【ツアー報告】初夏の知床沖・根室沖クルーズと羅臼のシマフクロウ 2018年5月25日~27日

(写真:エトピリカ 撮影:海老原美夫様)

初夏恒例の道東ツアーは主に海の生き物とシマフクロウにスポットを当てて企画したこのWクルーズツアーが定番です。この時期は知床沖に突如現れるハシボソミズナギドリの大群やヒレアシシギ類の群れ、そして圧倒されるような迫力のシャチ、そして根室沖の落石クルーズの主役は夏羽のエトピリカとケイマフリです。ほかにも毎回のようにラッコの姿も見られているため、この2つのクルーズに乗船することで道東のさまざまな海の生き物が楽しめます。ほかにもシマフクロウ、そして花々の時期にはまだ早いもののタンチョウ、ノゴマ、ベニマシコといった原生花園に生息する野鳥たちも楽しみます。今回はやや不安定という天気予報が出ていましたが、海況は良いとのことでクルーズには問題ない状況での出発となりました。

25日、羽田空港をやや遅れて出発したことから20分ほど遅れて中標津空港に到着。到着後は空港内にて観察機材準備をしてからバスにて羅臼町に向かいました。到着した中標津町は曇り空ながら、所々青空が見えていました。この日は知床沖でのクルーズに乗船する予定でしたが、早々に船長から連絡をいただき海況は良いとのことでした。ここ数日の知床沖は安定してシャチが見られており、全長20mもあるナガスクジラの出現もあるとのことで楽しみでした。ただ羅臼町に近づくにつれて黒い雲が張り出し、到着直前には雨が降り出してしまいました。到着後はクルーズ船に乗船してまだまだ降り続く雨の中、出港しました。まずは直前まで見られていたシャチの姿を探し、幸い巨大な背びれが特徴のオス個体を2頭見ることができ、そのうち1個体は船のすぐ脇を悠々と泳ぎ、間近にその迫力ある姿を堪能することができました。またイシイルカがシャチと共に泳ぎ、独特のしぶきを上げる高速の泳ぎを見せてくれました。また後半にはやや沖に出て海鳥たちを探し、それほど大きくはないもののハシボソミズナギドリの群れ、そしてフルマカモメ、アカエリヒレアシシギの群れ、ウトウなどを見ることができました。船には屋根があることから雨は避けられましたが、結局雨が止むことがない中でのクルーズでした。クルーズ後は急いでホテルに向かい、一旦お部屋に入っていただきましたがこの日はこれで終了ではなく、シマフクロウ観察が待っています。ここ数日はあまり早い時間に現れてはいないものの、何があるかわからないので日没よりも早く観察準備を終えたいと思い早めにホテルを出発しました。到着後はひとまず観察準備と夕食を平行して進めていましたが、驚いたことにまだまだ明るい時間にシマフクロウがやってきました。あまりに明るいため驚きましたが比較的ゆっくりしていてくれたことから思いのほか長時間に及ぶ観察をすることができました。ただ結局この日シマフクロウが現れたのは1度だけでした。

