【ツアー報告】ベストシーズンに巡る夏の北海道 2022年6月30日~7月3日

(写真:ウミガラス 撮影:藤塚譲二様)

本州が梅雨時期のため雨を避けて北海道に向かうというのが通例ですが、今年はなぜか本州はすでに梅雨があけて連日の猛暑。一方で北海道には梅雨前線がかかり天候が今一つという逆転現象の中でのツアーとなってしまいました。北海道というとまず梅雨がないというのが一般的な知識としてありますが、実は実際に何年も何年もこの時期の北海道に来た印象としては確かに梅雨のような長雨はないものの、意外と天気がよくない印象があります。このツアーでは移動距離が長いというデメリットはあるものの、夏の北海道での探鳥では絶対に外せない、シマアオジやギンザンマシコ、そして、総数100万羽ともいわれる海鳥が生息する天売島を訪れるなど夏の北海道のこれぞという探鳥地を網羅しているほか、森林の野鳥を観察する行程が全く含まれていないことから白金温泉付近で森林帯の野鳥も観察できるようにしています。またギンザンマシコ観察に関しては気温上昇と共に起こる陽炎の影響を避けるため、また観光客が増える前に現地を訪れるため早朝便のロープウェイに乗車できるよう日程を調整して企画しています。

30日、毎日毎日暑い関東地方。この日も羽田空港に向かう時点で早くも30℃を超えていました。ひとまず羽田空港にご集合が完了したことから予定通り出発して稚内空港に向かいました。無事に到着した稚内空港は珍しく快晴。まずは原生花園に向かい到着後はまずは木道エリアを歩いてみました。今年はエゾカンゾウの花の咲きっぷりが見事で双眼鏡で見ると遥かかなたまで黄色一色。またこの日は遠くに利尻富士が見えて見事な景観でした。コヨシキリやアオジのさえずりを聞きながら歩きだすと、まずはヒナを連れたノビタキが飛び回っていて、オス個体が間近にさずり飛翔を見せてくれました。さらに進むとコバイケイソウに止まってさえずっているホオアカにも出会うことができ、最後はエゾカンゾウの花にも止まってくれました。その後は移動して歩きながら探鳥しました。ここではコバイケイソウに止まって単調にさえずるオオジュリンの姿を間近に見ることができ、双眼鏡で周囲を見てみるとノビタキがいくつも飛び回っていました。さらに歩くとツメナガセキレイが複数見られ、エゾカンゾウの花に止まったり、間近を飛んだりと楽しませてくれ、そのうちの1羽が道路脇の低木に止まってくれたたため間近にその姿を堪能することができました。またコヨシキリもソングポストが決まっているらしく、何度も何度も同じ枯れ木でさえずっていたため、じっくりとその姿を見ることができました。ここでは翌日の探鳥がメインになることから、この辺りで切り上げて移動しました。途中にある池ではこの日も夏羽に換羽した鮮やかな色彩のアカエリカイツブリと巣立ったヒナを見ることができ、その後はコヨシキリの賑やかなさえずりが周囲から聞こえる中で木道を歩いてみました。ここでもノビタキは巣立ったヒナたちに餌を運んでいて、池を見てみるとアオサギが佇み、カモ類が飛び立ちました。良く見てみるとシマアジで驚きましたが少なからず繁殖しているのかもしれません。そして最後はようやく歌いだしたシマセンニュウ、そしてカッコウの姿を見てこの日の探鳥を終えました。

