【ツアー報告】珍鳥が渡る!春の与那国島 2020年3月27日~30日

(写真:オニカッコウ 撮影:宅間保隆様)

いよいよ春の渡りシーズンを迎え、早くも南西諸島では渡り鳥の姿を見る機会が増えてきました。それに合わせるように毎春恒例になっているのがこの与那国島へのツアーです。春の与那国島の特長といえば大きなハズレがないことでしょう。毎回なにかしらの珍鳥に出会うことができ、言うまでもなく意外な出会いにも期待できます。また行程の関係から2日目の午前中までは石垣島に滞在することから石垣島での探鳥も行います。ただ今年はいきなり大雨予報の中での出発となってしまいました。

27日、薄曇りの羽田空港を予定通りに出発して石垣島向かいました。ここ数年は直行便利用のためダイレクトに石垣島に行けるので非常に楽になりました。到着後は各地からご参加いただいたお客様と合流してから探鳥に出かけましたが、外はいきなりの大雨でした。雨を避けるように軒下を歩きながらバスに乗り、ようやく出発という頃には不思議なもので雨は止んでいました。ひとまず畑地をゆっくり走りながらカタグロトビを探すことにしましたが、雨あがりということもあり、道端にはかなりの数のシロハラクイナが出てきていました。しばらく進むと幸いにも2羽のカタグロトビが並んで木に止まっている姿を見ることができ、その後は飛び立って別の木に止まったり電線に止まったり、ホバリングしたりとさまざまなシーンを見ることができました。その後は移動するために来た道を戻りましたが、幸いにも途中の畑地に3個体のムラサキサギが出てきていてくれたため、成鳥、幼鳥の両方を見ることができました。またたまたまセキレイの群れもやってきたことから見てみると、ホオジロハクセキレイ、タイワンハクセキレイといった亜種に加え、黄色みが出てきたばかりのツメナガセキレイを見ることもできました。時間も押してきたことから、この日の最後は夕方になるとノコノコ出てくるズグロミゾゴイを探しに行きました。まずは本州のものよりもかなり黒っぽい、イシガキシジュウカラが現れ、その後、僅かな時間ながらズグロミゾゴイが見られましたが残念ながら林に隠れてしまいました。そのため急所場所を変えることにし畑地を歩くと、幸いにも畑の縁を歩くズグロミゾゴイの幼鳥に出会うことができました。ほかにもあまり見かけないゴイサギが飛んできたり、不気味なヤエヤマオオコウモリが見られたりし、そろそろ引き上げようかと思ったその時、この場所では過去に見た記憶がないカンムリワシが突然飛び立って対岸の木に止まりました。かなり白っぽい若い個体ではありましたが、たった数時間でカンムリワシ、ムラサキサギ、ズグロミゾゴイ、カタグロトビの八重山4点セットを観察することができ、気が付くとほとんど雨に降られることがない状況の中でこの日の探鳥を終えることができました。ただ夜には与那国島に大雨警報が出てしまい、翌朝まで雨が続くとのことで心配になりました。

28日、この日は早朝から予想通りの雨。ひとまず06:30から朝食をいただき朝食後は水田に向かいました。八重山4点セットは見られているもののカンムリワシの成鳥が見られていないことから探すことにしましたが、この日は残念ながらその姿はなく次第に強くなる雨に追われるかのように広範囲に探してみることにしました。するとこの日もカンムリワシに出会うもなぜか幼鳥。普段ならば幼鳥探しに苦労するのですが今回は幼鳥ばかりに出会うという珍しいケースになってしまいました。その後はそろそろ飛行機の時間を気にしなくてはならないためトイレに立ち寄ってから畑地でツメナガセキレイを見て空港に向かいました。ただこの時間になっても与那国島付近は雷雨とのことでうまく出発できるか不安が残りました。石垣空港到着後は石垣島で見られた鳥の確認作業を行ってから荷物を預けて登場口に進みましたが、この時点でもフライトは条件付きで、引き返すか、宮古島空港に向うとのことでした。結果的には15分遅れで出発し、どうなることかと心配した割にはあっさりと与那国島空港に到着することができまずはほっとしました。与那国島空港到着後は一旦ホテルに入っていただき、昼食後に探鳥に出かけました。出発直前にはかなり強い雨が降り始めてしまいました。そのためバス車内から鳥が見られるようにと、まずは水田に向かい、水田に群れるサギ類、その後は海岸付近にある広場でメダイチドリ、シロチドリを見てから移動しました。ただここでこのツアー最初の大当たりがあり、何年かに一度出会えるか出会えないかレベルの美しい夏羽のオオチドリに出会うことができ、最終的にはバス車内からかなりの近距離でじっくりと観察することができました。その後は小雨が降り続く中、各所をめぐり、漁港ではシロハラクイナ、ムクドリ、そしてホオジロハクセキレイ、シベリアハクセキレイといった珍しい亜種たちに出会うことができ、最後に再び立ち寄った水田では強風をうまく利用して飛び回る、ハイイロチュウヒのメスを観察してこの日の探鳥を終了しました。

