【ツアー報告】春の利尻島 最北の航路と渡りの鳥たち(追加設定) 2022年5月8日~11日

(写真:クマゲラ 撮影:柴山勝様)

本州に住んでいる我々にとってはもうこの時期は春の渡りはすでに終わっている印象がありますが、北海道北部の島々ではこの時期はちょうど春の渡りの最盛期を迎えています。このツアーでは時期を5月の初中旬に合わせることで渡り途中の小鳥類に期待できるようにしているほか、海上を渡る海鳥たち、そして利尻島内ではクマゲラやコマドリ、また道内では原生花園の小鳥やヤマゲラを探すなど、さまざまな楽しみを組み合わせています。北海道はさまざまな時期にツアーを企画し、いずれも大好評を得ていますが、この時期は厳冬期や花々が咲き乱れる初夏に負けない魅力があります。ただ、この時期の道北はまだまだ真冬のような気温になることも普通で、さらに利尻島に渡る船上は冷たい風が吹きつけます。ただし今回は初日の天気予報が曇りでしたが、以降は初夏のような陽気になるとの予報が出る中での出発となりました。

8日、この日は朝から快晴。予定通り羽田空港にご集合が完了したため連絡事項をお伝えしてから搭乗し、ひとまず稚内空港に向けて出発しました。ただ到着直前から小雨が降りだし、到着した稚内空港は小雨、しかも気温は8℃でした。観察機材準備の後は原生花園に向かいました。到着後、バスを降りると風があるせいか肌寒く感じました。あと一か月半もすれば黄色いエゾカンゾウの花が咲き乱れる場所もまだまだ景色は冬のようでしたが、周辺からはアオジのさえずりが聞こえ、ノビタキが間近にじっと止まっていました。ひとまず木道を一周歩いてみましたが雨、風、寒さのせいか、結局、ノビタキの姿を見るに留まりました。駐車場まで戻ると周辺の草地でもノビタキのつがいが飛び回り、枯れ木には2羽のツグミが止まっていました。一旦、別の場所にも行ってみましたが、小鳥の姿はなく、池にはマガモ、ハシビロガモの姿があったのみでした。その後はさらに南に移動し、途中、浮き巣に乗っている夏羽のアカエリカイツブリとヨシガモを観察してから次の場所に向かいました。この頃からようやく雨が気にならなくなってはきましたが残念ながら小鳥類の姿がなく焦りました。ただ雨が上がって空が明るくなってきた頃からはツバメが飛び交いはじめ、チュウヒが飛び、ハシブトガラスに追われるようにノスリも飛び、ようやく期待のツメナガセキレイが鳴きながら飛んできてくれました。観察していると周辺の木や看板に止まるなどして黄色い鮮やかな姿を堪能させてくれ、時には間近にその姿を見せてくれ、殺風景な中だからか、とても美しく感じました。ここからはようやく陽が射す状況の中、海岸線まで移動して左手に利尻富士を眺めながら稚内市内のホテルに向かって移動することにしました。ただ、途中には港があることから夏羽のオオセグロカモメやシノリガモのオス、海岸でシロチドリ、キョウジョシギ、キアシシギ、コガモなどを見てから最後はノシャップ岬まで移動し、強風が吹く中、ヒドリガモ、ウミアイサなどを観察してこの日の探鳥を終えました。

