【ツアー報告】絶景の立山 ライチョウの親子に会いたい!2023年7月21日~23日

(写真:ライチョウの親子 撮影:IH様)

ちょうど関東地方が梅雨明けするタイミングに合わせるように出発することになったこの夏の立山室堂ツアー。とはいえ今年は早くも5月から真夏日があるなどとにかく暑く、7月にもなると本州では出かけられる探鳥地も限られてきています。そんな中、やはりどうしても外せないのが標高2450mの涼しい室堂に出かけて観察する国の特別天然記念物ライチョウでしょう。さらにこの時期はちょうど可愛らしいヒナたちを連れた親子に出会う確率が高い時期です。ライチョウはこの立山室堂のほか、乗鞍高原の畳平でもツアー企画していますが、畳平は晴天時にはなかなか出会うことができないというライチョウ特有のマイナス要素があるものの、ここ室堂のライチョウは天候に左右されない印象があり、過去、毎回、可愛らしい親子連れのライチョウに出会っています。ただ現地はマイカー規制がされているため室堂に行くには何度も何度も乗り換えをしなくてはならず、特に荷物が多い我々にはなにかと面倒です。そのためツアーでは専用バスを利用して富山駅から直接室堂まで行くことができるようにし、また天候の急変などの場合、専用バスであれば好きな時間に移動できるため、危険回避の面からも何かと便利です。天候の急変や濃霧、雷などが多い場所のため、今年も出発前から天気予報を随時見ていましたが、今回は3日間ともに晴れマークが並ぶ珍しい状況の中で出発することができました。

21日、快晴ではなかったものの早朝から真夏のような暑さの東京駅を予定通りに出発して富山駅に向かいました。週末ということもあって東京駅の新幹線ホームはかなりの混雑でもうコロナの頃の面影は全くありませんでした。途中、車窓からは快晴の中、信州の景色を楽しむことができ到着した富山駅もほぼ快晴で強烈な日差しと暑さが厳しく感じるほどでした。ご集合いただいた後は資料を配布してからバスにご乗車いただき、この日の宿泊地である標高2300ⅿの弥陀ヶ原を目指して出発しました。途中、昼食の時間をとるため道の駅あるぺん村に立ち寄って各自、昼食をとっていただき、その後はいよいよ弥陀ヶ原に向けてバスを進めました。この時点では室堂方面には黒い雲がかかってはいましたが、現地の天気予報は晴れのち曇りとのことでした。立山駅を過ぎるとバスは立山有料道路に入り、ここからバスはグイグイ山道を登り、我々が通ってきた道が眼下に見えます。ただその後は次第に霧が発生してきてしまい称名滝は見えず、そして美女平からは本格的な濃霧に包まれてきてしまいました。ただ弥陀ヶ原が近づいてくると次第に視界が開けてきて我々がお世話になる宿も見える状況になってきました。そして宿に到着後はロビーをお借りして観察機材の準備をしていただき、再度バスにて出発して室堂に向かいました。天狗平からはさらに視界は広がり、なんとか雄山が望める状況でした。室堂駐車場では乱舞するイワツバメが見られ、室堂平に出ると快晴ではなかったものの視界は十分で観察には問題ない状況でした。この日は時間がそれほどないことから主に室堂平からみくりが池周辺のみで探鳥することにして歩き出しました。なかなかの人出の中を歩きだすと残念ながら雄山は見えなくなってしまったものの視界は良好。今年は季節の進みが2週間ほど早いとのことで足元に咲いている花々はやや少ない感じがしましたが、それでも各所でチングルマやイワカガミ、ハクサンイチゲ、ヨツバシオガマなどが咲いていました。現地まで来てまず驚いたのがホシガラスが乱舞していたことです。ホシガラスは秋には見やすくなるものの夏季はあまり目立たず、それほどしっかりと観察した記憶がないのですが、この日は我々の目前を数羽のホシガラスが飛んでいて、どうやら早くも貯食行動をしているようでした。そして眼下の斜面に目をやると幸いなことにヒナを連れたライチョウのメスが歩いていました。どうやらヒナは6羽いるようでけっこうな斜面の岩場を歩き回っていました。そしてメスがしゃがみ込むとヒナたちは一斉にメスの腹の下に隠れるライチョウらしい行動も見せてくれ、またそこから一斉に出てきては歩き回るといった行動を見せてくれました。時間が過ぎたことからこの後はさらに別の親子を探してみることにしました。霧雨が降り出す中、一旦、室堂平を歩くと、ここでまたまた岩場でじっとしているライチョウのメスがいました。ヒナの姿がないことからどうしたことかと思いましたが、しばらく観察しているとメスの腹の下からヒナが次々に出てきて周辺を歩きはじめました。結局、この親子は我々が歩いてきた遊歩道を横切って反対側の草原に移動していき、その後は姿がかなり遠くなったことからここでこの日の探鳥を終えました。