1日、この日は珍しく早朝から青空が見える中、早朝に出発して原生花園に向かいました。出発前にはホテル周辺でヒガラがさえずり、ニュウナイスズメの姿も見ることができました。この日は早朝ということもあってコヨシキリ、ノビタキ、ホオアカ、オオジュリンとさまざまな鳥たちのさえずりが聞えていました。そしてこの日もツメナガセキレイが何度も見られ、中には口に餌を咥えて飛び回っている個体もいました。その後は木道エリアに移動して展望台からオオジシギのディスプレイフライトを観察しました。待っていると、賑やかに鳴きながら頭上に飛来したオオジシギが独特の急上昇、急降下を繰り返すディプレイフライトを何度も見せてくれ、一時は同時に3個体が飛ぶ様子も見られました。探鳥後は一旦、朝食のためホテルに戻り朝食をいただき、再度出発して原生花園に向かう予定でしたが、ここでいきなり天売島に向かうフェリーが故障したとの連絡がありました。そのため予定していた14:00のフェリーは諦め、12:25の高速艇に乗船できるよう朝食後は即、羽幌港に向けて出発することにしました。途中、道の駅で休憩をとって時間調整をし、昼食の準備をしてくださっているレストランの時間に合わせて羽幌港に到着しました。まだまだお腹が減っている時間ではないかもしれなかったですが、せっかくご用意いただいた海の幸をいただき、予定よりもだいぶ早い高速艇で天売島に向けて出発しました。幸い波は全くない穏やかな状況だったことからデッキに上がることができ、少ないながらもウトウ、ケイマフリを見ながら天売島に到着することができました。到着後はたっぷり時間があることから島内探鳥に出かけ、まずはウミネコのコロニーがある黒崎海岸で2000羽ほどにも膨れ上がったウミネコとそのヒナたちを観察し、その後は夜にも訪れる赤岩展望台に向かいました。展望台まで行くとハヤブサが周囲を飛び回り、いつもの岩に止まってくれました。海上を眺めてみるとこの日は意外なほど海鳥の姿がなく、ウミガラスはようやく1羽を見るだけでした。その後はここまでじっくり見ることができていなかったノゴマを探すために移動して徒歩探鳥をすることにしました。バスを降りると早速、複数のノゴマがさえずっていたことから探してみると、いきなり3個体のノゴマを見ることができ、うち1羽がかなり良い場所に止まってしばらくさえずってくれたことから、じっくりとその姿を堪能することができました。その後も各所にノゴマの姿があり、とある場所ではまだまだ子育て中なのか、オスとメスの姿を見ることもできました。そして最後は神社でコムクドリを観察してから宿に戻って豪華な夕食をいただき19:00からは天売島のメインであるウトウの帰巣風景を観察しに赤岩展望台に向かいました。この日は幸いにも夕陽が沈んでいく美しい夕景を眺めることができ、その後は時間と共に次々に巣に戻ってくるウトウたちの姿を眺めてこの日の探鳥を終えました。

2日、この日は漁船を使ったクルーズの予定だったためかなり早めに起きて海況をチェックしました。波、風共に気になる点はありませんでしたが前日にあまり風向きが良くないと船長から連絡が入っていたため心配でした。ただし05:30には出航できるとの連絡が入ったため2班に分かれて出港することにしました。以前は日の出に合わせるように出航していましたが、撮影するには光量が足りないため、最近はできる限り遅い時間に合わせて出港するようにしています。今回は幸いにも両班共に良い距離感でウミガラスを複数観察することができ、赤岩直下ではやや波があったものの、群れ飛ぶウトウ、そして間近に着水しているケイマフリも堪能することができました。漁船クルーズ後は天売港にご集合いただき、帰りはフェリーが復旧したとのことで予定通り10:25発に乗船して穏やかな海でウトウ、ケイマフリ、ヒメウなどを眺めながら羽幌港に戻りました。ここからはこのツアーで最も長い移動となります。まずは各自昼食をご購入いただいてから再度出発し、道の駅でまずは休憩、その後は高速道路を走って途中にあるSAで休憩、そして遠くに雲がかかった十勝岳が見えてくるといよいよ宿泊地が近づいてきます。この日はかなり蒸し暑い中で到着した後は一旦、お部屋に入っていただいてから再度ご集合いただき周辺を探鳥しました。今年の夏の北海道は全体的に気温が高い印象がありましたが、この日はとにかく蒸し暑く、暑さが苦手な私にとってはかなり厳しい状況でした。外に出るとすでにアオバトが飛び回り、各所からニュウナイスズメの声が聞こえてきていました。さらに歩くと針葉樹の梢で朗々とさえずるオオルリ、さらには森の中からはキビタキのさえずりが聞えていて、さらに進むとここでも針葉樹の梢でさえずるオオルリに出会うことができ美しいブルーを堪能することができました。さらに歩くと針葉樹の中からキクイタダキのさえずりが連続して聞こえ、ちらちらとではありましたが動き回る姿を見ることもでき、付近ではヒガラもさかんにさえずっていました。そして最後は滝まで行き、夕方に塒に向かって飛んで行くアオバトを観察しました。この日は周辺の樹木に止まっているアオバトの数がやや少ない印象でしたが、それでも鮮やかな緑色のアオバトが針葉樹に止まっている姿、また我々の頭上を通過して行く様子などを見ることができ18:45にこの日の探鳥を終えました。

