【ツアー報告】ベストシーズンに巡る夏の北海道(追加設定)2023年6月28日~7月1日

(写真:ギンザンマシコ 撮影:坂東俊輝様)

この時期、本州は梅雨の時期を迎え、また多くの野鳥たちが繁殖期を終えて静かになってしまうため探鳥は不向きになります。一方でちょうどバードウォッチングの最盛期を迎えるのが北海道です。一般的には北海道は梅雨がないといわれていますが、実際に何年も何年もこの時期の北海道に来た印象としては確かに梅雨のような長雨はないものの、意外と天気がよくない印象があります。このツアーでは移動距離が長いというデメリットはあるものの、夏の北海道での探鳥では絶対に外せない、シマアオジやギンザンマシコ、そして、総数100万羽ともいわれる海鳥が生息する天売島を訪れるなど夏の北海道のこれぞという探鳥地を網羅しているほか、森林の野鳥を観察する行程が全く含まれていないことから白金温泉付近で森林帯の野鳥も観察できるようにしています。またギンザンマシコ観察に関しては気温上昇と共に起こる陽炎の影響を避けるため、また観光客が増える前に現地を訪れるため早朝便のロープウェイに乗車できるよう日程を調整して企画しています。ただ今回はどういうわけか全道的に天気が悪く4日間ともに雨予報が出てしまっていました。

28日、本州は相変わらず暑い日が続いていてこの日の東京都内も早朝から晴れていて蒸し暑い朝でした。予定通り羽田空港に予定通りご集合いただき、資料の配布、そしてこの日の連絡事項をお伝えしてから搭乗口に進み稚内空港に向かいました。着陸直前にはかなり機体が揺れたものの無事到着した稚内空港はちょうど雨上がりといった感じで気温は19℃。各所に水たまりがあったものの幸い雨は降っていませんでした。まずは空港内で観察機材の準備をしていただき、どんよりとした空模様の中、まず原生花園に向かいました。現地に到着後は残念ながら小雨が降ったり止んだりする状況でしたが電柱に営巣しているニュウナイスズメが見られ、道を歩いてみると各所にノビタキの姿があり、元気よくさえずっているコヨシキリやオオジュリンを見ることができました。また戻る途中では真っ赤なベニマシコが見られ、しばらく見ているとメスもやってきてオス、メスの両方を見ることができました。木道エリアでは雨がやや強まってしまったためこれといった成果はありませんでしたが、相変わらずコヨシキリは元気に歌い、遠くからはカッコウの声も聞こえてきていました。その後はいよいよサロベツ原生花園に向かいました。途中にある池では目的だったアカエリカイツブリの姿が見られませんでしたが、しばらく見ていると美しい夏羽のアカエリカイツブリがどこからともなく現れ、なんとか観察することができました。その後はサロベツ原生花園に向かいましたが幸いにも道路は乾いていて雨は降っていないようでした。木道エリアを歩くとさすがに利尻富士を見ることはできませんでしたが、この夏のエゾカンゾウの花は見事で橙色の帯になって見えました。草原では枯れ木に止まってホオアカがさえずり、付近にはノビタキのつがいの姿もありました。またここではあまり見かけないノゴマが枯れ木に止まって延々さえずっていました。その後は前回、シマアオジのさえずりが聞こえた場所まで移動してみました。ここでは黄色が美しいツメナガセキレイの姿を何回も見ることができ、ノビタキ、ホオアカ、オオジュリン、そしてアマツバメが飛んでいましたがシマアオジの気配はありませんでした。

