【ツアー報告】ベストシーズンに巡る夏の北海道 2023年6月21日~24日

(写真:ギンザンマシコ 撮影:中澤均様)

この時期、本州は梅雨の時期を迎え、また多くの野鳥たちが繁殖期を終えて静かになってしまうため探鳥は不向きになります。一方でちょうどバードウォッチングの最盛期を迎えるのが北海道です。一般的には北海道は梅雨がないといわれていますが、実際に何年も何年もこの時期の北海道に来た印象としては確かに梅雨のような長雨はないものの、意外と天気がよくない印象があります。このツアーでは移動距離が長いというデメリットはあるものの、夏の北海道での探鳥では絶対に外せない、シマアオジやギンザンマシコ、そして、総数100万羽ともいわれる海鳥が生息する天売島を訪れるなど夏の北海道のこれぞという探鳥地を網羅しているほか、森林の野鳥を観察する行程が全く含まれていないことから白金温泉付近で森林帯の野鳥も観察できるようにしています。またギンザンマシコ観察に関しては気温上昇と共に起こる陽炎の影響を避けるため、また観光客が増える前に現地を訪れるため早朝便のロープウェイに乗車できるよう日程を調整して企画しています。

21日、本州はここ数日、暑い日が続いていましたがこの日も早朝から快晴で蒸し暑い朝でした。ひとまず羽田空港に予定通りご集合いただき、資料の配布、そしてこの日の連絡事項をお伝えしてから搭乗口に進み稚内空港に向かいました。着陸直前にはかなり機体が揺れたものの無事到着した稚内空港は珍しく快晴でした。空港内で観察機材の準備をしていただいてから、この日はまず原生花園に向かいました。現地に到着後はノビタキのつがいが巣だったヒナに餌を与えようとしているのか、かなり騒ぎ立てていたことからスルーして遊歩道を歩いてみました。電線にはニュウナイスズメのオスが止まっていてじっくりとその姿を見せてくれ、さらに進むと黄色が鮮やかなツメナガセキレイが周囲を飛び回っていて、牧草地に降りたり、周辺の木に止まってくれました。また戻る途中では枯れ木に止まった2羽の真っ赤なベニマシコも見ることができました。木道エリアではとにかくコヨシキリの姿が目立ち、わずかな範囲の中で数個体が競い合うようにさえずっていて、遠くの枯れ木ではオオジュリンがさえずり、電線ではカッコウもさえずっていました。その後はいよいよサロベツに向かいました。途中にある池では目的だったアカエリカイツブリの姿が見られませんでしたが、たまたまオシドリのつがいが見られ、どこから飛んできたのか道北ではほとんど見たことがないミサゴがやってきてダイビングをしていました。そして移動しようかとバスに乗り込みながら再び池を見てみると、なんと夏羽のアカエリカイツブリが浮いていました。そのため再度バスを下りて観察してからサロベツに向かいました。サロベツではまず木道エリアに入って全体的に見てみましたが今年はエゾカンゾウの花の咲きっぷりが見事で、双眼鏡で見ると遥かかなたまで黄色一色で遠くに利尻富士が見えて見事な景観でした。ここでもノビタキが元気に飛び回っていて、ほかにもホオアカ、ノゴマが見られ、夕方になっていたことからかオオジシギがかなり元気に飛び回ってはディスプレイフライトを繰り返していました。またここ数年、ほとんど姿を見なくなったマキノセンニュウのさえずりが聞こえたことから探してみると、わずかな時間ながら低木に止まってさえずっている姿を観察することもできました。