9日、この日は早朝便に乗船しなくてはならないことから早くにホテルを出発しました。早朝は晴れていたものの空は次第に暗くなり一時的に小雨が降っていました。乗船後はデッキに出て海鳥観察を行いました。この航路の目玉は夏羽に換羽したシロエリオオハム、群れで飛び回るアカエリヒレアシシギ、北上中のハシボソミズナギドリですが、まずはウトウの群れが次々に飛び、期待通りに白黒模様のシロエリオオハム、真っ赤なアカエリヒレアシシギの夏羽が楽しませてくれ、利尻島が見え始めた頃からは無数のハシボソミズナギドリが出現し、乱舞する姿を見ることができました。いつの間にか空が見る見る青空に変わる中、船は予定通り利尻島に到着。現地在住のガイドさんと合流して観察機材を準備した後は早速、クマゲラの姿を求めて出発しました。エンレイソウやマイヅルソウが咲き、コマドリやミソサザイがさえずる中、現地に到着後は遊歩道沿いでひたすらクマゲラが現れるのを待つことにしました。このツアーでは毎回、現地で山のガイドをされている山澤さんに下見をしていただいています。この日は意外なほどあっさりとクマゲラがやってきてくれ、結局、午前中の時間を全て使って2度、その姿を見ることができ、一旦、昼食の時間としました。昼食後はこのツアーで最も珍鳥が見られている場所に向かいました。到着すると地面にアオジが群れ、よく見るとカシラダカの夏羽個体、さらには1羽のコホオアカの姿も見られました。また電線にはツバメ、イワツバメが止まっていましたが、このイワツバメになんとなく違和感があったので再度見てみると上面には青みがあり、下面は純白、飛翔形を見ると腰の白色部が上にせり上がり、腰回りはぐるりと一周純白でした。まさかとは思いましたが10数年ぶりにニシイワツバメに出会う幸運に恵まれ、しかもよく見ると3~4羽が飛んでいてさらに驚きました。川の上流まで歩くとコサメビタキやルリビタキ、キセキレイ、ビンズイなどの姿も見ることができ、その後はトイレ休憩も兼ねて移動しました。ここでは見事な利尻山を眺めることができ、周辺の芝生にはツグミ、そして黄色が鮮やかなツメナガセキレイの姿があり、我々の頭上を何度も何度も2羽のオジロワシが旋回する様子は見事でした。その後は広場を歩いてみました。ここではこれから北へと渡っていくツグミが群れ、いたるところがツグミだらけでした。何か混じっていないかと1羽1羽見てみましたがほかの種は見られず、グランドに群れるカワラヒワ、どこからともなく飛んできたコムクドリ、そして最後はニュウナイスズメの姿を見てから公園まで行き、やや冷え込んでくる中、今回はあまり見ることができなかったノゴマをようやく見ることができ、ほかにもノビタキ、ヒバリなどを見てこの日の探鳥を終えることにしました。

10日、この日は早朝から快晴の中、早朝にホテルを出発して歩いてみました。到着と同時に50羽ほどのマヒワの群れが飛び交い、広場まで歩くと1羽のヒレンジャクの姿がありました。そしてここまでなかなかじっくり姿を見ることができなかったコマドリが針葉樹のてっぺんに止まって美声を震わせ、さらにもう1羽、さえずる姿をじっくりと見せてくれ、最後は飛び交うシメの群れを見てから一旦朝食とし、朝食後は汗ばむような陽気の中、再びクマゲラに出会うことができ、その後は途中、海上に浮かぶトドの姿を見てから移動し、この日はすでにニシイワツバメの姿はなかったものの、センダイムシクイ、エゾムシクイ、コサメビタキ、ルリビタキ、そしてこの日はオオルリのメスが加わり、最後はツメナガセキレイを見てから移動しました。たまたまこの日は快晴無風だったことから湖面に映る「逆さ利尻富士」を見る幸運があり、周辺でさえずるハシブトガラやヒガラ、飛翔するオジロワシを見てから鴛泊のフェリーターミナルに移動して昼食をいただき、その後は現地でお世話になったガイドさんからご挨拶をいただき乗船しました。帰りの航路も同様に夏羽のシロエリオオハムやアカエリヒレアシシギ、稚内港が近づいてくるにつれ増えてくるウトウの姿を見ながら稚内港に到着し、その後はこの日の宿泊地に向かいました。

