【ツアー報告】渡り鳥の中継地 秋の粟島 2018年10月13日~15日

(写真:ムギマキ 撮影:宅間保隆様)

バードウォッチングにはさまざまな楽しみ方がありますが、春と秋の渡りの時期にはまさに今、海上を渡っている野鳥たちに出会うため、彼らの休憩所のような役割を果たしている離島に向かうことはすっかり定番になっています。春のツアーではすっかりおなじみになっているこの粟島は、飛島や佐渡、舳倉島と同様に日本海側にある渡り鳥の中継地として知られていて、過去にはさまざまな珍鳥に出会っているほか、一足先に冬鳥たちに出会うことができ、その年の冬の鳥の状況を占ううえでも楽しみな島です。ただ、探鳥ポイントの多くが狭い畑であり、またどの道もほぼ小道のような狭さで作業をしている地元の方もいらっしゃいます。そのため我々は6名様限定という、ほかに例がない超少人数ツアーでこの島に向かいます。今回は出発前日がかなり天気も海も荒れたようでしたが出発当日は次第に天候が回復するタイミングになりました。

13日、島に渡る定期船のスケジュールに合わせるため、早朝の新幹線で東京駅を出発してまずは新潟駅に向かいました。出発の頃はまだ空は曇り空でしたが新潟駅で乗り継ぎする頃には空は明るくなってきていました。新潟駅からは特急で村上駅まで移動し、ここから粟島に向かう定期船乗り場に移動。チケット配布後は高速船に乗船しました。海を眺めると穏やかな印象だったため安堵しましたが、船員の方から「今日はまだうねりが残っていて揺れますよ」と言われて驚きました。乗船後は外部デッキに移動しましたが、出発後はいきなり大きなうねりが連続して起こり、結局到着するまでこのうねりの中でした。下船後は港まで迎えにきてくださった宿の車に乗り込んで宿に移動しました。この時点でまだお昼まで1時間ほどあったことから、まずは付近にあるポイントまで探鳥に出かけました。鳥の気配はあまりありませんでしたが、付近に林ではキマユムシクイが機敏に動きながら餌を探し、木の実を食べるエゾビタキの姿もありました。またこの時期恒例ともいえるジョウビタキがかなりの数見られました。一旦、宿で昼食をいただいた後は島の北部に向かいました。ここでは各所にジョウビタキが見られ、草むらからはカシラダカが飛び立ちました。また木の実のある場所からは絶えず「ツィー」という大型ツグミ類の声が聞こえていました。その後、この日の最後はカキの実に群れるシロハラのほか、畑から飛び立ったミヤマホオジロのオスがじっくりとその姿を楽しませてくれました。夕方にはモズの声が響き、渡ってきたばかりなのか、ツグミの群れが飛び交っていました。

14日、青空が広がる中、早朝06:30からまずは宿付近を歩きました。この日は昨日、あれだけいたジョウビタキはほとんど見られず、変わって小さなムシクイ類があちらこちらの木で餌を探していました。一見するとメボソムシクイですがその声は「ジッ」とか「ジジッ、ジジッ」と聞こえるためオオムシクイのようです。宿からわずかな距離の木に複数個体がいて、ほとんど歩くことができないほど時間を使って観察しました。また別のポイントでは電線にビンズイが止まって尾を振り、草むらからは無数のアオジ、カシラダカの声がする中、1羽のコホオアカが草に止まってくれました。一旦朝食をいただいた後は別のポイントに向かい、この日はまず展望台に行ってみました。天気がよいせいか展望台からの眺めは良く、眼下をヒヨドリの群れが飛翔し、遠くの枯れ木には小鳥を狙っているのか、ハヤブサが止まっていました。この日は各所でムシクイ類が多く、ある場所では一本の木に4羽のオオムシクイと思われる個体が見られ、中には「ギュィ、ギュィ」と鳴くメボソムシクイと思われる個体もいました。草原ではジョウビタキに変わってノビタキの姿があり、上空を飛翔するチゴハヤブサも見られました。このほか、コサメビタキやアトリ、ハクセキレイなどを見て一旦、昼食のため宿に戻りました。午後からは付近のカキの木に向かい、カキの実を食べにやってくる大型ツグミ類を観察しました。見ていると入れ代わり立ち代わりやってきていて、ほとんどがシロハラとツグミですが、その中にマミチャジナイ、そして驚いたことにクロツグミの姿もありました。また付近には2羽のミヤマホオジロのオスがいて、時折飛んではススキやカキの木に止まってくれました。そして最後はやや時間があったことから再び別のポイントに向かいました。岩礁海岸では長い竹の棒を持ったタコ捕りをする人たちの姿があり、島だからこその風景が見られました。牧平ではノビタキが3羽に増え、アオジ、カシラダカも見られました。突然、雨に降られる場面もありましたが雨宿り後には美しい虹を見ることができました。

15日、この日もやや雲はありものの概ね天気が良い中、06:30から付近を歩きました。この日はジョウビタキもムシクイ類もほぼ見られない中、まずは電線に5羽のアトリが止まってその姿を楽しませてくれました。畑からはカシラダカの小群が飛び立ち、草むらからはかなりの数のアオジの声が聞こえ、この日は1羽のノジコが草に止まってくれました。カキの木には相変わらずシロハラやツグミの姿がありましたが、クロツグミは警戒心が強いのかチラッと姿を見せただけでした。一旦朝食に戻った後は、この日も別のポイントに移動しました。この日は島の北部はかなりどんよりとしていて霧雨が降る中、元気よく飛び回るノビタキが見られました。ただ雨がやや強くなってきたことから雨が当たらない場所で待機していると、突然対岸の木に2羽のムギマキがやってきてわずかな時間ながらその姿を見せてくれ、不意にヤマシギが我々の前を飛翔しました。一旦昼食に戻った後は最後の1時間ほどを付近のカキの木の前で過ごすことにし、やや離れた位置から観察することにしました。するとカキの実を懸命に食べるクロツグミが何度も見られ、珍しくメス個体も見ることができ、ツアーを締めくくってくれました。

幸い3日間通して好天に恵まれた秋の粟島。行きの高速船が前日からのうねりによって大きく揺れましたが欠航はなく、順調に行程を進めることができました。秋の離島らしくやや静かな印象はありましたが、ジョウビタキが多い日、ムシクイ類が多い日、またそれらがいなくなり、アオジやカシラダカが目立ったりと渡りを実感することができました。また少ないながらも、キマユムシクイ、コホオアカ、ムギマキ、マミチャジナイ、ミヤマホオジロ、そしてクロツグミに出会うなど印象的な出会いがありました。離島での探鳥はややリスクがありますが、反面、島ならではの食事が楽しめ、この粟島ツアーではお昼も温かいものが食べられました。また温泉に行く楽しみもあり、渡りの鳥以外の部分でもお楽しみいただけたのではないでしょうか。比較的歩くことが多くお疲れだったと思います。この度はお疲れ様でした。

石田光史

ノビタキ 撮影:宅間保隆様

 

キマユムシクイ 撮影:宅間保隆様

 

ノビタキ 撮影:宅間保隆様

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