【ツアー報告】初夏の戸隠高原ハイキング 2025年5月16日~17日

(写真:クロツグミ 撮影:山尾文明様)

思い起こせば20年ほど前に私が初めてバードガイドのお手伝いという形で訪れたのがこの戸隠高原でした。その後、担当を引き継いでから15年ほどが経ち、秋のみの企画だったツアーを春も企画するようになって10年ほどが経ちました。私的な感覚ではありますが、数多くある国内の探鳥地の中でも特に好きな場所で、若いころからかなりの日数通い続けています。そのせいか特に得意な場所になりつつあり、毎回訪れるのが楽しみな場所でもあります。初夏の戸隠高原の特長といえばとにかく可愛らしい小鳥類が多く、また見やすいことでしょう。特に目立つのがキビタキとコサメビタキでクロツグミとの出会いの確率が高いことも忘れてはいけません。ほかにも、ニュウナイスズメ、サンショウクイ、アオジ、ノジコ、コルリ、ミソサザイ、また留鳥のコガラやエナガ、キバシリ、アカゲラ、オオアカゲラ、ゴジュウカラなどが存分に楽しませてくれます。珍鳥と呼ばれる種に出会う確率は極めて低いものの、美しい風景と野鳥、そして花々に囲まれる2日間はまさにバードウォッチングの醍醐味が凝縮されているといっても過言ではないでしょう。この時期の戸隠高原は本来であれば涼しいのですが、ここ数日は気温が高い日が続いていて、悪いことに16日後半から17日午前中にかけては天気がかなり悪いとの予報が出ていました。

16日、ここ数日、東北地方を中心に気温が極めて高い日が続き、東京都内も最高気温が25℃と初夏のような陽気でした。この日の東京都内も気温が早々に20℃を超える中、予定通り東京駅を出発して長野駅に向かいました。途中、車窓から外を見ていましたが、空にはやや雲が多かったもののまだまだ雨の心配はないようで、到着した長野駅は例年に比べると暑く感じました。お客様と合流後は資料を配布してからバスに乗車していただき、まずは今回お世話になるホテルに向かいました。途中、飯綱高原からバードラインを通って戸隠高原に向かう道は瑞々しい新緑が美しく、さらに標高を上げて中社を過ぎたころからは、いつもよりやや多いかなといった残雪がある戸隠連山の風景が出迎えてくれました。ホテル到着後は一旦、お部屋に入っていただき各自昼食、そして観察機材の準備をしていただいてから再度バスにて出発しました。翌日の天気予報がかなり悪かったことから、さまざま考えていましたが、直前に天気予報を見るとさらに予報が悪くなっていて、傘を差した状態での木道での探鳥は不可能と判断し、この日は木道エリアで多くの時間を費やすことにしました。まずは湖面を見ると、カルガモ、カイツブリといった顔ぶれに混ざり、渡り中と思われるコガモの姿があり、その後は小道に入ってみました。付近ではウグイスがさえずり、森の奥からはクロツグミのさえずりも聞こえていました。ただ距離があるため姿を見ることはできず、さらに奥に進みました。ここでは周囲からコサメビタキの声が聞こえ、横枝にじっつと止まっていた個体がいたことから思いのほかじっくりと観察することができました。道を戻ると頭上にサンショウクイがやってきて止まりましたが、かなり高い木だったことからしっかりと観察することはできませんでした。14:30を過ぎ、そろそろ観光客も減ってくる時間になったため移動し、まずはトガクシショウマの花を見てから、渡り中と思われるキンクロハジロのつがい、そしてカイツブリのつがいも見られました。さらに進むとちょうどよい横枝でクロツグミがさえずり出したことから、たっぷり時間をとって観察することができ、観察中にはオオアカゲラのオスがやってきたことから一気に2種を観察することができました。さらには周囲でキバシリが騒いでいたことから見てみると、2羽、3羽、4羽と見ることができ、巣立ったばかりのヒナに親鳥が餌を運んでいるようでした。さらに進むと樹液をなめているアオゲラに出会い、ここでは地上採食しているアカハラ、さらにはゴジュウカラが間近にやってきてくれ、樹上に苔を使って芸術的な巣を作っているコサメビタキにも出会うことができ、望遠鏡を使って巣の精密なつくりを見ることができました。木道に入ると季節がやや遅れているのか、意外にもミズバショウが見ごろを迎えていて、ここでは湿地に降りて餌を探しているアカゲラ、アカハラが見られ、さえずってはいなかったもののキビタキにも出会うことができました。そして最後は川沿いまで歩いて、枯れ木に止まってさえずっているミソサザイをじっくり観察し、さらに戸隠では普通種ながらここまで出会うことができていなかったアオジが、ちょうどよい高さの横枝でさえずってくれたことからじっくりと観察することができました。そしてバスに戻る直前には広場の地上に降りて餌を探している3羽のアカハラを見て、この日の探鳥を終えました。ホテルに戻ってからは18:30から夕食をいただきましたが、夕食後にはとうとう雨が降り出してしまいました。

