【ツアー報告】初夏の上高地と乗鞍畳平ハイキング 2017年6月4日~6日

(写真:コマドリ 撮影:佐藤幹夫様)

森林に生息する小鳥たちが繁殖を終えてしまうこの時期は、鳥たちのさえずりがなくなり、森が薄暗くなってしまうため小鳥たちが見づらくなってしまいます。そのためこの季節は亜高山帯から高山帯を中心にした探鳥がベストシーズンとなります。今回は初夏の定番コースとなっている乗鞍エリアのハイキングツアーに出かけました。このエリアでは狭い範囲の中でさまざまな野鳥たちが楽しめるため、3日間で乗鞍高原、畳平、上高地を巡ることができます。ハイキングツアーのため天候が重要ですが、今回は幸いにも梅雨入り直前の好天に恵まれることができました。

 4日、この日は新宿駅を出発後、途中、立川駅、八王子駅で乗車のお客様を加え12:00前に松本駅に到着しました。同駅では西日本から参加いただいたお客様とも合流し、バスで早速乗鞍高原に向かいました。乗鞍高原に到着した後は、一旦宿に入って観察機材を準備し、探鳥ポイントに向かいました。早々にヒガラ、コガラ、メボソムシクイ、エゾムシクイなど亜高山帯の鳥たちのコーラスが聞かれ、珍しく白樺の枝先に出てきて採食しているメボソムシクイの姿を見ることができました。しばらく舗装道を歩くと「ホイ、チーチー」というクロジのさえずりが聞え、探してみると針葉樹の上でクロジが囀っていました。また時よりコマドリやミソサザイ、エゾムシクイの囀りも聞こえましたが遠くから聞こえるのみでした。その後はモズ、ルリビタキ、地上を歩きながら採食しているビンズイなどの姿が見られました。帰り際には「フィッ、フィッ」というウソの声が聞えたため見てみるとオスとメスが並んで針葉樹のてっぺんに止まって可愛らしい姿を見せてくれました。結局この日は突き抜けるような美しい青空と、涼しい高原の風の中で心地よい探鳥ができ、17:00過ぎに宿に戻りました。宿泊は山菜料理と源泉かけ流しの温泉が毎回好評の宿で、温泉は温度はやや低めですが体の芯から温まる温泉で皆様ご満足頂けたのではないでしょうか。

 5日、高原らしいひんやりとした空気の中、05:00から宿周辺で早朝探鳥を行いました。早速、宿周辺で繁殖していると思われるジョウビタキを複数のお客様が観察しました。歩きはじめると沢があることもあり、早くもオオルリのさえずりが聞え、木の梢で歌っている姿を観察することができました。また付近にはオオルリの別個体がいて、この個体はさえずりにアカハラやホオジロの声を混ぜていました。その後は梢で歌っているアカハラの姿を見ることができ、森の中からはキビタキ、コルリのさえずりも聞かれ、昨日は確認できなかったカッコウやジュウイチも姿を見せてくれました。その後は07:30から朝食、その後08:30に出発し、乗鞍岳畳平に向かいました。途中の車窓からは残雪のある穂高連峰の見事な景観を楽しむことができ、まだまだ一部に残る「雪の壁」を見ながら進みました。到着後も幸い好天で、まずは観察機材の準備に取り掛かりましたが、早速、岩の上で休息するライチョウのオス1羽を確認でき、望遠鏡を使って観察することができました。そのため歩いて付近に向かいましたが、その途中ではカヤクグリとイワヒバリも現れ早々に高山帯の鳥達が揃い踏みしてくれました。この観察ポイントピークでは最低3個体のライチョウのオスを観察することができました。続いて一部雪渓が残る歩道を歩きながら次のポイントを目指しました。雪渓上では至近距離でカヤクグリが現れ絶好の被写体になってくれ、またガレ場付近でもイワヒバリが至近距離でモデルになってくれました。ここでは結局4羽のライチョウのオスを確認できましたが、初めて地味な保護色をしているメス1羽を観察する機会にも恵まれました。ただ最近繁殖成功率が極めて低いとの地元保護員のお話が気にかかりました。このポイントでは下山途中でホシガラスが1羽姿を現してくれました。その後は一旦各自昼食をとっていただき、順調に探鳥ができたことから予定よりも1時間近く早く上高地に向かいました。上高地バスターミナル到着後は15:00頃から探鳥に出かけました。河童橋付近ではキセキレイやイカルチドリの姿があり、針葉樹の高木の上からは梓川の流れの音に負けないオオルリのさえずりが響いていました。森の中の小道に入るとエゾムシクイの姿があり、お目当てのコマドリの囀りが所々で聞こえますが、鳴き声は単発で遠くその姿を見ることはできませんでした。ただウグイスは愛想が良く、ソングポストと思われる枝でその美声を響かせてくれました。また帰路にはコサメビタキが数メートルの高さがある針葉樹の横枝で営巣している姿を確認でき、望遠鏡を使って観察することができ、樹皮そっくりの見事な作りの巣には驚かされました。宿泊した宿では地の食材が満載で、山菜や新鮮野菜、川魚、信州牛などバランスのとれた料理が並び、沢山歩いたお客様の疲れを癒す夕食でした。