22日、この日は午後から雨の予報が出ていましたが早朝は見事な快晴。ひとまず05:30から宿周辺を歩いて探鳥しました。早くも周辺からはウグイス、アカハラ、クロジのさえずりが聞こえ、宿前の枯れ木ではウグイスがてっぺんに止まってさえずっていました。道を進むと枯れ木にモズが止まり道端をアカハラが歩き回っていました。しばらく観察していると今度はクロジのオスもやってきて道端で餌を探していました。さらには突然、ホトトギスのさえずりが聞こえたことから見てみると針葉樹に止まってさえずっているホトトギスがいたことから珍しく望遠鏡を使って観察することもできました。戻ってくる途中では何度となくウソが姿を見せ、宿前でさえずっているクロジを観察しているとジョウビタキの声がしたことから見てみるとメスの幼鳥と思われる個体を見ることができました。ジョウビタキは冬鳥ですが、最近では長野県各地で繁殖が記録されていますが富山県で観察したのは初めてでした。07:00から朝食をいただき08:00に出発してこの日も室堂に向かいました。この日は前日よりもやや天気が良い中、まずは室堂平をまっすぐ突っ切って昨日、ライチョウの親子を観察した場所を通ってみました。足元にはこの日はタテヤマリンドウが数多く咲き、青いミヤマリンドウの花も咲いていました。ただこの日はライチョウの姿はなく、そのまま進みましたがこの日はここでもライチョウの姿がないため、そのままみくりが池温泉に向かいました。途中、ハイマツに止まってさえずるカヤクグリ、ウソが見られ、足元にはイワギキョウの花が咲いていました。みくりが池が一望できる場所まで来ると、昨日見たライチョウの親子と思われる個体が斜面にはりつくようにたたずんでいました。そのためしばらく観察を続けているとこの親子はみるみる近づいてきて最後は我々の真下を通過して反対側の斜面の草むらに消えていきました。その後は一旦、みくりが池温泉で休憩を取ることにし、その間にもウソが間近にやってきて楽しませてくれました。その後はさらに進むと、ここでまた別のライチョウの親子に出会うことができ、距離はあったものの親子で湖畔を歩く様子を見ることができました。さらに歩くと間近のハイマツの中に動くものがいたことからやや距離をとってみていると、中から夏季には見ることが難しいライチョウのオスが出てきてくれました。さらにここではまた別のライチョウの親子も見ることができ、親子で砂浴びをする様子をじっくりと観察してから一旦、みくりが池温泉まで戻りました。ここでは飛び交うホシガラスが見られましたが、驚いたことにここでも斜面を歩くオスのライチョウを見ることができました。その後は立山自然保護センターに立ち寄って「ライチョウステッカー」を受け取ってから宿に戻って昼食の時間とし、その後は1時間ほどの休憩を挟んで15:15からは宿に滞在しているガイドさんと共に弥陀ヶ原を歩くツアーに全員で参加しました。ここでは間近に咲いているワレモコウ、テガタチドリ、タテヤマウツボグサなどを見ながら、弥陀ヶ原特有の地形の解説や池塘を見ながら木道を歩きました。結果的には予定よりも歩き、ワタスゲが咲き乱れる池塘付近まで行ってから来た道を戻りましたが、この頃からは日差しが強くなったこともあって一気に蒸し暑くなってきました。それに合わせるかのようにタテヤマリンドウやチングルマが美しく見えていました。