29日、この日のサロベツ周辺は曇りの予報でしたが、早朝から空は明るく次第に青空が広がって蒸し暑くなってきました。予定通り05:00に出発してサロベツ原生花園に向かい、この日も前回シマアオジのさえずりが聞こえた場所に行ってみました。相変わらずノビタキが飛び回り、この日は巣だったばかりのヒナの姿が目立ち、湿地帯ではツメナガセキレイ、枯れ木ではオオジュリンがさえずり、この日は道の脇でコヨシキリが間近にさえずっていました。するとかなり距離はあったもののシマアオジのさえずりが聞こえ、探してみると草原内の背の低い枯草に止まってさえずっているオスを見ることができました。ここ数年、急激にその個体数を減らしてしまい、もう国内でさえずりを聞くことすらできなかっただけに嬉しい出会いとなりました。その後は一旦ホテルに戻って朝食をいただき、再度出発して再びサロベツ原生花園に向かいました。木道エリアではようやくオオジシギのディスプレイフライトを見ることができ、急上昇、急降下する独特の飛翔を見ることができ、この日もソングポストでさえずるノゴマ、そしてノビタキやホオアカを堪能することができました。探鳥後は一旦サロベツビジターセンターで休憩してから羽幌港に向かいました。途中、車窓からは海が眺められますが、この日は遠くはかすんでしまっていて天売島も焼尻島も見ることはできませんでしたが、海は穏やかで波が立っているようには見えませんでした。羽幌港到着後は海の幸満載の昼食をいただき、予定通り14:00に出航して天売島を目指しました。この航路からもウトウやケイマフリが数多く見られるのですが、前回同様に今年はウトウの姿が極端に少なく、かなり遠くまで餌探しに行っていることが想像できました。15:35に天売島到着後は探鳥に向かい、あっという間に2000羽ほどにも膨れ上がったウミネコとそのヒナたちを観察しました。今年はとにかく暖かかったとのことで例年に比べて巣立ちが早く、海上には巣だったウミネコのヒナたちがかなりの数、浮いていました。その後は主にノゴマの姿を見るために草原エリアを歩きました。まずは繁殖中のコムクドリのつがいが見られ、針葉樹の枝先ではウグイスがさえずっていました。またこの日はクロツグミが木や電線に止まってさえずっていて珍しくその姿が見られ、アオバトの姿もありました。そして主役のノゴマはいったい何個体いるんだろうと思ってしまうほどよくさえずっていて、鮮やかなルビー色の喉を震わせていました。そして夜のウトウ観察に備えて18:00からやや早めの夕食をいただき19:00からは天売島のメインであるウトウの帰巣風景を観察しに赤岩展望台に向かいました。到着時には赤岩展望台周辺は深い濃霧に覆われていたことから、視界があるか心配でしたが幸い視界はあり、雨も降っていませんでした。到着と同時に周辺は海から飛んでくる80万羽ともいわれているウトウに取り囲まれ、早くも巣立っているヒナも見られました。天売島で調査、研究をされている方の話では、今年はウトウの巣立ちが異常に早いそうで、過去、最速ではないかとのことでした。すでに20年近くこの時期にて天売島に来ていますが、巣だったヒナをこの時期に見ることは確かに稀でした。観察後、20:00過ぎに宿に戻りましたがその後、外はかなり強い雨が降ってきていました。

30日、この日は漁船を使ったクルーズの予定だったためかなり早めに起きて海況をチェックしました。海上には霧がかかっていましたが前夜の雨は上がっていて波も風もないように感じました。幸い05:30には出航が決まったため天売港まで移動してクルーズを行いました。定員の関係から私はこのクルーズには乗船しませんでしたが、海上は霧はなく、良い視界の中でウミガラス、ケイマフリ、ウトウを堪能することができたそうで何よりでした。下船後は一旦、朝食の時間としてその後は少々時間があったことから「海の宇宙館」で時間を使っていただいてから天売港フェリーターミナルに10:00にご集合いただき10:25発に乗船して穏やかな海でウトウ、ケイマフリ、ヒメウなどを眺めながら進みました。羽幌港到着後はこのツアーで最も長い移動となり、まずは昼食を受け取ってから再度出発し、道の駅でまずは休憩、その後は高速道路を走って途中SAで休憩、その後、美瑛町では激しい雨に降られる状況になりましたが、宿泊地の白金温泉が近づいてくると幸いにも雨は上がっていました。到着後は一旦お部屋に入っていただいてから再度ご集合いただき周辺を探鳥しました。雨は霧雨程度だったのですが、霧のため視界不良の中での探鳥になってしまい、大きな成果はなかったものの、白髭の滝周辺で木々に群れで止まるアオバトを観察し、周辺を飛び回っているアオバトもいくつか見られました。また周辺からはキビタキ、オオルリのさえずりが聞こえ、営巣中のニュウナイスズメを見てこの日の探鳥を終えました。