3日、この日はこのツアーの大きな目的の一つであるギンザンマシコを探しに行くため早朝にホテルを出発しました。天気予報は曇りとのことでしたが我々が向かう旭岳方向にはかなり真っ黒い雲がかかっていました。探鳥地に向かうために乗車しなくてはならない旭岳ロープウェイはシーズンになると始発が08:30から06:30に変わります。我々のツアーでは始発が06:30になるタイミングに合わせてツアー企画することにしているため、この時期になっています。これは気温が上がるにつれて陽炎が立ってくるためギンザンマシコがクリアに見られず、これを避ける意味、また観光客が増える前に現地に行きたいといった思惑からです。ただこの日は山麓駅が近づくにつれて霧が濃くなってきてしまい、到着した山麓駅はすっかり霧の中でした。ただやはりロープウェイに乗ってひとまず姿見駅を目指すことにしました。姿見駅周辺は先週に比べるとさらに雪が減り、だいぶ地面が見えてきていました。準備をしているといくぶん視界は広がってきたため、ひとまず第三展望台に向かうことにしました。周辺にはキバナシャクナゲやエゾノツガザクラといった可憐な花々が見られ高山帯の雰囲気を感じることができました。するといきなりハイマツの中からつがいのギンザマシコが飛び立って間近に止まりました。やや霧がかかってはいましたがつがいのギンザンマシコはハイマツの根本を歩いたり、地面に降りたりしながら餌を探していました。一旦、見失いましたが雪原の上を歩いている姿も見ることができ、その後は予定通り第三展望台に向かいました。この日は雨、風はほとんどなかったものの霧はほとんどとれることなく視界を遮っていました。しばらく鳥が見えない時間が続きましたが、ようやく09:00にいきなり間近のハイマツの上に真っ赤なオスのギンザンマシコが止まり、しばらくじっとしていてくれたためまずはその姿をじっくりと見ることができました。良く見ると背後にもう1羽、その2羽が飛び立って別のハイマツに止まったかと思うとさらにもう1羽が加わって最終的には3羽のギンザンマシコがやってきて周囲を飛び回ってくれました。ただその後はノゴマ、カヤクグリ、ルリビタキ、そしてギンザンマシコのさえずりは聞こえましたが霧に阻まれて姿を見る機会には恵まれませんでした。

天気が芳しくない今年の夏の北海道でしたが今回は4日間を通して概ね天候が良く幸いでした。目玉であったシマアオジは観察可能エリアでは見ることができず、ギンザンマシコは間近に見ることはできたものの霧に遮られる形での観察になってしまいました。一方、天売島では美しい夕景の中でウトウの帰巣風景を観察することができ、漁船からのクルーズではウミガラスを良い条件の中で見ることができたほか、ウトウ、ケイマフリもたっぷりと観察することができました。またツメナガセキレイ、シマセンニュウ、ノゴマ、オオジュリン、ノビタキ、ホオアカ、そしてダイナミックなオオジシギのディスプレイフライトを堪能することもでき森ではアオバトの群れやオオルリ、ニュウナイスズメ、ヒガラ、アオジといった林の鳥たちも楽しむことができました。北海道はバードウォッチャーにとって魅力的な場所です。季節が変われば目的となる鳥も変わり何度訪れても新たな出会いや感動があり飽きることがありません。またの機会にぜひ北海道にお出かけください。この度はご参加いただきましてありがとうございました。

石田光史

ハヤブサ 撮影:山口弓子様

 

ツメナガセキレイ 撮影:藤塚譲二様

 

ノゴマ 撮影:山口弓子様

 

ウトウ 撮影:藤塚譲二様

 

ウミネコ 撮影:山口弓子様

 

シマセンニュウ 撮影:藤塚譲二様

 

オオジュリン 撮影:山口弓子様

 

オオジシギ 撮影:藤塚譲二様

 

ウトウ 撮影:山口弓子様

 

ギンザンマシコ 撮影:藤塚譲二様

 

ノビタキのヒナ 撮影:山口弓子様

 

ケイマフリ 撮影:藤塚譲二様

 

ノビタキ 撮影:藤塚譲二様

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