23日、深夜に雨が降ったのか、各所に水溜まりはあるものの、結果的にはこの日が最も快晴に近い朝になりました。05:30に外に出ると早くも周辺からはウグイス、アカハラ、クロジのさえずりが聞こえ、この日はカッコウの声も聞こえていました。道を歩いて行くとアカハラのさえずりが眼下から聞こえてきていたことから見てみると、針葉樹のてっぺんでさえずっている姿をじっくりと見ることができました。そしてさらに歩くとこの日もクロジが道を横切っていく姿が見られ、さらに進むと珍しく枯れ木のてっぺんでさえずるメボソムシクイが見られました。するとここでルリビタキのさえずりが聞こえたことから探してみると針葉樹の横枝でさえずっている青いルリビタキがいたことから望遠鏡を使ってしばらくの間、観察することができました。また戻る途中ではようやくさえずっているクロジが見られたほか、ヒガラも見ることができました。この日も07:00から朝食をいただき08:00に出発して室堂に向かいました。この日の室堂はようやく訪れた快晴で雄山が見事な景観に映え、遠くには剣岳も見えていました。この日もみくりが池でライチョウの親子に出会うことができ、一旦、みくりが池温泉で休憩をとってからさらに進んでみました。ここからはさらに歩いて雷鳥沢方面に向かい、周辺を探してみましたがライチョウほか、野鳥の気配はありませんでした。ただここではようやくチングルマ、ヨツバシオガマの美しい群落が見られました。その後は来た道を戻ることにし、さきほど見たライチョウの親子がやや近い距離にいたことから観察することにしました。この日も昨日と同じ斜面を歩きながら砂浴びをしたり、雪渓を歩きまわる姿を観察することができました。その後はさらに来た道を戻るとみくりが池の斜面で初日に見た親子と思われるライチョウの親子に出会うことができ、観察しているとさきほど見た親子もやってきて、驚いたことに同時に2つの親子を観察するという過去に経験したことがない光景を見ることができ、結果的には3日間を通して毎日、ライチョウの親子を観察することができました。

今年の夏の立山ツアーは最近では珍しく3日間ともに青空が見える中で探鳥することができ、ほぼ思った通りのスケジュールで過ごせたことは幸いとしか言いようがありませんでした。歩くことは疲れるのですが、こういった状況の中で室堂を歩き探鳥ができたことはラッキーだったと思っていただければ幸いです。このツアーの主役であるライチョウの親子は3日間共に見ることができ、今年は3日間で3つの親子に出会うことができ、同時に複数のライチョウの親子を観察するという初めての経験ができました。また夏季にはほぼ見ることができないオス個体にも2度出会う幸運があったことも印象的でした。今回出会ったたくさんのヒナたちが順調に育ってほしいと思いました。ほかにも弥陀ヶ原ではアカハラ、ルリビタキ、ホトトギス、メボソムシクイ、クロジ、ヒガラなどが見られ、必ずしもベストではなかったですが、チングルマやイワカガミ、ハクサンイチゲ、ヨツバシオガマ、タテヤマリンドウ、ミヤマリンドウ、イワギキョウなどの花々も見事でした。この度はご参加いただきましてありがとうございました。次回は冬羽が残るライチョウの姿を求めて雪原の室堂にぜひお出かけください。

石田光史

ウソ 撮影:坂東俊輝様

 

ライチョウの親子 撮影:IH様

 

カヤクグリ 撮影:坂東俊輝様

 

ライチョウ 撮影:IH様

 

ホシガラス 撮影:坂東俊輝様

 

ライチョウの親子 撮影:坂東俊輝様

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