの幼鳥が目線を横切るように低く飛び、11:40にもハチクマの幼鳥が左側から旋回しながら現れました。11:55には再度2羽のツミが飛び、12:25にもかなり低い位置をツミが通過しました。12:50にはようやくサシバとハチクマが混じった10羽ほどの群れが眼下から旋回飛翔しながら現れ、その後は松本の町並みを背景に連続してタカ柱が見られ始めました。14:15には2羽のクマタカが飛び、14:40以降は左寄りに出現したサシバが次々に我々の頭上を通過していく様子が観察でき、その中に黒色型のサシバが見られました。15:00にはこの日あまり見られなかったハチクマの幼鳥が低く飛び、15:15にはハシブトガラスを見て探鳥を終了しました。タカの出現状況はほぼ想定内でしたが、これだけサシバばかりというのも珍しい印象でした。この日の公式カウントはサシバ1388羽、ハチクマ160羽、その他を含めた総数は1589羽で見事4ケタ日となりました。この日も夕食後に講座を行いましたが、この日は主に小型ヒタキ類の識別講座を行ないました。

24日、この日の天気予報は雨でしたが早朝から天気は良く、前日同様に05:45にご集合いただき、この日は前日とは違い一ノ瀬園地方面を歩きました。この日はやや小鳥の動きが悪いようで声も少ない印象でしたが、途中、ヤドリギにはコガラ、ヒガラの姿があり、どこへ向かうのかサシバが飛んでいました。また賑やかに出現したエナガの群れの中にはオオルリのメスも見られました。一ノ瀬園地では小鳥の姿はありませんでしたが見事な紅葉の風景を見ていただき、これから向かう予定の畳平も見ることができました。帰り道では同様にヒガラ、コガラ、シジュウカラの混群を見ることができ、その中から混群と行動を共にするメボソムシクイのさえずりを聞くことができました。朝食後は初日に行くことができなかった畳平に向かいました。途中、霧が出ている場所もありましたが概ね視界は良く、見事な紅葉とともに飛翔するホシガラスの姿も見られました。到着後は駐車場内で準備をしましたが、すでに秋に見やすいホシガラスが飛び回っていました。まずはライチョウを狙って歩き出しましたが別の場所にライチョウがいたとのことで、そちらに向かうことにしました。ただ途中ホシガラスは何度も見られましたが残念ながらライチョウの姿がないことから再び戻ることにしました。麓では飛び回るカヤクグリの姿があり、山頂付近ではイワヒバリが見られましたがライチョウの姿はなく、一旦駐車場まで戻って昼食としました。昼食後も再び同じポイントを回りましたが残念ながらライチョウに出会うことができずツアーを終えることになりました。

毎年秋恒例の白樺峠でタカの渡りを観察するツアー。今回の3連休も天気予報が芳しくはなかったですが、結局3日間ともに晴れ間が出る幸運がありました。タカ渡りに関しては2日目に4ケタ日に当たることができ、圧倒されるようなサシバの渡りを見ることができました。また畳平ではライチョウに出会えず残念でしたがホシガラス、イワヒバリ、カヤクグリ、宿がある乗鞍高原周辺では見事な紅葉の中、渡り途中のエゾビタキ、サメビタキ、コサメビタキ、オオルリ、さらにはヒガラ、コガラ、エナガ、ゴジュウカラ、アカゲラ、アオゲラ、カケスなどに出会うことができました。来年以降も事前のタカ渡り識別講座、現地でのタカ識別講座、またタカ観察ではトラベルイヤホンを使用して出現状況や識別ポイントをリアルタイムで共有することを基本にツアー企画したいと思います。タカ渡りは天候のリスクはありますが、毎回毎回異なった感動のシーンを見せてくれます。また来期もぜひタカの渡り観察にお出かけください。この度はお疲れ様でした。

石田光史

サメビタキ 撮影:中山司様

 

ハチクマ 撮影:宅間保隆様

 

サシバ 撮影:高木信様

 

ホシガラス 撮影:中山司様

 

サシバ 撮影:宅間保隆様

 

サメビタキ 撮影:高木信様

 

ハチクマ 撮影:中山司様

 

イワヒバリ 撮影:宅間保隆様

 

ホシガラス 撮影:高木信様

 

サシバ 撮影:中山司様

 

オオルリ 撮影:宅間保隆様

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