【ツアー報告】ベストシーズンに巡る夏の北海道 2020年6月19日~22日

(写真:シマアオジ 撮影:林山直樹様)

この度のコロナウイルスの影響から長らくツアー催行が叶いませんでしたが、ようやく5月末に緊急事態宣言が解除となり、その後、すぐにとはいきませんでしたが6月19日から国内旅行が催行できる旨、政府からの通達があったことから約2ヶ月ぶりにツアーを催行できることになりました。バードウォッチャーにとって最も忙しい5月は残念ながら過ぎてしまいましたが、梅雨がなく、これからバードウォッチングの最盛期を迎える北海道はちょうど良い時期です。このツアーでは移動距離が長いというデメリットはあるものの、夏の北海道での探鳥では絶対に外せない、シマアオジやギンザンマシコ、そして、総数100万羽ともいわれる海鳥が生息する天売島と探鳥地を網羅しているほか、森林帯の野鳥を観察する行程が全く含まれていないことから、初日には白金温泉付近で森林帯の野鳥も観察できるようにしています。例年、この時期の北海道は梅雨がないとはい晴天が続くことは少なく、今回は激しい雨が降る中での出発となってしまいました。

19日、この日は東京は早朝から雨が激しく降り、羽田空港も雨で霞んでいました。空港内は閑散としまだまだコロナウイルスの影響を感じました。ただ搭乗した機材は思った以上に混んでいて驚くほどで、ひとまず曇り空の千歳空港に無事到着後は現地集合のお客様と合流して早速この日の宿泊地に向かいました。途中立ち寄った道の駅では、ウグイスやカッコウ、ツツドリの声がする中、草原を飛び回るノビタキを観察し、晴れ間が出てきたことからイワツバメが飛び回っていました。その後はさらに進み、途中小雨が降る中、ホテル付近ではアカハラ、アオジ、センダイムシクイがさえずり、ニュウナイスズメがあちらこちらを飛び回っていました。その後はやや時間があったことからもう一か所立ち寄ってみましたが、標高が高い場所は濃霧のため視界がありませんでした。ホテル到着後は一旦お部屋に入っていただき、その後は再度ご集合いただき探鳥をすることにしましたが残念ながら雨模様、しかも降り方が強まったためホテルのひさしの下から探鳥をすることにしました。まずは当地の主役であるアオバトが雨の中」でも飛び回り、枯れ木に止まっている個体もいました。またけっこうな雨の中でも繁殖中のため餌運びを休まないでいるニュウナイスズメが見られ、雨が小降りになったタイミングを見計らってしらひげの滝まで行ってみました。ここでは同様に飛び回るアオバト、樹上でさえずるオオルリなどが見られましたが、雷鳴が轟く中、雨が激しくなってきたため16:30にて探鳥を終了しました。

20日、雨は上がっていましたが霧が立ち込める中、この日は05:00から早朝探鳥を行いました。相変わらず繁殖中のニュウナイスズメは盛んに餌運びを行い、アオバトの群れが飛ぶ様子も見られました。少々歩くとキビタキが歌い、ツツドリの声が間近に聞こえたかと思うと、枯れ木に止まっていました。さらにはオオアカゲラの姿があり、梢ではハシブトガラ、ヒガラがさえずってくれました。その後はバスに乗り、この日のメイン探鳥地である大雪山旭岳山麓駅に向かいました。途中、曇り空からは小雨が落ちてくる時間帯もありましたが、到着時は雨はなく空は比較的明るくなっていました。そんな中、まずは愛想の良いベニマシコが姿を現し、じっくりとその姿を見せてくれました。どうやら真っ赤なオスが2羽、メス1羽の3羽がいるようで、オスはさえずる姿を見せてくれました。この日はロープウェイが09:00始発のためこれに乗って姿見駅を目指しました。ただ進むにつれて外は霧が濃くなりやや心配になる状況でしたが到着時はなんとか視界は確保され、これならなんとかなるといった感じでした。ひとまず観察場所を目指して歩き始めましたが、とにかく今年は残雪が多い印象で、そのためか花々の咲き具合も今一つといった感じでした。それでも途中、黄色いキバナシャクナゲやエゾツガザクラの可憐な花々を見ることができ、展望台の周辺ではそれに加え、ミネズオウの花も咲いていました。ただこの日はめまぐるしく天候が変わる状況で、視界が一気に広がったかと思えば深い濃霧が広がり、一時的に激しく雨が降ったりしました。周囲からはノゴマ、ルリビタキ、カヤクグリの声が聞こえ、岩の上ではビンズイがさえずっていました。また残雪の上を歩き回るアオジ、青いルリビタキ、また可愛らしいシマリスの姿を見ることはできましたが、主役のギンザンマシコはちらっと見るのがやっとで、天候の悪化もあり11:40のロープウェイで下山することにしました。ここからはこのツアーで最も長い移動となりますが、この時間であればなんとか原生花園には立ち寄れることから、ひとまず先に進むことにしました。まずは途中にあるPA、その後は風が冷たく感じた道の駅、その後はこのツアーで初めて顏を出した青空を見ながら進み、約5時間をかけて現地までやってきました。まずは付近にある池を見てみることにし、久しぶりに夏羽のアカエリカイツブリに出会うことができ、悠々と舞うチュウヒの姿を見ながら原生花園に到着しました。ここでは名物となっているコヨシキリがソングポストに止まって歌い、その姿をしばらく見せてくれ、周囲ではなかなか目にしないエゾセンニュウがけたたましく鳴いていました。また電線ではカッコウが鳴いていましたが寒さのせいか、鳥の数が多い印象はありませんでした。

