【ツアー報告】ベストシーズンに巡る夏の北海道 2021年6月25日~28日
(写真:ギンザンマシコ 撮影:米持千里様)
いつになったらコロナウイルス感染を考えずに旅に出られるのか。思い起こせば昨年もこのツアーから運行再開したことを思い出しました。その時はまさか翌年に同じような思いをするとは思っていませんでしたが、今年も再び緊急事態宣言が発出され、さらに延長になったことから6月20日以前の北海道のツアーは全てなくなり、ようやくこのツアーから運行できることになりました。北海道というとまず梅雨がないというのが一般的な知識としてありますが、実際に何年も何年もこの時期の北海道にきてみた感想としては、確かに梅雨のような長雨はないものの、天気はあまりよくない印象が強いのです。ただ、今回は出発前の天気予報を見ると雨のマークは全くなく驚くほどでした。このツアーでは移動距離が長いというデメリットはあるものの、夏の北海道での探鳥では絶対に外せない、シマアオジやギンザンマシコ、そして、総数100万羽ともいわれる海鳥が生息する天売島と夏の北海道のこれぞという探鳥地を網羅しているほか、森林の野鳥を観察する行程が全く含まれていないことから、初日には白金温泉付近で森林帯の野鳥も観察できるようにしています。
25日、早朝からどんよりとした空模様で小雨が降りはじめた羽田空港を予定通りに出発。千歳空港では各出発地からのお客様と合流してからバスにて出発しました。幸い千歳空港周辺は快晴で蒸し暑さを感じるほどでした。この日はまず宿泊地に向かい、途中立ち寄った道の駅では、草原を飛び回るノビタキのオスとメスを観察。さらに進んだ道の駅では針葉樹で鳴くヒガラ、ニュウナイスズメなどが見られました。ホテル到着後は一旦お部屋に入っていただき、その後は再度ご集合いただいてからホテル周辺で探鳥をすることにしました。この日は過去に経験したことがないほどの汗ばむような陽気で、まずは滝まで行くと早速オオルリが白樺の枝先でさえずってくれました。また当地の目玉であるアオバトが飛び回り、木々に止まる姿も見ることができました。その後は道路沿いに歩いてみると川沿いではイワツバメが飛び、電柱に営巣しているニュウナイスズメが愛想良くその姿を楽しませてくれました。さらに進むと枯れ木にミヤマカケスが止まり、餌を探すモズ、さらには木のてっぺんではアカハラがさえずってくれました。また帰り道ではさえずっているキビタキが見られ、コルリのさえずりも聞こえました。そして夕方に合わせて塒に向かって飛ぶアオバトを見るために再び滝に向かうと、この日も次々に我々の頭上を飛んで行くアオバトが見られ、30羽ほどの群れで飛ぶ様子も見ることができました。そしてホテルに戻る途中では巣立ったヒナを連れたハクセキレイも見ることができ18:00に探鳥を終了しました。
26日、この日はまず早朝探鳥を行いました。幸いこの日も晴天で昨日よりもさらに天気が良くなる雰囲気がありました。相変わらずアオバトが飛び、遠くからはツツドリのさえずりも聞こえていました。この日の早朝はコサメビタキがよく見られ、針葉樹のてっぺんに止まっている姿をじっくりと観察することができました。その後は一旦部屋に戻って荷物をまとめていただいてからバスに乗り、この日のメイン探鳥地である大雪山旭岳に向かいました。バスが進むとちょうど正面に旭岳が見えてきますが、この日は頂上まではっきり見えるほどの快晴。山麓駅オープン前に到着したことから準備を進めていただき09:00のロープウェイで姿見駅を目指しました。ロープウェイからは見事な風景を楽しむことができ、到着後はひとまず観察場所を目指して歩き始めました。最初の残雪がある道を過ぎると斜面に咲くキバナシャクナゲ、エゾノツガザクラが見事で、さらに進むとようやく観察場所に到着。本来であれば冷たい風が心地よい場所ですが、この日はグングン気温が上がり陽炎が経つほどでした。この日はギンザンマシコの気配はなく、まずは間近でさえずるルリビタキが見られ、さらにはノゴマ、カヤクグリがハイマツに止まってさえずっていました。全く気配はありませんでしたがこれがギンザンマシコの特徴といえば特徴で、この日も全く気配がない中、突然オスとメスのつがいと思われる2羽が飛んできて間近のハイマツに飛び込みました。間近に現れるだろうと待ちましたがハイマツの中を移動してしまったらしく、この個体は全く違った場所にひょっこり現れ、とりあえず真っ赤なオス個体を見ることができました。その後もやや距離はありましたが、真っ赤なオス個体は何度もハイマツに止まり、珍しくさえずる姿も見ることができました。ただなかなか間近に見ることができないことから観察時間を延長、さらに延長していると、ようやく最後の最後に手が届こうかという距離に2羽のメス個体がやってきてくれ、その後も同じメス個体が何回も間近にやってきてしっかりとその姿を見ることができました。結果的には1時間ほど遅れてロープウェイで下山することにし、ここからは昼食をバス車内で食べながら、このツアーで最も長い移動となりました。まずは途中にあるPA、その後は蒸し暑さを感じる陽気になった道の駅、その後はやや雲が広がり始めた道の駅では飛翔するハリオアマツバメ、さえずるヒバリ、そして稜線に現れたオジロワシを観察し、約5時間をかけて幌延までやってきました。このツアーではじめての曇り空での探鳥となりましたが原生花園近くの池では夏羽のアカエリカイツブリに出会うことができ、最後の最後に立ち寄った原生花園前では電線に3羽のカッコウが止まって独特のポーズでさえずっていました。よく見るとやや小型のトケン類の姿もあり、どうやらツツドリの赤色型のようでした。時間が押してしまいゆっくりと見ることができませんでしたが、付近にはツメナガセキレイ、ノビタキの姿もありました。