22日、この日はサロベツとしては珍しく早朝から青空が見え、外からはキビタキやアオジのさえずりが聞こえている中、早朝に出発して現地に向かい、まずは昨日、じっくり見られなかったマキノセンニュウを見るために再び木道エリアに入りました。この日もノビタキが目立ち、相変わらずオオジシギはディスプレイフライトを繰り返していました。しばらくするとマキノセンニュウがさえずりだしたので待っていると、この日は何回も何回も低木に出てきてくれたため昨日以上にしっかりと観察することができました。気がつくと早朝のサロベツとは思えない暑さになっていて半袖でも大丈夫なくらいでした。その後は一旦ホテルに戻って朝食をいただき、再度出発して再びサロベツに向かいました。この時間はさらに暑さを感じるようになっていてサロベツとは思えないほどでした。ここではエゾカンゾウのお花畑をオオジュリンやノビタキが飛び回り、湿地帯になっている場所ではツメナガセキレイが飛び回っては間近にある杭に止まってくれました。そしてそろそろ探鳥を終える時間かといった頃になってかすかにシマアオジのさえずりが聞こえてきましたが、その姿を確認することはできませんでした。探鳥後は一旦休憩してから羽幌港に向かいました。途中、車窓からは海が眺められますが、とにかくこの日は穏やかで波といった波は全く見られず、遠くには焼尻島、そして天売島が見えていました。羽幌港到着後は海の幸満載の昼食をいただき、予定通りに出航して天売島を目指しました。この航路からもウトウやケイマフリが数多く見られるのですが、この日はウトウの姿が極端に少なく、かなり遠くまで餌探しに行っていることが想像できました。天売島到着後はあっという間に2000羽ほどにも膨れ上がったウミネコとそのヒナたちを観察しましたが、今年はとにかく暖かかったとのことで例年に比べて巣だったヒナの個体数が多い印象でした。その後は主にノゴマの姿を見るために草原エリアを歩きました。まずは繁殖中のコムクドリのつがいが見られ、その後はいったい何個体いるんだろうかと思ってしまうほどよくさえずっているノゴマを見ながら歩き、最後には真っ赤なベニマシコも見ることができ、夜のウトウ観察に備えて18:00からやや早めの夕食をいただきました。そして19:00からは天売島のメインであるウトウの帰巣風景を観察しに向かいました。この時間は曇ってはいたもののわずかに夕陽が見られ、さらに遠くには利尻富士も見ることができる中、いったいどこから飛んでくるのだろうかと思ってしまうほどのウトウたちが続々と飛んできては地上にある巣に戻ってきていました。ここ数年の傾向としてはウトウの巣立ちがとても早く、この日も巣を出たウトウのヒナを間近に見ることができました。

23日、この日は漁船を使ったクルーズの予定だったためかなり早めに起きて海況をチェックしました。前日は曇りでやや風があり心配していましたが、この日は天気予報が良いほうに外れたようで、空は明るくなってきていてほぼ無風でした。05:30には出航が決まったため2班に分かれ、時間をずらして乗船して赤岩を海上から見るクルーズを行いました。今回からは私はこのクルーズには乗船しない予定でしたが、たまたま1名分の空きが生じたことから乗船してみました。まずとにかく海が穏やかなことは驚きで、天候も次第に良くなってきたことも幸いでした。全体的な印象としては島周辺にいるウトウの個体数が極めて少なく、一方では100羽を超えたと言われているウミガラスが多かったことです。一時は30羽ほどのウミガラスが群れて着水している姿が見られ、10羽程度で飛び回っては断崖にある巣に出入りしている様子も見られました。ケイマフリは例年通りといった感じで、盛んに「ピピピピピッ」と鳴く声は途切れることはなく、断崖にある巣に飛び込んだり、岩礁に止まって求愛する姿も見ることができ、ほかにもウミウ、ヒメウ、ゴマフアザラシなども見られました。そして予定通り天売島を出発して穏やかな海でウトウ、ケイマフリ、ヒメウなどを眺めながら進み、羽幌港到着直前には2羽で浮いているカンムリウミスズメを見ることもできました。そしてここからはこのツアーで最も長い移動となり、まずは昼食を受け取ってから再度出発し、道の駅でまずは休憩、その後は再度休憩を挟んで遠くに見事な景観を誇る十勝岳が見えてくるといよいよ白金温泉が近づいてきます。この日は予報に反して好天でかなり蒸し暑い白金温泉に到着。一旦お部屋に入っていただいてから再度ご集合いただき周辺を探鳥しました。まずは木々に止まるアオバトの群れを観察し、周辺を飛び回っているアオバトもいくつか見られました。周辺を歩くと電線にはニュウナイスズメのオスが止まり、針葉樹に止まっているヒガラの幼鳥、さらにはハシブトガラも見られ、キビタキやオオルリのさえずりも聞こえていました。夕方にはアオバトの群れが次々に飛んできては川の下流方面に飛んで行く姿が見られました。