17日、この日はそもそもかなり天気予報が悪かったことから覚悟はしていましたが、早朝からかなりの雨音が聞こえてきていて霧も濃く、06:00から予定していた早朝探鳥は中止し、ひとまず08:00から朝食をいただくことにしました。この時点でも雨はかなり激しく、霧もより濃くなっていてやや風もでてきた感じで、探鳥はおろか、外に出ることも厳しい状況でした。そのためひとまず出発を10:00にして再度状況を見ることにしました。その後、10:00にご集合いただいたものの雨の降り方はさらに激しくまっていたことから、そのまま待機していただくことにしました。結果的には天気予報はさらに悪くなり、午前中は無理と判断して12:00から早めに昼食をいただき、午後には雨が上がるとのことで12:45から探鳥を再開しました。出発時はまだまだ小雨が落ちてはいましたがかなり回復した印象でした。残りの時間はどこに行こうかと考えましたが、結果的にはコルリやノジコが見られていないこともあって探してみました。まだまだ小雨が降っていましたが、土曜日とあってなかなかの混雑でにぎやかでしたが、雨のせいか鳥の動きは賑やかではありませんでした。ただ、昨日見たコサメビタキはこの日も巣作り中なのか、巣に出入りしていて、ゴジュウカラが間近にやってきてくれました。木道に入ると遠くからミソサザイの声が聞こえ、足を止めるとの日も間近にキバシリがやってきたかと思うと、ここでも巣立ったばかりにヒナに親鳥がせっせと餌を運ぶ様子を見ることができました。また付近ではイカルのさえずりが聞こえ、木に止まっている姿を見ることができ、せっせと巣穴を掘っているコガラのつがいも見ることができました。さらに歩くと高い針葉樹のてっぺんで浪々とさえずっているクロツグミをじっくり見ることができました。その後は木道から奥の小道に行ってみましたが、残念ながらコルリの気配はなく、その後は隋神門を経由して参道を歩いて戻りました。途中ではアオゲラが飛んできて白樺にじっと止まっていたことから望遠鏡を使って観察することができ、その後はニュウナイスズメ、最後はみどりが池でキンクロハジロ、カイツブリ、付近でさえずっているアオジをたっぷり見てこの日の探鳥を終えました。ふと気が付くとようやく雨が上がっていました。

今回は初日はなかなか良いスタートでしたが、天気予報が悪いほうに当たってしまい、深夜からの雨が2日目の午前中まで残り、しかもかなりの降り方だったことから結果的には重要と考えていた早朝探鳥ができず、2日目は午後のみの短時間の探鳥になってしまいました。全体的には今回はキビタキが少なく、コルリ、ノジコに出会えず少々残念でした。一方で、毎回苦労するクロツグミは非常に良いシーンをたっぷりと見ることができ、キバシリの子育てシーンも印象的でした。またコサメビタキ、コガラの巣作りシーンが見られ、アカゲラ、アオゲラ、オオアカゲラ、アオジ、サンショウクイ、ニュウナイスズメ、アカハラ、ゴジュウカラ、ミソサザイも楽しませてくれました。そして今季は季節の進みが遅いようで、ミズバショウやリュウキンカがちょうど見ごろだったことは印象的でした。この度はご参加いただきましてありがとうございました。

石田光史

キバシリ 撮影:鶴田美津子様

 

イカル 撮影:坂東俊輝様

 

アカゲラ 撮影:山尾文明様

 

アオゲラ 撮影:鶴田美津子様

 

アカハラ 撮影:坂東俊輝様

 

キバシリ 撮影:山尾文明様

 

オオアカゲラ 撮影:鶴田美津子様

 

ゴジュウカラ 撮影:坂東俊輝様

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