【ツアー報告】春の利尻島 最北の航路と渡りの鳥たち 2019年5月9日~12日

(写真:マミジロキビタキ 撮影:中村裕一様)

北海道といえば自然が最も厳しい顏を見せる厳冬期のツアーや花々が咲きそろう初夏のツアーが特に人気があり毎年大好評をいただいておりますが、それ以外にもさまざま企画しています。今回はまだまだ春とも言い切れない季節に敢えて道北を訪れます。メイン探鳥地の利尻島ではクマゲラとの出会いに期待するほか、さまざまな渡り鳥にも期待でき、また稚内から利尻島までの海上でも夏羽のシロエリオオハムやウトウといった魅力的な海鳥が見られます。また道内では残雪がある新緑の林で北海道だからこそ見られるヤマゲラを中心に色鮮やかな小鳥たちも観察します。

9日、どんよりと曇った羽田空港にご集合いただき、予定通り出発しました。順調に現地に到着しましたが残念ながら現地は小雨模様。さらに気温は10℃と寒いとはわかっていながらも、その想定をさらに超える寒さでした。利尻島に渡るのは翌日早朝のため、この日は稚内周辺での探鳥を行いました。途中、天気はよくなりつつあり、幸い現地到着時は薄曇りでした。バスを降りるとヒガラ、アオジ、ヒバリがさえずり、まだまだ花々はないものの原生花園内では早くも渡ってきたノビタキが飛び回っていました。また遠くからはツメナガセキレイの声が聞かれましたが、観察は飛び去る姿を見るだけでした。その後はさらに南に移動し、途中、沼でキンクロハジロ、マガモ、カワウが見られました。その後は湿原に向かいました。渡り時期のため北に向かう途中のマガンの群れが飛び、アオジやノビタキが見られ、突然、獲物を持ったチュウヒが悠々と飛翔して盛り上げてくれました。ここからはホテルに向かって移動としましたが、途中に港があることから立ち寄りながら移動することにしました。この日は残念ながら海はけむっていて利尻山を見ることはできませんでしたが、コガモの群れが見られ、移動中にはオジロワシが見られました。別の港では繁殖に向けて夏羽に換羽したウミネコとオオセグロカモメ、そしてハシビロガモ、最後は小雨が降る中、岬では群れで飛ぶウトウを観察して終了しました。

10日、この日も早朝から残念ながら小雨模様。ただ早い時間の船に乗るため05:45から朝食をいただきフェリーターミナルに向かいました。到着後は前日に見られた鳥のチェックを行ってから乗船し、予定通り07:30に出港して利尻島鴛泊港に向かいました。出港後はやや天候は回復し、白い飾り羽と橙色の嘴が特徴のウトウ、そしてこの航路の代表種ともいえる夏羽のシロエリオオハムが飛び、ほかにもミツユビカモメや小群で飛翔するハシボソミズナギドリが見られました。そして船は予定通り09:10に鴛泊港に到着。信じられないくらいの寒さの中、早速クマゲラ観察に向かいました。現地ガイドさんの話によるとこの寒さはたまたま悪い時に当たってしまったとのことでしたが、とにかく寒い中での出発でした。この日は小雨模様の中、なんとかクマゲラを観察することができ、観察終了後は昼食の時間にし、その後は島を回りながら探鳥を行いました。小雨の中でしたが、そのせいか島の中は鳥たちが貯まっているようで、芝生には50羽ほどのツグミが群れ、その中に複数のマミチャジナイ、アカハラが混じっていました。また池にはカワセミの姿があり、イカルやシメ、カシラダカといった冬鳥たちの姿もありました。その後は島の東部に向かい、まずは漁港のテトラポットに止まるシノリガモが見られ、駐車場にはアオジとカシラダカ、そして川沿いまで来ると黄色い小鳥が飛び回り、よく見るとなんとマミジロキビタキのオスでした。ただ動きが早く、何度かチラッと見る程度でしたが写真を撮られた方もいらっしゃいました。その後は沼まで移動して湖面を眺めると無数のツバメが飛び回り、その中にコシアカツバメの姿もあり、いかにも渡りの季節の島といった印象でした。幸いこの辺りから天気が回復傾向になる中、森や岬を巡りノビタキ、ノゴマ、ツグミ、そしてキアシシギを観察してこの日の探鳥を終了しました。