24日、この日はこのツアーの大きな目的の一つであるギンザンマシコを探しに行くため早朝にホテルを出発しました。外はすっかり明るくなっていて天気予報では曇りとのことでしたが、思った以上に天気は良く、一部に青空も見えていました。探鳥地に向かうために乗車しなくてはならない旭岳ロープウェイは夏シーズンになると始発が08:00から06:30に変わります。我々のツアーでは気温が上がり陽炎が立ってくるとギンザンマシコがクリアに見られなくなること、また観光客が増える前に現地に行きたいといった思惑から始発が06:30になるタイミングに合わせてツアー企画することにしており、まさにこの日から始発が06:30になるため、それに乗車するために早めにホテルを出発しているのです。バスが進むにつれて見えてくる旭岳は幸いにも霧が立ち込めている様子はなく、むしろどんどん天気が良くなってきているように見えました。到着した山麓駅から予定通り06:30のロープウェイに乗ってひとまず姿見駅を目指しましたが幸いなことに遠くの山々、そして眼下には旭川の市内まで見渡せるような最高の条件でした。ここからはまだまだ一部に雪が残る道を歩いて第三展望台に向かうことにしました。途中、キバナシャクナゲやエゾノツガザクラといった可憐な花々が見られ高山帯の雰囲気を感じることができました。そして07:00前から探鳥開始となりましたが、この日は視界良好で無風、これといった寒さを感じることなく過ごすことができ、早速、2羽のメスが間近に飛んできたかと思うと、真っ赤なオスが間近にあるハイマツに止まり、いきなり大チャンスがやってきたかと思うと、その後もギンザンマシコの出現は続き、メス個体は入れ代わり立ち代わりといった感じで、手が届くような位置にあるハイマツに止まってじっくりとその姿を見せてくれました。また周辺ではノゴマ、カヤクグリ、ルリビタキ、ビンズイも見られ、最後にはノゴマが間近にあるハイマツに止まってさえずってくれました。

過去、それほど好天が続くイメージがないこの時期の道北ですが、今回は4日間を通して概ね天候が良く幸いでした。また毎年のように寒さを感じるサロベツ、天売島、旭岳では寒さはおろか汗ばむような時間帯もあり驚きでした。持参した冬用のウェアの登場が全くなかったことも印象に残ったツアーでした。道北の原生花園ではツメナガセキレイをじっくり見ることができ、久しぶりにマキノセンニュウに出会えたことは成果でした。またオオジシギのディスプレイフライトは見事で、オオジュリン、ベニマシコ、コヨシキリ、ノビタキ、ホオアカ、アカエリカイツブリといった常連も健在でした。天売島では夕景の中でウトウの帰巣風景を観察することができ、漁船からのクルーズではウミガラスを良い条件の中で見ることができたほか、ウトウ、ケイマフリもたっぷりと観察することができました。またこのツアーの目玉でもあるギンザンマシコは条件次第といった感がある中、今回は最高の条件で観察することができ、真っ赤なオス、若草色と灰色のグラデーションが美しいメスも間近に見ることができました。北海道はバードウォッチャーにとって魅力的な場所です。季節が変われば目的となる鳥も変わり何度訪れても新たな出会いや感動があり飽きることがありません。またの機会にぜひ北海道にお出かけください。この度はご参加いただきましてありがとうございました。

石田光史

マキノセンニュウ 撮影:山本修一様

 

ウミガラス 撮影:中澤均様

 

ギンザンマシコ 撮影:山本修一様

 

ツメナガセキレイ 撮影:中澤均様

 

コムクドリ 撮影:山本修一様

 

ノゴマ 撮影:中澤均様

 

ギンザンマシコ 撮影:山本修一様

 

ケイマフリ 撮影:中澤均様

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