【ツアー報告】晩秋の十勝平野 ハクガンの群れとナキウサギ 2018年10月19日~21日
(写真:ハクガン 撮影:坂東俊輝様)
昨年からはじまった晩秋の北海道、十勝平野を巡るツアー。探鳥地が北海道の中央部に位置していることからアクセスがあまり良くなく、下手をすると日程が長くなり移動時間ばかりになってしまいます。そのためこのツアーでは他にあまりない旭川空港、帯広空港を使って移動時間を極力少なくしています。メインと考えているハクガンをはじめとするガン類の大群は見事で、やはりこの地だからこそでしょう。また北海道の山地に生息するナキウサギも楽しみです。そしてこの時期は各所で見られる紅葉と頂に雪を冠した山々とのコラボレーションも見事で、移動中にはこれぞ北海道ともいえる富良野、美瑛の絵葉書のような風景もお楽しみいただけます。今回は幸いにも3日間共に快晴予報という幸運もついてきました。
19日、天気予報通り快晴の中、大変混雑している羽田空港からまずは旭川空港に向いました。10分ほどの遅れが生じましたがほぼ予定通り到着し、空港で観察機材準備をしていただいてから最初のポイントに向かいました。現地に向かう途中もバス車内から見える紅葉は見事でみるみる近づいてくる十勝岳は見事な雪化粧をしていました。現地到着時も快晴でやや肌寒さを感じる中、10分ほど歩いてナキウサギが生息するガレ場に向かいました。周辺からは早速、ホシガラスの声が聞こえ、飛び交う姿、木に止まる姿を何度も見ることができました。またハイタカが飛び、針葉樹の枝先ではヒガラが餌を探していました。ただ肝心のナキウサギの声は極端に少なく、時折、遠くからかすかに声が聞こえる程度でした。ただ、1時間ほどが過ぎた頃からは動きが出てきて時々その姿が見られるようになり、ようやく岩場に佇んでいる姿を見ることができました。そしてその後はさらに動きが活発になり、やや高い場所の岩場に出てきて元気よく鳴き、最後はいきなり目線下の岩の穴に入ったかと思うと、何度も出てきて大きな草を咥えて運ぶ、貯食行動と思われる行動を見せてくれました。気が付くとかなり冷え込んではいましたが16:30まで観察を続け、帰り間際には雪を被った十勝岳と月のコラボレーションを見ることができました。
20日、昨年と比べて朝食の開始時間が30分遅くなり、やや時間ができたことから朝食前に1時間ほど宿の周辺を歩くことにしました。天気は幸い快晴でしたが思った以上に冷え込んでいました。渡り期ということもありツグミの群れが飛び、意外にもヤマゲラの声がしていました。声がするほうに歩いて行くと、駐車場内の木に止まるヤマゲラの姿を見ることができました。その後は木の実に集まっている鳥たちを観察しました。見てみるとヤマゲラの姿があり、他にもキクイタダキ、ハシブトガラ、シロハラゴジュウカラの姿がありました。そして最後は再びヤマゲラの声がしたことから見てみると、針葉樹のてっぺんに止まっている姿を見ることができ、思いのほかヤマゲラに出会えた朝でした。この日は朝食後の08:00に出発しました。途中、観光地として知られている富良野、美瑛を通るためしいばらくの間は車窓からの風景をお楽しみいただきました。広大な農地はパッチワークのように美しく、ちょうど農作物の収穫が進んでいました。それを取り囲むカラマツの黄金色の紅葉、そして遠くに見える冠雪した十勝岳は見事でした。途中、休憩を挟んで昼前に到着した公園ではいきなりアカゲラが出てきてしばらくその姿を楽しませてくれました。紅葉が美しい公園内を歩くと、愛想が良いシジュウカラ、ヒガラ、コゲラ、アカゲラが次々に出現し、この公園の人気者のエゾリスが歩き回っていました。池の周辺まで行くとシマエナガの群れが見られたほか、シロハラゴジュウカラ、ハシブトガラといった北海道ならではの種が見られ、松の木にやってきたヒガラ、芝生を歩き回るビンズイの姿を見てから一旦昼食としました。昼食後は再び1時間ほど移動してようやくガン類の中継地までやってきました。この十勝平野はとにかく広く、それは我々の感覚をはるかに超えるものでした。バスで走っていると各所でタンチョウの姿が見られ、夏の湿原や冬のサンクチュアリーで見るのとは一味違った秋のタンチョウを楽しむことができました。ただこの日は地上に降りているガン類をなかなか見つけることができず、ようやく見つけた群れもさほど大きくはなくヒシクイの群れでした。ただ最後に訪れた牧草地でようやく70羽ほどのハクガンの群れに出会うことができましたが、ほぼ同時に飛び立ってしまい再び見つけることができませんでした。ただ、最後には夕景の中で佇む親子のタンチョウを見ることができました。
21日、3日間、そして秋ということを考えると意外としか言いようがないほどこの日もまたまた朝から快晴。朝食後は再び十勝平野に向かいましたが、途中にある堤防に立ち寄ってみました。昨年はオオワシ、オジロワシの姿がありましたが今年は残念ながらワシ類の姿はなく、付近の草原でベニマシコやビンズイ、そしてシマエナガの群れを見るに留まりました。その後、この日も再びガン類を探しましたが、やはり渡ってきているガン類の総数が少ないのか、それほどガン類の姿を見ることがなく、タンチョウの姿が目立ちました。また水田では十数羽のムナグロの姿もありました。ただ昨日同様に各所でヒシクイの群れは見られ、バス車内から観察しました。そして最後にはようやくハクガンの群れに再会することができました。ただこの日は警戒して飛び立ったり降りたりしていたことから、まずはやや離れた位置で待機して状況を見ることにしました。ただすぐ脇の牧草地には数百羽のシジュウカラガンを中心に、ヒシクイ、マガンの群れが降りていたことからまずはこれらの群れをバス車内から観察しました。見てみるとほとんどがシジュウカラガンでその中にヒシクイ、さらには少数のマガンの姿がありました。そして30分ほどしてようやくハクガンの群れが落ち着いたことからやや接近して観察することができました。幸いこれといって警戒した様子はなく、地上で採食行動を繰り返していました。また周囲にいたかなりの数のシジュウカラガンの姿も合わせて観察することができ、30分ほど観察して終了しました。
今年の晩秋の十勝平野ツアーは秋のツアーとしては大変珍しい快晴が3日間続く中で催行することができました。昨年に比べると渡ってきているガン類の総数が少ない印象があり、それに伴いハクガンの個体数も少なかったですが、なんとか70羽ほどの群れに出会うことができました。またシジュウカラガン、ヒシクイ、マガンにも出会うことができ、シジュウカラガンの大群も見事でした。また秋の風景の中のタンチョウ、初日にはナキウサギ、翌日にはヤマゲラ、シマエナガ、ハシブトガラ、シロハラゴジュウカラ、ミヤマカケスにも出会うことができ、全体を通して見事な紅葉と富良野、美瑛の風景も見事でした。北海道はどのシーズンも人気があり、見どころも豊富です。またぜひ季節を変えてお出かけください。この度はご参加いただきましてありがとうございました。
石田光史