26日、前日の観察が深夜に及んだことから、この日は早朝のプログラムはなく07:00から朝食をいただき08:00に出発しました。空は曇りベースながら青空が見えてきていました。峠に向かいバスを進めましたが次第に霧が発生しはじめ残念ながら深い濃霧で視界はなく、気温は1℃でした。霧が晴れそうな状況ではなかったためそのまま戻り、港でオジロワシ、スズガモ、シノリガモなどを見てから一旦道の駅にて時間をとり、その後は代表的な探鳥地を巡りながら根室に向かいました。まずはキタキツネやエゾシカを見ながら進み途中の海岸ではクロガモ、ウミアイサ、アビ、また湿地帯では渡り途中と思われるシギ類が多く見られました。30羽ほどのトウネンの群れが飛び交い、よく見るとキアシシギ、キョウジョシギ、メダイチドリの姿もあり、ヒドリガモの群れも採食していました。ネイチャーセンター前では50羽ほどのウミアイサの群れが潜水採食していました。ただ強風だったせいか草原では小鳥たちの声は少なく、僅かにノゴマ、ノビタキ、アオジ、そしてオオジシギの声が聞こえる程度でした。一旦昼食をとった後は次の場所に向かいました。ここではどっしりと構えるオジロワシを間近に観察し、小雨模様になる中、タンチョウ、ベニマシコを見ることができました。ただ雨が強くなってきたこと、小鳥の動きが悪いことから予定を早めて根室に向かうことにしました。根室では優雅に佇む3羽のタンチョウ、針葉樹に止まるオジロワシが見られ、最後に訪れた場所では真っ赤なベニマシコが出迎えてくれ、ほかにもさえずるヒガラやセンダイムシクイ、地上で餌を探しているベニマシコのメスやアオジの姿がありました。ただノゴマの姿が見られなかったことから明日のお楽しみとなりました。

27日、昨日、小鳥たちが今一つ見られなかったことから早朝にホテルを出て公園に向かいました。幸い天気は回復して青空が広がっていました。到着すると早速ノゴマのさえずりが聞えたことから探してみると、オスが喉のルビー色を震わせてさえずっていました。またベニマシコもこの日はよくさえずっていてソングポストと思われる枯れ枝によく止まっていて、見上げるとオオジシギがディスプレイフライトを繰り返していました。坂を下っていくと珍しくセンダイムシクイがじっと止まってさえずり、周辺ではノビタキ、ノゴマ、ベニマシコ、そしてカッコウが盛んにさえずっていました。そして帰り間際にはシロハラゴジュウカラがじっと横枝に止まって「フィッ、フィッ、フィッ」と歌ったり羽繕いをしたりしていました。一旦ホテルに戻って朝食をいただいた後は、落石クルーズ乗船のため落石港に向かいました。やや風が出てきて心配でしたが海上は意外にも穏やかでベタ凪に近い中での出港となりました。空は青空が広がりアマツバメがスイスイと飛び、まずは定番の夏羽のウトウ、さらには主役の一つである夏羽のケイマフリが現れてくれ、求愛行動も見せてくれました。またこのクルーズの人気者であるラッコが泳ぐ様子もしっかり見ることができました。そしてようやく主役の夏羽のエトピリカに出会うこともできました。また驚いたことに完璧な夏羽ではないもののツノメドリも現れてくれました。本来、非常に警戒心が強く、一旦潜水してしまうとほとんどの場合、追いきれないのですが、この個体は潜水はするものの何度も何度も浮上してくれたのでしっかりとその姿を観察することができました。ツアーにクルーズを組み込むことはなかなか勇気がいるのですが、こういった予想外の出会いがあるため面白いものです。この日は幸いにも穏やかな中で2時間強のクルーズを終えることができ空港に向いました。

今回は知床沖のクルーズが雨の中となりご苦労おかけいたしました。ただ翌日は1便以降欠航だったとのことでひとまずシャチやイシイルカ、海鳥たちに出会うことができ安堵しました。またシマフクロウやエトピリカ、ツノメドリ、タンチョウ、オジロワシ、ラッコにも出会うことができ、小鳥類にはやや苦労しましたがノゴマ、ベニマシコ、オオジュリン、ノビタキ、カッコウといった常連組が出揃ってくれました。今回主役とした海の生き物たちに関しましては冬季にも同様のクルーズを行っておりますのでぜひ季節を変えてご乗船いただけましたら幸いです。この度はご参加いただきましてありがとうございました。

石田光史

ツノメドリ 撮影:富川誠様

 

ウトウ 撮影:海老原美夫様

 

シマフクロウ 撮影:富川誠様

 

ケイマフリ 撮影:海老原美夫様

 

シャチ 撮影:富川誠様

 

オジロワシ 撮影:富川誠様

 

センダイムシクイ 撮影:富川誠様

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