11日、この日は探鳥時間を確保するため早朝にホテルを出ました。幸いこの日も早朝から快晴でお天気の心配は全くありませんでした。1時間ほどの移動時間の中で朝食をとっていただき、到着後は観察の準備をしてから歩き始めました。まずは過去によくヤマゲラが見られている場所を回ってみましたがその姿はなく、別の場所に移動しようかと思った瞬間、地上から飛び立って木に止まるヤマゲラの姿が目に入りました。そのためそちらの方向に歩くと、高木にじっと止まっているヤマゲラを見つけることができました。最初は逆光でしたがこれといって警戒する雰囲気がなかったため順光側に回り込むと、鮮やかな黄緑色と黄色のコントラストが美しいその姿をじっくりと観察することができ、一旦飛び立ってしまったものの付近の木に止まったことから再び観察するチャンスがありました。一旦、その場を離れて園内を歩くと、付近にはハシブトガラやヒガラ、ゴジュウカラ、そして個体数が多いニュウナイスズメも間近に見ることができ、さらに進むとようやくアカハラと一緒に行動しているマミチャジナイに出会うこともできました。そしてここでもどこからともなく飛んできたヤマゲラが木に止まり、観察していると地上に降りて餌を探し始めました。またこの日はヤマゲラの独特の笛のような声もたっぷりと聞くこともできました。さらに進むとアカゲラの姿もあり、残雪がわずかに残る場所では雪の上を歩きながら餌を探すアトリ、マヒワ、そして青いコルリが見られ、その後は白樺でさえずるキビタキを見て盛り上がりました。その後は一旦、場所を変えてみることにし、いよいよ汗ばむような陽気の中、エゾエンゴサクやカタクリの花が咲く広場ではアカゲラが飛び回り、ここでようやく梢でさえずるツツドリに出会うことができ、独特の姿勢と独特のさえずりを楽しむことができました。そして最後は再び駐車場まで戻って観察し、最後はツグミ、アカハラ、そしてここでもマミチャジナイを観察して探鳥を終了しました。

今回の利尻島ツアーは初日に雨が降ってしまい、肌寒い中での探鳥となってしまいましたが、その後は概ね晴れ間が見える中での探鳥ができ、3日目4日目の日中は汗ばむような場面もありました。毎回、事前に利尻島内の野鳥の状況をリサーチしてくださる現地在住ガイドさんのおかげで、今回もクマゲラの姿を堪能することができ、クマゲラと並んで利尻島では密度が高いコマドリの梢でさえずる姿を2度に渡ってじっくりと観察する幸運があり、オジロワシの飛翔も見事でした。またちょうど渡りの時期に合わせていることから、私的にも10数年ぶりとなるニシイワツバメに出会うことができたほか、コホオアカ、ヒレンジャク、マミチャジナイといった渡り鳥たち、またツグミの群れやマヒワの群れ、アトリ、カシラダカ、シメといった冬鳥のほか、キビタキ、オオルリ、コサメビタキといった夏鳥たちにも出会うことができました。また、道内ではツメナガセキレイ、オオジシギ、ノビタキ、アカエリカイツブリ、森では主な目的だったヤマゲラに出会うことができ、ニュウナイスズメ、ベニマシコ、アカゲラ、ツツドリなどにも出会えました。また往復の航路ではこの航路の定番である夏羽のシロエリオオハム、夏羽のアカエリヒレアシシギ、ウトウ、ハシボソミズナギドリの群れが見られました。今後もしばらくの間はコロナウイルス感染予防に徹しながらのツアー運行となります。皆様には事前および当日の検温、健康観察などをお願いいたしますがどうかご協力ください。私もほぼ毎週のPCR検査を継続して参ります。この度はご参加いただきましてありがとうございました。

石田光史

ニシイワツバメ

 

ツメナガセキレイ 撮影:鈴木利幸様

 

ヤマゲラ 撮影:柴山勝様

 

ツツドリ 撮影:鈴木利幸様

 

コマドリ 撮影:柴山勝様

 

コホオアカ 撮影:鈴木利幸様

 

クマゲラ 撮影:柴山勝様

 

マミチャジナイ 撮影:鈴木利幸様

 

エゾユキウサギ 撮影:柴山勝様

 

クマゲラ 撮影:鈴木利幸様

 

ニシイワツバメ 撮影:長谷川誠様

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