21日、この日は早朝からようやく青空が見える中、シマアオジを探すために04:30に原生花園に向かいました。昨年は残念ながら出会うことができませんでしたが、今年は早々に渡ってきているとのことで期待しての出発でした。現地到着後はまずエゾカンゾウの咲き具合の良さに驚かされながらポイントに直行しましたが、幸いにもシマアオジのフルートの音のようなさえずりが聞こえてきました。見てみると木道脇の低木に止まってさえずっている姿が見えたため望遠鏡にてまずは見ていただき、その後は木道からゆっくりと観察していただきました。その後もいくつかのソングポストに止まってさえずる姿をじっくりと見ることができ念願のシマアオジを堪能することができ、ほかにもノビタキ、ホオアカ、ツメナガセキレイ、そして早朝のもう一つの目玉であるオオジシギの豪快なディスプレイフライトも楽しむことができました。その後は一旦移動してみました。ここでは繁殖中なのか、2羽のツメナガセキレイが元気に飛び回り、エゾカンゾウの花に止まるなどさまざまなシーンを見せてくれました。観察後は一旦朝食のために戻り、その後は再び原生花園でマキノセンニュウを探しましたが残念ながら声を聞くに留まり、その後は再び原生花園の木道を歩きました。すると再びシマアオジに出会うことができ、最後はまた低木のソングポストに止まって伸びやかなさえずりを聞かせてくれました。その後は天売島に向かうため一旦羽幌町にあるフェリーターミナルに向けて出発しました。到着後は地元の魚介類をふんだんに使った昼食をいただき、14:00発のフェリーおろろん2で天売島を目指しました。波は穏やかでしたが風が強く、寒さが厳しい船上ではありましたが、航路上からはウトウとケイマフリが見られ、たまたま船と並んで飛ぶケイマフリがいたことから真っ赤な足をしっかりと見ることができました。天売島到着後は海岸でウミネコのコロニーを観察し、その後は展望台から海上に大量に浮いているウトウの群れ、岩礁に群れるゴマフアザラシが見られ、幸運にも海上に浮いている5羽のウミガラスの姿を見ることもできました。また最後の最後にはさえずるノゴマ、また当地ではかなり珍しい夏羽のホシムクドリ2羽を見ることができ、冬羽とは違って光沢が増した体、黄色い嘴が印象的でした。その後は慌ただしく豪華な夕食をいただき19:00からは専門のガイドさんと共に展望台にウトウの帰巣風景を観察しに向かいました。残念ながらこの時間には空は曇り空に変わってしまってはいましたが、続々と巣に帰ってくるウトウの姿や地面を歩き回る姿を観察して長い1日を終えました。

22日、夜に降っていた雨が気がかりでしたが早朝には雨は上がり、空は明るくなっていました。この日はこのツアー最後のプログラムとして恒例になっている漁船によるクルーズを行いました。集合時には小雨が落ちてきてしまい残念でしたが、出港後は雨に打たれることはなくまずは大量に浮いているウトウの群れをじっくりと観察することができ、中には船に寄ってくる個体もいました。また少ないながらも岩礁に止まって休んでいるケイマフリも見ることができ、最後の最後にはようやく着水しているウミガラスにも出会うことができ、漁船ならではの距離感で海鳥類を観察してこのツアーを締めくくりました。下船後は朝食をいただき予定通り10:25のフェリーにて海鳥を観察しながら帰路につきました。天売島では毎回立ち寄っていた海の宇宙館をはじめ、お土産屋さんなどほとんどが閉まっていたことはやや残念でした。

さて、私にとって約2ヶ月ぶりになるツアーだったため、かなりの緊張感を持って出発しました。梅雨がない北海道とはいえ、実はこの時期はからっと晴れることは少なく、どちらかといえば曇天で肌寒いことが多いのですが、今回はそれ以上に天候が悪く雨や霧に悩まされることになってしまいました。そのためか目玉であったギンザンマシコをしっかり観察することができず、初日もほぼ雨で観察ができませんでした。ただ3日目には早朝から快晴無風の条件となり、念願のシマアオジの姿をじっくりと観察することがでました。また天売島ではウトウ、ケイマフリ、ウミガラス、そしてウミネコのコロニーも印象的で、繁殖羽のホシムクドリとの出会いには驚きました。北海道は大変魅力的な探鳥地のため、さまざまな季節にツアーを企画しています。季節が変われば場所も目的も大きく変わるため飽きがこないのも事実です。またの機会にぜひ北海道にお出かけください。この度はご参加いただきましてありがとうございました。

石田光史

ウミネコの親子 撮影:久野守正様

 

ケイマフリ 撮影:林山直樹様

 

 

ホシムクドリ 撮影:久野守正様

 

オオジシギ 撮影:林山直樹様

 

ウトウ 撮影:久野守正様

 

ニュウナイスズメの親子 撮影:林山直樹様

 

ツメナガセキレイ 撮影:久野守正様

 

ノビタキ 撮影:林山直樹様

 

ケイマフリ 撮影:久野守正様

 

シマリス 撮影:林山直樹様

 

ウトウとウミガラス 撮影:久野守正様

 

ウミガラス 撮影:林山直樹様

 

ウトウ 撮影:林山直樹様

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