【ツアー報告】厳冬の野辺山高原でフクロウに会いたい! 2017年12月11日~12日

(写真:アトリ)

いよいよ冬本番を迎えるこの時期恒例となっている長野県の野辺山高原を巡る1泊2日のバスツアー。今冬はここまでの状況を見る限りでは冬鳥の飛来状況が良く、各地で早い段階からマヒワやアトリ、さらにはイスカが各地で観察されています。また北海道では早くもキレンジャクの群れが観察されています。今回訪れる野辺山高原は標高1300mほどあるため環境としてはかなり厳しく、国内の探鳥地では特に寒さが厳しい印象があります。ただ日中からフクロウの姿を見る機会があるほか、過去にはコミミズク、オオマシコ、ハギマシコなどの記録もあります。今回は幸いにも2日間共に晴天との予報でした。

11日、晴天ながら肌寒い東京駅前を予定通り08:00に出発してひとまず中央道を走りました。バス車内では野辺山高原の環境の話や、このツアーで期待できる鳥の解説などを行いました。途中休憩をとりましたが昼前には現地に到着したことから観察機材の準備をしていただき、まずは清里方面に向かいました。ここでは周辺の林を歩きましたが鳥の声などはほとんどなく、地面を歩き回りながら餌を探すホオジロの姿があったのみでした。そのため一旦各自昼食としました。ただ、食事をしながらふと外を見ると小鳥類の動きが見られたため見てみると、ツルウメモドキの実に3羽のアトリの姿があり、周辺の針葉樹にはコガラ、シジュウカラの姿もありました。そのため昼食後に時間をとって再度観察してみるとアトリ、コガラ、シジュウカラのほか、複数のアカゲラが木の実を巡って争うような姿も見ることができました。またふいに「ピキッ、ピキッ」というイスカの声が聞こえたため、上空を見てみると10羽ほどの群れが鳴きながら飛んでいました。そのためイスカが飛び去った方向に行ってみると幸いにもカラマツに止まっているオスとメスの姿があり望遠鏡を使って観察することができました。その後、一旦飛んでしまいましたが付近を探してみると、針葉樹のてっぺんに止まる真っ赤なオス、さらにはカラマツに止まるオスとメスがいました。この冬は各地でイスカの姿が見られていて渡来数が多い印象でしたが、ここでもその姿を見る機会があったことは今年の冬を象徴しているようで印象的な出来事でした。またよく見るとイスカが止まっていたカラマツにじっと止まっているアカゲラの姿があったため望遠鏡を使ってじっくりと観察することができ、周囲を見ると50羽ほどのマヒワの群れが飛び回っていました。午前中に歩いた時にはほとんど何も見られませんでしたが、ちょっとしたタイミングの違いで、さまざまな種をじっくりと観察することができました。さらに帰り間際にはハンノキに群れるアトリの姿もありました。その後は八ヶ岳に黒い雲がかかってきて、時折小雪が舞う状況になりましたが、餌台にやってきているゴジュウカラ、コガラ、シジュウカラ、またホオジロ、アトリ、そしてイカルの姿を観察することができ、同様にイスカが付近を飛び回っていました。その後は一旦トイレ休憩をとり、夕陽が傾いていく中でフクロウを探しに向いました。夕方の時間帯にはここ数年はオオモズも観察されていたため、過去に見られているポイントを中心に時間いっぱい何度も何度もバスで流しながら広範囲に探しましたが、この日は複数のノスリが枯れ木に止まってネズミを探している様子が観察できましたが、期待されたフクロウに出会うことはできませんでした。気がつくと八ヶ岳には真っ黒い雪雲がかかり、双眼鏡を通して細かい雪が風に流されるように降る様子が見てとれました。

12日、早朝、建物がガタガタいうほどの強風が吹き荒れ何度も目が覚めました。この日は06:45の日の出前の06:15に宿を出発してフクロウ探しに出かけましたが、昨日の夕方から深夜にかけて雪が降ったらしく道路は真っ白になっていました。強風が吹き荒れる状況は鳥探しには厳しいのですが、草むらから時折小鳥が飛び立っていて、この厳しい環境の中でも野鳥たちが暮らしていることに驚かされました。この日は晴天だったことから日の出の時間には見事な雪景色の八ヶ岳を見ることはできましたが、この日も残念ながらフクロウの姿はありませんでした。一旦朝食のために宿に戻った後は、やや風が収まる中、昨日巡った場所に再度行ってイスカを探してみました。ただ、この日はイスカの声を聞くことはできませんでした。その後は野辺山高原を離れて調整池で探鳥を行いました。このツアーでは野辺山高原をメイン探鳥地にしていることから、観察種がかなり少なくなってしまうことが多く、そのためカモ類なども見られるよう、この探鳥地を入れているのです。現地では再び強風が吹き荒れる中でしたが、カワアイサ、ミコアイサ、カンムリカイツブリ、ハジロカイツブリなどのほか、マガモ、カルガモ、ホシハジロ、キンクロハジロなど、内陸部にある小さな池の割にはさまざまな種が観察できました。また期待のイカルチドリが見られませんでしたが、ハクセキレイ、セグロセキレイ、モズなどが見られ、その後は一旦昼食の時間としました。昼食後はこのツアー最後の探鳥地である公園に向かいました。ここではまず駐車場付近でエナガ、コゲラ、メジロの混群が見られ、草地で餌を探すホオジロのオスとメスの姿もありました。また歩いて行くと2羽のツグミの姿があり、池ではマガモ、オナガガモ、コガモの姿がありました。林に入ると地面採食しているアオジ、さらには複数のビンズイが木に止まりました。セキレイの仲間らしく尾羽を振るしぐさが見られ、付近には3羽のカシラダカが止まっていました。さらに進むと水を飲みにきているヤマガラが見られ、高い木には2羽のシメが止まっていました。この冬は小鳥類が多い印象があるものの、シメとカシラダカの姿を見る機会が少なかったのでこの機会にしっかりと見ることができました。また時折、地面に降りて餌を探しているルリビタキの姿があったことからしばらくの間、観察することができました。背中が褐色のメス型でしたが青い尾羽が鮮やかでした。気が付くと陽が傾き林の中はすっかり薄暗くなってきましたが、最後に冬の小鳥類を楽しんでツアーを締めくくりました。

日中にその姿を見せることが多い野辺山高原のフクロウですが、環境の影響からなのか、また生息個体数の関係なのか、残念ながら今年もその姿を見ることができませんでした。思えば数年前から積雪量が少なくなり初冬の環境がやや変わってしまったような印象がありました。ただ冬鳥が多く見られている年であったことから、幸運にもイスカの姿を堪能することができ印象的でした。またアトリ、マヒワ、イカル、ゴジュウカラ、コガラなどの小鳥類、カワアイサ、ミコアイサ、ハジロカイツブリなどの水鳥類も観察することができました。2日目は野辺山高原らしい非常に強い風の中での探鳥となりご苦労さまでした。

石田光史

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