11日、この日は何がなんでもクマゲラを見たいということで肌寒い曇り空の下、早朝に出発しました。やや時間がかかったもののこの日もなんとかクマゲラを観察することができ、一旦宿に戻って朝食をいただき、その後は僅かな時間ながら芝生でツグミ、ダイサギ、カシラダカなどを観察してから、前日に行くことができなかった場所に向かいました。沼にはオシドリ、ダイサギ、イソシギの姿があり、橋付近では地面を歩き回るコマドリやルリビタキを見ることができました。そしてやや時間があったことからこの日も島の東部に向かい、この日は見事な夏羽のツメナガセキレイをはじめ、ノゴマ、タカブシギ、そしてコマドリが見事なさえずりを披露してくれたのでした。そしてやや早いお昼ご飯は名物の鰊蕎麦をいただいてからフェリーで稚内に向かいました。この日はややうねりがある中でしたが、堤防に佇む1羽のシロカモメが見られたほか、夏羽のウトウ、シロエリオオハム、そしてハシボソミズナギドリの小群、最後にはケイマフリを撮影された方もいらっしゃいました。稚内港に到着後はまたまた天候がめまぐるしく変わる中、ホテルに移動しました。

12日、待ちに待った快晴の中、この日は早朝にホテルを出て森に向かいました。この場所はひと昔前まではクマゲラのポイントとして知られていましたが、ここ数年は残念ながらその姿を確認はできていませんが、新緑の森で小鳥類を観察するには最適な場所で、セミがうるさくなる前のこの時期はベストポイントと言えるでしょう。途中、車窓から残雪の多さに驚かされましたが現地到着後は観察機材の準備をしていただいてから歩き出しました。外に出ると風の冷たさに驚きましたが、早速ニュウナイスズメのオスが歌い、渡り途中なのかオオジシギの独特の声が聞こえ、デイスプレイフライトを見ることもできました。また本州で見るのとは異なる赤さが印象的なベニマシコが梢でさえずっていました。広場まで行くとマミチャジナイとアカハラが地上で餌を探し、電線にはツツドリが止まっていました。森に入るととにかくアカハラの姿が目立ち、同時に3~4羽が地上採食するシーンまで見られました。目的のヤマゲラの姿がなかなか見つからなかったですが、ある場所ではヒガラのつがいが求愛給餌し、ふいに現れたシマエナガのペアが可愛らしい姿を見せてくれました。そしてようやくヤマゲラの笛のような声が聞えたかと思うとメスが飛んできて周囲の木に止まって楽しませてくれました。また残雪のある場所ではベニマシコのペアやアオジ、アカハラが地上採食し、ミズバショウやリュウキンカが咲いている湿地ではコルリのオスが歩きながら採食していました。その後は一旦場所を変えて探鳥しましたが、ここではヤブサメのさえずりが聞え、僅かながらその姿を見ることもできました。そして最後は広場に群れるマミチャジナイの群れを観察して探鳥を終了しました。晴天の探鳥でしたがとにかく風が冷たく感じる1日でした。

さて、今回の春の利尻島ツアーは例年よりもやや早い時期にしてみました。残念ながらたまたま寒い日に当たってしまい真冬のような寒さの中でしたが、目的だったクマゲラに出会うことができたほか、悪天候だったことからなのか、ツグミの群れやシメ、イカル、カシラダカ、そしてマミチャジナイ、コホオアカ、マミジロキビタキといったさまざまな渡り鳥たちに出会うこともできました。また航路では夏羽のシロエリオオハムやウトウ、ケイマフリ、道内の森ではヤマゲラ、オオジシギ、ツツドリ、キビタキ、コルリ、シマエナガなども観察でき4日間で81種の野鳥たちに出会うことができました。予想外に寒い探鳥お疲れ様でした。そしてご参加いただきましてありがとうございました。

石田光史

マミジロキビタキ 撮影:K様

 

コマドリ 撮影:中村裕一様

 

ツメナガセキレイ 撮影:中村裕一様

 

コホオアカ 撮影:中村裕一様

 

ヤマゲラ 撮影:中村裕一様

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