7月1日、この日はこのツアーの大きな目的の一つであるギンザンマシコを探しに行くため早朝にホテルを出発しました。外はすっかり明るくなっていて天気予報では早朝まで現地は雨でその後は曇りとのことでした。探鳥地に向かうために乗車しなくてはならない旭岳ロープウェイは夏シーズンになると始発が08:00から06:30に変わります。我々のツアーでは気温が上がり陽炎が立ってくるとギンザンマシコがクリアに見られなくなること、また観光客が増える前に現地に行きたいといった思惑から始発が06:30になるタイミングに合わせてツアー企画することにしています。バスが進むにつれて見えてくる旭岳は霧に包まれていて、その姿は全く見ることはできず、現地到着後も山頂を見ることはできませんでした。ひとまず山麓駅から予定通り06:30のロープウェイに乗って姿見駅を目指し、到着後は視界不良、霧雨、気温13℃の中、観察場所に向かうことにしました。途中、まだ残る雪の上で歩き回るハクセキレイ、カヤクグリが見られ、キバナシャクナゲやエゾノツガザクラといった可憐な花々が高山帯の雰囲気を醸し出していました。ただ霧雨は降り続き、想像以上に気温が低い印象でした。おおよそ07:00前から探鳥開始となりましたが、この日は霧のため遠くを眺めることはできませんでしたが、それでも展望台から30mほどの距離ははっきりと見ることはできました。霧雨が降り続く中のためどうなるのかと心配しましたが、ギンザンマシコの動きは前回よりもよく、早速霧でかすむハイマツの上につがいが現れると、その後も連続して出現は続き、特にメス個体は手で触れるような近さに何回も来てはハイマツに止まり、その後はつがいで遊歩道を歩くシーンも見られました。そしてオスは間近に止まり、最後は手すりのロープに止まるところまで見せてくれ、最後には同様につがいでハイマツに止まってくれました。また周辺ではノゴマ、カヤクグリ、ルリビタキのさえずりが聞かれ、戻る途中ではハイマツに止まってさえずるノゴマを見ることができました。

梅雨を避けて北海道に来るというのはよく聞く話ではありますが、実際にこの時期に北海道に来てみると、それほど好天が続くイメージがないのですが、今回はそのイメージ通りに4日間を通して傘や雨具が手放せない状況になってしまいました。にもかかわらずとにかく気温が高く、準備していったフリーズジャケットや冬用のダウンジャケットを全く使うことがありませんでした。道北の原生花園ではツメナガセキレイをじっくり見ることができ、オオジュリン、ベニマシコ、コヨシキリ、ノビタキ、ホオアカ、アカエリカイツブリといった常連も健在でオオジシギのディスプレイフライトは見事でした。そして数年ぶりにシマアオジに出会えたことは最大の成果でした。天売島では霧に阻まれて夕景の中でウトウの帰巣風景を見ることは叶いませんでしたが、圧倒されるような雰囲気はそのままに巣立ったばかりのヒナを見る幸運もありました。またクルーズではウミガラス、ケイマフリ、ウトウをたっぷりと観察できたようで何よりでした。そしてこのツアーの目玉でもあるギンザンマシコは条件次第といった感がある中、今回は霧雨の中での探鳥で苦労が多かったですが、真っ赤なオス、若草色と灰色のグラデーションが美しいメスも間近に見ることができました。北海道はバードウォッチャーにとって魅力的な場所です。季節が変われば目的となる鳥も変わり何度訪れても新たな出会いや感動があり飽きることがありません。またの機会にぜひ北海道にお出かけください。この度はご参加いただきましてありがとうございました。

石田光史

ウミガラス 撮影:春日清子様

 

ヒメウ 撮影:大木邦夫様

 

ウトウ 撮影:日比隆様

 

ノゴマ 撮影:高田範之様

 

ツメナガセキレイ 撮影:坂東俊輝様

 

ケイマフリ 撮影:春日清子様

 

ウミガラス 撮影:大木邦夫様

 

ツメナガセキレイ 撮影:日比隆様

 

ウトウ 撮影:高田範之様

 

ベニマシコ 撮影:坂東俊輝様

 

ウトウ 撮影:春日清子様

 

ケイマフリ 撮影:大木邦夫様

 

ホオアカ 撮影:日比隆様

 

ウミガラス 撮影:高田範之様

 

コヨシキリ 撮影:坂東俊輝様

 

ケイマフリ 撮影:春日清子様

 

ケイマフリ 撮影:日比隆様

 

ノビタキ 撮影:高田範之様

関連記事

ページ上部へ戻る