29日、この日も相変わらず早朝からどんよりとしていましたが、駐車場の脇のクワの木にやってきているギンムクドリを見てから朝食をいただき、朝食後は水田から探鳥を開始しました。時折小雨が落ちる中ではありましたが20羽ほどのツバメチドリの群れに出会うことができ、それほど警戒していなかったこともあり、間近に美しい夏羽個体を堪能することができました。また付近にはオジロトウネン、コチドリの姿もあり、その後は群れ飛ぶイワツバメ、愛想の良いセッカやシマアカモズ、そして電線に止まるギンムクドリを見てから水田まで移動しました。水田ではセイカタシギ、タカブシギが佇み、遠くの木にはノスリが止まっていました。またサギの群れに混じる1羽のクロツラヘラサギの姿がありました。とここで島内の別のバスドライバーさんから電話があり、ヤツガシラがいるとのこと。そのため急いで移動しました。すると空き地でせっせと餌を採るヤツガシラの姿を見ることができ、やや距離をとってしばらく観察した後は漁港を乱舞するツバメの群れを見てから一旦昼食の時間としました。昼食後は再度ヤツガシラを観察するため現地に戻り、今度はやや距離をつめて観察することにしました。するとヤツガシラは地上で餌を採ったり、木に止まって羽繕いをしたりとさまざまな姿を見せて楽しませてくれました。また付近ではシロハラやノゴマ、またたまたま4羽のサシバが上空を旋回する様子も見ることができました。この後はツアー中、必ず1度は訪れることにしている西崎に向かい、ちょっと気味の悪いキシノウエトカゲ、日本で一番小さいセミとして知られるイワサキクサゼミを見て、ようやく青空が見え始める中、池まで移動してキンクロハジロ、オオバン、コガモ、セイタカシギなどを見てからホテル下の水田を経由して移動しました。到着直前にたまたま窓の外を見ているとクロウタドリが歩いていたことから、一旦バスを降りて探してみることにしました。すると何やら大型の黒い鳥がしげみに飛び込み、クロウタドリかと思いましたが、これが何とも大きく尾が長く目が赤いということで大騒ぎになり、よく見てみるとなんとオニカッコウのオスでした。オニカッコウは餌を食べることに必死なようで、何度かしげみからでてきて部分的ながらもその姿を見せてくれ、まさに春の与那国島の底力を久しぶりに見たような気がしました。

30日、この日も早朝からどんよりとした空模様の中、07:00から朝食をいただき08:00に出発しました。ただホテルの庭にある桑の木にアカハラ、シロハラ、ギンムクドリがやってきていたことからしばらく観察してから出発しました。まずは昨日、オニカッコウを見た場所に行ってみました。ただこの日はその姿はなく、そのため周囲を歩いてみました。水田には3羽のタカブシギ、2羽のセイタカシギの姿があり、タシギも飛んでいました。またゴイサギの幼鳥が見られ、ノスリが枯れ木に止まっていました。畑地を歩いてみると地上からクロウタドリが飛び立って木に止まったためしばらく見ていると、再びやってきて木に止まったり、地上を歩いたりする姿を見ることができました。その後は各所をめぐり、最後は少々時間があったことから川沿いを歩いてみました。ここでは田植え後の田んぼに、コチドリ、オジロトウネンの姿がり、ツバメがスイスイ飛びながら水浴をしていました。そしてこのツアーの最後を飾るかのように複数のツバメチドリが我々の頭上で旋回飛翔し始め、見事な光景を見ることができました。気が付くと空は青くなり、このツアー初の蒸し暑さを感じるほどになっていました。観察後は一旦ホテルに戻って荷物整理をしてから与那国島空港に向いました。

今年の春の与那国島ツアーは例年に天候が芳しくなく、とにかく肌寒い印象でした。例年であれば半袖短パンといったスタイルが普通ですが、今回は常時フリースジャケットが活躍してくれました。ただ石垣島では現地在住のバードウォッチャーの方のおかげもあり、カンムリワシ、ムラサキサギ、ズグロミゾゴイ、カタグロトビの八重山4点セットを短時間ながらも見ることができ、与那国島では、オオチドリ、ヤツガシラ、クロウタドリの春の与那国島3点セットが何年ぶりかに出揃い、そして何といっても国内で観察することはほぼ不可能と思われるオニカッコウに出会うという奇跡的な大成果がありました。これは我々スタッフにとってもかなりの衝撃的なできごとで、今後長らく語り草になることでしょう。ほかにもサシバの渡り風景が見られ、群れる夏羽のツバメチドリの姿も見事でした。またクロツラヘラサギ、ギンムクドリ、カラムクドリ、ハイイロチュウヒ、ツメナガセキレイなどにも出会え、ホオジロハクセキレイやシベリアハクセキレイといった亜種たちも楽しませてくれました。この石垣島与那国島は秋も企画しております。秋はキンバトやミフウズラに出会う確率が高く、過去にはハイイロオウチュウやオウチュウ、バライロムクドリ、ベニバト、タカサゴモズといった春とは違った珍鳥が見られる傾向があり、春とは違った趣がありますので、ぜひまた季節を変えてお出かけください。この度はご参加いただきましてありがとうございました。またご一緒できますことを楽しみにしております。

石田光史

オニカッコウ 撮影:中谷博之様

 

カンムリワシ 撮影:大坪昭允様

 

オオチドリ 撮影:宅間保隆様

 

ヤツガシラ 撮影:中谷博之様

 

ギンムクドリ 撮影:大坪昭允様

 

ズグロミゾゴイ 撮影:宅間保隆様

 

ツバメチドリ 撮影:中谷博之様

 

クロウタドリ 撮影:大坪昭允様

 

ツバメチドリ 撮影:宅間保隆様

 

ズグロミゾゴイ 撮影:中谷博之様

 

ムラサキサギ 撮影:大坪昭允様

 

カタグロトビ 撮影:宅間保隆様

 

ムラサキサギ 撮影:中谷博之様

 

オニカッコウ 撮影:大坪昭允様

 

ヤツガシラ 撮影:宅間保隆様

 

クロツラヘラサギ 撮影:中谷博之様

 

ホオジロハクセキレイ 撮影:大坪昭允様

 

シロガシラ(上)とカラムクドリ 撮影:中谷博之様

 

ツバメチドリ 撮影:大坪昭允様

 

オオチドリ 撮影:中谷博之様

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