27日、この日の早朝はサロベツらしい曇り空でしたが雨の予報はなく、ひとまず早朝に出発してサロベツ原生花園に向かいました。シマアオジは早朝によくさえずるため少々歩きながら探してはみましたが残念ながらあのフルートの音のようなさえずりを聞くことはできませんでした。周辺はエゾカンゾウの黄色い花は見事で、そこに止まるノビタキやホオアカ、ツメナガセキレイ、オオジュリンなどを見て過ごしました。ただよく探してみると距離はありましたがなんとかシマアオジの姿を見つけることができ望遠鏡で見ることができました。距離があったため写真で見させていただきましたが間違いなくシマアオジのオスでした。ただシマアオジとの出会いはこの一度だけでやはり渡ってきている個体数が極めて少ないことを実感しました。その後は木道エリアを歩き、我々の真上でディスプレイフライトをしてくれた愛想の良いオオジシギを見てから一旦宿に戻って朝食をいただき、再度出発してサロベツに滞在しているマナヅルを探しに行きました。牧草地をバスで走りながら探すと牧草地の真ん中にポツンと2羽のマナヅルの姿を見つけることができ、ひとまずバスを降りて観察することにしました。どうやらつがいなのか2羽は仲良く牧草地を歩きながら餌を探していました。本来、すでに繁殖期を迎えているわけですから一体どうしてしまったのでしょうか。無事に繁殖地にたどり着ければ良いのですが。その後は再び道路脇からエゾカンゾウに止まる、ノビタキ、ツメナガセキレイ、オオジュリンなどを見てから天売島に向かうため羽幌町にあるフェリーターミナルに向けて出発しました。到着後は昼食をいただき、14:00発のフェリーおろろん2で天売島を目指しました。この日はサロベツは曇り空でしたが羽幌町が近づくと空は見る見る青くなり、出航時も快晴でしかも無風、ベタ凪といった感じでした。航路上からはウトウとケイマフリが見られ、たまたま船と並んで飛ぶケイマフリがいたことから真っ赤な足をしっかりと見ることができました。天売島到着後はウミネコのコロニーがある海岸で巣立ったばかりのヒナ、そして盛んにさえずるコヨシキリを観察し、その後は夜にも訪れる赤岩展望台に向かいました。展望台まで行くと断崖にハヤブサが止まり、海上に大量に浮いているウトウの群れに混じる1羽のウミガラスを観察することができました。時間が押してしまいましたが、最後は大音響でさえずるノゴマやアオジ、枯れ木に止まるアリスイ、飛び回るアマツバメなどを観察し、最後に枯れ木に止まっているコムクドリ、クロツグミを見ていると、突然橙色の鳥がフワリと双眼鏡の視界に入ってきました。良く見るとヤツガシラでしばらく止まった後、フワフワとした独特の飛翔で去っていきました。その後は慌ただしく豪華な夕食をいただき19:00からは赤岩展望台にウトウの帰巣風景を観察しに向かいました。西の空にはやや雲がかかってはいましたが、寒さを全く感じないという異例の状況の中、続々と巣に帰ってくるウトウを観察しました。いつもと変わらない風景かと思っていましたが、この日はなんとハヤブサがウトウを捕らえる様子まで観察し、最後は地面を歩き回るユーモラスなウトウの姿を観察して長い1日を終えました。
28日、明け方からさえずり続けているエゾセンニュウの声を聞きながら目を覚ますと外は意外にも曇りでやや風がありました。この日はこのツアーの最後のプログラムとして2回に分かれて漁船クルーズを行いました。昨日は上から赤岩を見ましたが、この日は海上から見る形です。海上を進むと上空をアマツバメが飛び交い、岩礁のある場所ではケイマフリが「ピピピピピ・・・」と鳴きながらディスプレイフライトを繰り返していました。今年はウトウの数はかなり多いもののケイマフリはやや少ない印象で、ウミガラスは距離はありましたがなんとか着水している姿を見ることができ、漁船ならではの視点で海鳥類を観察してこのツアーを締めくくりました。下船後はやや肌寒さを感じる冷たい風に打たれながら予定通りのフェリーで海鳥を観察しながら羽幌港を目指し、到着後は千歳空港に向けて出発し帰路につきました。
さて、今回はとにかく4日間を通して傘の出番が全くなく、汗ばむような陽気の時間帯があったことが何より印象的でした。過去、この時期に何度となく訪れていますがこういった4日間を過ごしたことはなかったように感じます。このツアーの目玉であるシマアオジがしっかり観察できなかったことは本当に残念で、今後の飛来状況がどうなるのか本当に心配になりました。一方でギンザンマシコは何度となくその姿を見せてくれ、メス個体ではありましたが最後の最後には手が届くような距離感で見ることができました。また天売島では良いコンディションの中でウトウの帰巣風景を観察できたほか、ケイマフリ、ウミガラス、そしてウミネコのコロニーも印象的で、ヤツガシラ、ブッポウソウ、アリスイ、ノゴマなども見られ、ツメナガセキレイ、オオジュリン、ホオアカ、オオジシギ、アオバト、そしてマナヅルとの出会いには驚かされました。北海道は大変に広く、季節が変われば目的も大きく変わるため飽きがこないことも魅力です。またの機会にぜひ北海道にお出かけください。この度はご参加いただきましてありがとうございました。
石田光史