 6日、この日も快晴の中、朝日を浴びる焼岳を眺めながら05:00に出発してコマドリのポイントを目指しました。昨日と同じコースを辿りましたが早朝は鳥達の囀りが降り注ぐように聞こえていました。ポイントに到着すると早速間近にコマドリのさえずりが聞えたかと思うと、なんと我々から3m程の至近距離の横枝にとまって歌い出しました。双眼鏡でも十分な距離ですが、スコープに入れると画面いっぱいになるくらいに愛らしいコマドリの姿をしかもじっくりと見られるという幸運な時間を過ごすことができました。また周囲には別個体もいて、倒木の上でさえずる個体や低木でさえずる個体など、あちらこちらで歌うコマドリの姿をじっくりと観察することができました。コマドリを堪能した後は一旦宿に戻って朝食をとり、再び08:30に出発して早朝とは別のルートを歩きました。まずは快晴の中で残雪がある涸沢から穂高連峰の素晴らしい眺望を楽しむことができたため、それぞれ記念写真の撮影をし、その後は木道に沿って歩いて行きました。毎回マガモのヒナが見られる湿地帯では今年もマガモがヒナを連れて泳ぎ周り、周囲にはオシドリのつがいの姿もありました。付近ではコサメビタキが巣材を咥えて頻繁に巣に戻り、せっせと巣づくりに励む様子も見ることができました。途中の道端では体に似合わない大声でさえずるミソサザイの姿を堪能したほか、キビタキ、コルリ、コマドリなどのさえずりが響いていました。途中、一旦休憩をとって足休めをしてから再び歩き出しました。戻りのルートではさえずっているオオルリの姿を観察することができたほか、キビタキ、ウグイス、ヒガラ、キセキレイなどの姿を見ながらツアーを締めくくりました。とにかくお天気に恵まれた3日間でした。

 今回のツアーは幸いにも3日間とも好天に恵まれ、ほぼ予定通りの探鳥をすることができました。基本的にはハイキング形式でしたので雨などがあると予定変更をしなくてはならず、思ったような成果が上がらないこともあるのでとにかく幸運でした。乗鞍高原周辺では、オオルリ、キビタキ、カッコウ、ビンズイ、クロジ、畳平では主役のライチョウの姿のほか、イワヒバリ、カヤクグリも思った以上に観察することができました。そして上高地ではとにかくコマドリの姿をと思っていましたので、予想以上の成果に嬉しく思いました。コマドリ、オオルリ、ウグイスの「日本三鳴鳥」が揃って見られるという恒例のハイキングツアー。たくさん歩いていただきお疲れだったと思います。この度はご参加いただきありがとうございました。

 石田光史

ライチョウ 撮影:佐藤幹夫様

 

イワヒバリ 撮影:佐藤幹夫様

 

カヤクグリ 撮影:佐藤幹夫様

 

クロジ 撮影:佐藤幹夫様

 

カッコウ 撮影:佐藤幹夫様

関連記事

ページ上部へ戻る